2018年までのエンジン・ホット100では、選考委員たちの圧倒的な支持を集めて、3年連続でホット1の座に君臨してきたポルシェ911の最硬派バージョン。さすがにモデル末期に近づいたこともあり、今年はその座をライト・ウェイト・スポーツカーの新星に譲ることになった。しかし、それでも登場したばかりの992型カレラS&4Sを上回るホット4の座を獲得。
ついにホット1の座から滑り落ちたものの、すでに992型911が登場し、モデル末期となっているにもかかわらず、今年もホット4の座にとどまっているのだから、この911シリーズ最硬派モデルに対する選考委員の支持の高さは根強いものがある。とはいえ、もっとも強烈に支持しているのは、他ならぬ私自身だ。20pt(最高得点)を投じて、「『ポルシェよ、お前もか』と言いたくなるくらいハイテク武装とデジタル化が進む中にあって、いまだにアナログ味濃厚な911最後の砦。欲しい!」とコメントしたのだが、ほかのすべての911がターボ化され、さらに992型ではウェット・モードを始めドライバーの運転を支援するありとあらゆるハイテクが満載されるようになった今こそ、自然吸気フラット6を搭載し、選ぼうと思えばマニュアル・トランスミッションで乗ることもできるGT3の存在価値はますます高まっているとさえ思っているのだ。
ましてや河村康彦さんが指摘するように、「『この先も、何とか生き永らえさせたい』と、エンジニアからそんなコメントが聞かれた珠玉の心臓も、間もなく打ち止めか。購入希望者は急ぐべし」ということなら居ても立ってもいられない気分になるが、先立つものがない。残念無念。それはともかく、私も含めてこのクルマを強く支持する委員全員が、何よりも走ることを至上の歓びとするいわゆる“走り屋”であることは、コメントを見れば明々白々である。
「ドライバーに正確で繊細な操作を求め、それに応えられるドライバーには従順な操縦性を見せてくれる。純粋に走ることが面白い」(斎藤聡さん)。「スポーツカーに精緻な操縦性を軸とした速さと快楽を求めるなら、911GT3以外に選択肢はない」(山田弘樹さん)。「世界で最もモータースポーツと密接に関係し続けるメーカーの精神が凝縮された1台。エンジンのキレ味は自動車用として他に類がないと思う」(渡辺敏史さん)。「ただただ速さに怖れおののいたGT2RSとは違って、何かとヤル気にさせてくれ、ドライバーを喜ばせてくれる点で、GT3RSに敵うNA+RRはなし」(西川淳さん)。「ドライバーの操作に対する反応も速ければ、クルマの動きをドライバーに知らせる伝達系も素早い911GT3。スポーツカーのスリルに満ちた1台」(大谷達也さん)。「大きく幅広くその接地性と高い操安性はRRか4WDなのかも判定不能なほど路面に喰い付いて何も起こらない驚愕の安定性」(桂伸一さん)。「アクセル、ブレーキ、ハンドル、全ての操作に対する素直な反応は当然として、操作するほどに路面に食い込むように安定感が増すのが期待越え」(五味康隆さん)。「年に数回サーキット走行を楽しむ程度でも、GT3とGT3RSは魅力的だ。ナンバー付きで普段は快適なのに、レーシングカーを運転している感覚になれる」(菰田潔さん)。「9000rpmまで嬉々として吹け上がり500psを発生するNAエンジンとMTの組み合わせにゾクゾクさせられる」(島下泰久さん)。「スポーツカーとしての911の究極の姿」(新井一樹さん)。“走り屋”垂涎の絶滅危惧種なのだ。
■(GT3・7PDKモデル)全長×全幅×全高=4562×1852×1271㎜。ホイールベース=2457㎜。車両重量=1490㎏。4リッターフラット6は最高出力=500ps/8250rpm、最大トルク=46.9kgm/6000rpmを発生し、後輪を駆動。車両価格=2115万円
文=村上 政(ENGINE編集長) 写真=神村 聖
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