アライ 89年といえば日本車のヴィンティッジ・イヤー。そういえばGT-Rやロードスターのネタはしょっちゅう取り上げられますが、セルシオの話ってあんまり見ませんね。
ウエダ そこで今回は初代セルシオの上モノを求めて京都の「なるき屋」さんまでやって来ました。
ワタナベ 初代の10系セルシオって聞いて、トヨタのディーラー系中古車の取り扱いはどんな感じだろうと思って調べてみたんだけどさ、もう影も形も見当たらない。あって00年からの30系って感じで。
アライ 登場から30年モノですしねぇ。さすがに認定保証とかつけるのはリスクがあるんでしょうね。
ワタナベ さすがに純正部品も欠品とかあるだろうしねぇ。それにイジられまくって潰されたタマも結構多いだろうから、どノーマルの個体っていよいよ希少になってるんだと思う。ストリート・ファイターでも随分ぶっ壊されただろうし。
ウエダ そんな状況の中、数少ないフルノーマルの個体を発見しました。こちらの「なるき屋」さんは10〜30系のセルシオを中心にトヨタ系のセダンを得意とされているお店です。
ワタナベ お、このパール・ホワイトの個体は綺麗だねぇ。ホイールは20系のやつに変更してるのかな。
アライ アメリカのお客さんが喜びそうなポリッシュ仕上げですね。
ウエダ でも、こちらの個体は昨日売約済みになったそうです。見に来たお客さん、即決だったそうで。
ワタナベ 10系をご指名で探している人も結構いるんだってね。
アライ ちなみにナベさんは10系が出た時って、今の仕事してたんですか?
ワタナベ してたよ。だから新車の時にも何度か触ったことがあるけど、R32のGT-Rより全然高いクルマだったし基本的には縁遠かったね。
ウエダ ちなみに今回の取材車のA仕様(1994年型)はコイル・サスの一番ベーシックなグレードですが、それでも500万円超えです。
ワタナベ 一番高いCのFパケだと700万円くらいしたんじゃなかったかな。当時のセンチュリーの価格も優に超えてたよね。
ウエダ センチュリーのユーザーも羨ましがったとか?
ワタナベ 初代セルシオは、とにかくオーナー・ドリブンカーとしての売れ方が凄かった覚えがあるなぁ。それにセンチュリーに乗せられるようなエスタブリッシュメントは、マインドとしても新参者にほいほい乗るようなことは良しとしなかったんじゃないの、当時は。
アライ それが30年経つと、街中アルファードだらけという……。エスタブリッシュメントのドレスコードは崩壊してますね。
ワタナベ まぁ10系は性能はとにかく凄いというか、低中速域での乗り心地とか高速域に至るまでの静粛性なんかは圧倒的だったよね。
アライ いまこうやってみると、プレスドアのサッシュにウインドウ・ガラスを支えるガイドを設けてフラッシュ・サーフェス化しつつ開閉精度を高めたりとか、音消しに対する執念がハンパないですね。
ワタナベ しかもこの個体は保管状態も良かったのかもしれないけど、ウェザーストリップの活きの良さとか、経年変化の少なさが凄い。
ウエダ ちなみにこちらの個体、一番安いグレードということもあって、お店の方は当初部品取りにと仕入れたそうなんです。でも実質ワンオーナーの経歴や車両の状態をみるに、十分商品化出来ると判断したと。
ワタナベ 全然しっかりしてるよ。エンジンの掛かり方とかミッションの入り方とか、セルシオっぽいヌメりがしっかり感じられる。
アライ 内装の程度もいいですしね。パンと座面の張ったシートの掛け心地とか、当時のメルセデスを相当研究したことが伝わってきます。
ウエダ 一方でこのセルシオといいますか、初代LSといいますか……が登場するや、世界の自動車メーカーはその静粛性に愕然としたと言われていますね。ジャガーのAJ-V8ユニットがセルシオの1UZ-FEの影響をうけているのは有名な話ですし。
アライ ちなみに今、この型の部品供給的にはどうなのかな。
ウエダ ちょこちょこ欠品がある中で一番困っているのはECUのコンデンサーからの液漏れで、メーカーからもアッセンブリーは出ないそうです。でもこちらのお店ではオーバーホール済みのECUを手配する術が出来たそうで、この個体もそのECUに替えているそうです。
ワタナベ コンデンサーの液漏れって、今もそうだけど、これから先も平成前後の名車たちにどんどん増えるトラブルだろうね。
ウエダ しかし今日京都まで乗ってきた最新のLSも、ちょっとこの10系の頃の丸い乗り心地を取り戻しつつあるんじゃないですか?
アライ それ、俺も思ったよ。現行の初期モノは全然硬い感じだった。
ワタナベ すでに2回はランニングチェンジが入ってて、最新バージョンはランフラット・タイヤの構造も改めたりして乗り心地の改善を図ってるみたい。時代や周辺環境は変われど、LSに求められるものって10系に帰結するのかもしれないね。
ウエダ 時代もそっちに寄っていってる感じ、しますしね。
アライ 自動運転なんて話になるとセルシオ・ライドの天下が再びやってくるかもしれませんよ。
話す人=渡辺敏史(まとめも)+新井一樹+上田純一郎(ともにENGINE編集部)
写真=阿部昌也 協力=なるき屋(京都府京都市南区久世築山町24-1)
(ENGINE2020年4月号を一部加筆、再編集)
無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。
無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。
advertisement
2024.05.06
LIFESTYLE
レコードバーって知ってますか? アナログ・レコードを聴きながらお酒…
2024.05.03
CARS
【エンジン音付き!】新型フェラーリ発表! その名も「12チリンドリ…
PR | 2024.05.07
WATCHES
「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ」2024年春の新作 …
2024.04.25
LIFESTYLE
McLaren Artura Spider × LANVIN CO…
2024.05.05
LIFESTYLE
著名な陶芸家がかつて住んだ朽ちかけた古民家をリノベーション 古道具…
2024.05.01
CARS
なんてお洒落な! 新車同然(いや新車以上!)の190SLと280S…
advertisement
2024.05.10
「なるほどアメリカで売れるワケだ」 ホンダのフラッグシップ・セダン、新型アコードにモータージャーナリストの国沢光宏が試乗!
2024.05.09
普通の人がファミリーカーとしてBMWを買うならこっち! BMW X1のディーゼル・モデルにモータージャーナリストの森口将之が試乗! 贅が尽くされている
2024.05.12
「走ることが大好きなクルマ通からすれば、正真正銘の天国」 モータージャーナリストの国沢光宏がポルシェ911GT3 RSほか5台の輸入車に試乗!
2024.05.12
釣りも潜りも焚き火もやる人にはこの時計がおすすめ! タグ・ホイヤー アクアレーサー 300m防水でGMTは最強旅時計!
2024.05.08
メルセデス・ベンツはこの顔じゃないと! EQSが伝統の横基調グリルを採用するマイナーチェンジを実施