ハッチバックをリフトアップしたお手軽風クロスオーバーから、本格的なSUVに生まれ変わった新型GLAのデキ映えは?
かつてはBMWと同じく後輪駆動が代名詞だったメルセデスだが、エンジンを横置きするFFレイアウトを本格的にシリーズ化し始めたのは、2012年デビューの先代Aクラスからである。そんなFF系メルセデスは今や「ニュー・ジェネレーション・コンパクト・カーズ=NGCC」と題した一大ファミリーへと成長して、2018年にAクラスが世代交代して以降はさらに増殖。普段の街並みを眺めるだけでも、コンパクトなFF系メルセデスが日本でもすっかり市民権を得たことを実感する。
GLAクラスもNGCCとなってから登場した一形態で、この夏に上陸した新型は2代目となる。ご承知の向きも多いように、先代GLAはAクラスと酷似したハッチバックボディをリフトアップした、良くも悪くもお手軽風クロスオーバーだった。初代GLAもそれなりに売れたが、新型はご覧のように「ミニGLE」ともいえる最新メルセデスSUVそのもののデザインとなった。
SUVらしく脱皮したスタイリングの恩恵は、もちろん室内の使い勝手で顕著だ。お世辞にも室内が広いとはいえなかった先代とは対照的に、新型の後席レッグ・ルームは小柄な人なら脚が組めそうなほどに拡大して、シートにはスライド機構までつく。トランクも通常時容量が14L拡大しただけでなく、フロアも可動式になるなど、レジャー・カーらしい多用途性を獲得している。ただ、現実に一番ありがたいのはヘッド・ルームの拡大と着座姿勢や乗降性の改善だろう。先代GLAは2人乗りを基本としたパーソナルユース前提というほかなかったが、新型は完全なファミリー・カーとして使える。
日本に導入されたGLAはひとまず2.0Lディーゼルの4WDモデルの1種のみ。エンジン音が少しばかり騒々しい(頼もしいともいう)のはご愛嬌だが、乗り心地やハンドリングが、先代より明確に大人っぽくなったのは多くの人にとって朗報だろう。オプションの大径19インチ・ホイールを履く試乗車は目地段差での突きあげがちょっとだけ強めだったものの、高速では上屋が安定したフラットライドが印象的である。先進安全装備の進化・充実も新世代NGCCに共通する特徴で、とくに新機能の「アクティブ・レーンキーピング・アシスト」はFR系の上級モデルと同様、逸脱しそうになるとまるで車線の左右にスポンジの壁があるかのように強力に引き戻される自動運転感にはちょっと驚く。
良くも悪くもお手軽でカジュアルだった先代とは一転して、スキのない仕上がりといっていい。輸入元によると、日本での販売状況は「大変に好調」とのことだ。
文=佐野弘宗(自動車ジャーナリスト) 写真=望月浩彦
(ENGINE2020年12月号)
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