今後のボルボの主力ドライブ・トレインとなる48Vマイルド・ハイブリッドを搭載したXC60B5AWDに試乗してきた。
2019年以降に発売する車両はすべて電動化するとしていたボルボ。ボルボがEVメーカーになる、なんて誤解されたこともあったが、電動化と言っても一度に全部がフルEVになるわけではなく、ラインナップを徐々にプラグイン・ハイブリッドや48Vのマイルド・ハイブリッドと言った何らかの電動アシストを備えた車両とフルEVに変えて行くというのが正解。
2020年のはじめに発表された今後の計画では、すでにあるプラグイン・ハイブリッドに加えて春には48Vのマイルド・ハイブリッドを導入し、その後年内にはフルEVも発売という予定だった。本来ならとっくにマイルド・ハイブリッドに試乗できていたはずが、新型コロナのために試乗会が延びに延びていたわけで、ほんとにやっと乗ることができたという感じである。
今回48Vマイルド・ハイブリッドが追加されたのはXC60とXC90。ボルボカー・ジャパンの本社がある芝公園で行われた試乗会ではXC60のB5AWDに試乗した。試乗会に先立って数日前にオンラインで行われたブリーフィングによると、このB5、マイルド・ハイブリッドの肝となるオルタネーター兼スターター兼ブースターのISGMと呼ばれるモーターとその制御はもちろん、コアとなる直列4気筒ターボもほぼ新設計ということらしい。ターボ・チャージャー、ピストン、シリンダー、シリンダー・ヘッド、シリンダー・ブロック、エキゾースト・システム、エンジン・マネージメント、シフト制御と、まあ上げたらきりがないくらい変更されている。B5は、ポジション的には4気筒ガソリン・ターボのT5に置き換わることになっている。つまり、今後のボルボの主力パワー・トレインとなるわけで、力が入っているのも当然かもしれない。
そんなXC60B5に乗ってみてどうだったのかというと、いやぁびっくり。ちょうどつい最近まで長期リポート車としてT5のV60クロスカントリーに乗っていたのでそれと比較してみると、もう全然違う。とにかく走り出しからエンジンのフィーリングが滑らか。シフトもスムーズ。静粛性も格段に良くなっており、これだけでなんだか上質になった感じがする。特に驚いたのはアイドリング・ストップからの再スタート。ISGMのベルト駆動による始動ショックの少なさは特筆に値する。
少し乱暴だけれど、プラグイン・ハイブリッドやハイブリッドとマイルド・ハイブリッドの違いは、簡単に言ってしまうとモーターだけで走るかどうかの違いだ。ベルト駆動のマイルド・ハイブリッドは駆動力として働く場合も基本的にアシストに徹していて、その塩梅がメーカーによって異なり、それが走りの味の違いになっている。ボルボの場合、正直アシストが強力ですごいというより、質感を大事にしている感じがした。ブースターとしても働くISGMは、低速から中速くらいまでを多用する街中が特に効果的で、走り出しからスピードが乗るまでや、ちょっとした加速はT5よりも若干力が増しており、走りやすくなっているという印象だ。低中速のトルクがアップするとアクセレレーターの無駄なオン・オフも減るだろうから燃費も向上しているのは間違いない。
燃費と言えば、ほぼ新設計のエンジンのトピックがもうひとつ。なんと気筒休止もする。エンジン回転が3000回転以下で、速度が30km/hから160km/hの範囲内の加速も減速もしていないような場合に、1番と4番のシリンダーで燃料供給がストップするのだが、高速道路も含めて走行中の違和感はまったくなかった。ちなみに高速道路にかんして言えばだが、なんとなくだが同じかあるいはT5の方がパワーがあるように感じなくもない。このあたりはやはり燃費を意識しているからだろう。念のために言っておくと、最高出力は250馬力もあり、別に不足しているわけではない。むしろ洗練度も好感度もB5の方が上だと思った。
走りのフィーリングで付け加えておくことがあるとすれば、ブレーキのタッチだろう。B5はプラグイン・ハイブリッド・モデルと同じ、ブレーキ・バイ・ワイヤ・システムを使ってエネルギー回生をしているが、どんどん良くなっているというひと言につきる。回生ブレーキのチューニングの難しさはどこのメーカーでも言えることだが、カリフォルニアで行われたS60の国際試乗会ではじめてT8のS60に乗ったときの違和感アリアリだった状態と比べると雲泥の差。まったく違和感がないと言ったらウソになるが、慣れたら気にならないレベルだろう。
ハイブリッドというとどうしてもモーターの存在感がモノを言うことになるけれど、48Vのマイルド・ハイブリッドの場合は、モーターはあくまでも黒子で主役はエンジンだ。今回の試乗で、あらためてそう思った。B5、“いいエンジン”です。
■ボルボXC60B5AWDインスクリプション
駆動方式 フロント横置きエンジン4輪駆動
全長×全幅×全高 4690×1900×1660㎜
ホイールベース 2865㎜
トレッド(前後) 1655㎜
車重 2165㎏
エンジン形式 水冷式直列4気筒DOHCターボ+電気モーター
総排気量 1968㏄
エンジン最高出力 180kW/5400-5700rpm
エンジン最大トルク 350Nm/1800-5700rpm
モーター 10kW/3000rpm/40Nm/2250rpm
変速機 8段AT
サスペンション(前/後) ダブルウッシュボーン/マルチリンク
ブレーキ(前/後) 通気冷却式ディスク/ディスク
タイヤ(前後) 235/55R19
車両価格(税込) 734万円
文=塩澤則浩(ENGINE編集部) 写真=望月浩彦
(ENGINEWEBオリジナル)
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