マクラーレン第4のシリーズとなる〝 GT 〞に南フランスで乗った。「GTはマクラーレンのスーパー・ スポーツ群から商品性のベクトルを少し実用性と快適性の方向に向けて開発されたものです」というのは、チーフ・エンジニアのアダム・トムソン氏だ。
カーボンモノコックのシャシーも、4リッターV8ターボ・エンジンも、720S譲りの予測制御プログラムを備えたダンピング・システム、PDC(プロアクティブ・ダン ピング・コントロール)も、それぞれがGT用に最適化されているとい う。つまり、速さに実用性と快適性を加え、バランスさせたのだ。
試乗会のベースとなったサントロペのホテルの庭に置かれたGTは、これまでのどのマクラーレンとも異なって見えた。ヘッドライトやフロ ントマスクは穏やかな形状となり、ボディ・サイドは微かな抑揚が付けられながらエアインテークへと収束。細いクロムメッキに縁取られたサイド・ウインドウの形状も、GTならではのものだ。
そして、GTをGTたらしめているのが後ろからの眺めだ。テールゲ ートを持つファストバック・スタイルを採っているため、大きなリア・ガラスが車体後方まで続いている。
さらにテール ゲートの下には420リッターのリア・トランクが備わる。その床は中心部分が凹んだ形状となっており、プレゼンテーションではゴルフバッグが収まるところを実演していた。
いったんフロントに収めた自分のスーツケースを出し、リアに置き直すとピタリと収まった。専用ネットやストラップで周辺のバッグやジャケットを固定することもできる。
サントロペから一般道をほぼ真北に向かって丘陵地帯を目指す。あいにくと朝からの大雨の勢いが止まない。リア・ガラスを叩く雨音を差し引いても、走行音が静かであることにまず驚かされた。
エンジンの排気音とタイヤの擦過音が巧みに抑制されている。これなら超長距離を走っても疲労は少ないだろう。
620psと64.2kgmを発揮するおなじみの4リッターV8ターボ・エンジンは、ごく低回転域からでも太いトルクを生み出していて、賢い7段DCTを介して圧倒的な加速を示す。
白眉とも呼べるのが、路面からのあらゆるショックや振動などを角を丸めた上で抑え込んでいることだろう。荒れた舗装のギャップや段差、舗装のつなぎ目などを認識することはあっても、不快に感じる間もない。
最適化された油圧ダンパー・システムの効能がとても良く現れているからだ。それを最も強く感じたのは、カンヌを目指してオートルートA8号を高速で巡航している時だった。フラットな姿勢を維持しながら、乗り心地はマイルド。それでいてマクラーレンらしい軽快な身のこなしと抜群の動力性能は不変だ。
GTは、狙い通りの新しいマクラーレンに仕上がっていた。ブランドの幅を広げることに成功したと言えるだろう。
■マクラーレンGT
駆動方式 ミドシップ縦置きエンジン後輪駆動 全長×全幅×全高 4683×2045×1213mm ホイールベース 2675mm トレッド(前/後) 1671/1663mm 車両乾燥重量 1466kg エンジン形式 V型8気筒DOHCツインターボ ボア×ストローク 93.0×73.5mm 排気量 3994cc 最高出力 620ps/7500rpm 最大トルク 6264.2kgm/5500-6500rpm トランスミッション 7段デュアルクラッチ式自動MT サスペンション(前/後) ダブルウィッシュボーン/マルチリンク ブレーキ(前後) キャスト・アイアン・ディスク タイヤ(前/後) 255/35R20/295/30R21 車両本体価格 2645万円(10%消費税込)文=金子浩久
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