2019年にセダンのS60が上陸した際に、限定のスペシャル・モデルとして少量だけ販売されたS60T8ポールスター・エンジニアード。ボルボのモータースポーツ活動を担うポールスターがチューンした、システム総出力が420馬力というパワフルなプラグイン・ハイブリッドは瞬殺で完売した。乗り出し1000万円はする高いボルボだが、コレが結構人気があって、2021年モデルとして今度はS60に加えてV60とXC60にもラインナップされた。もちろん今回も台数限定で、S60は15台、V 60は20台、X C60は30台が販売される。このうち、箱根で行われた試乗会ではワゴンのV60に乗った。
乗ってびっくり。速いのにも驚いたが、乗り味が高級なことにもっと驚いた。レースで鍛えた減衰力調整式のオーリンズのダンパーやタワーバー、6ポッドのブレンボのキャリパーといったいかにもハードコアなパーツで武装しているので、さぞ乗り心地も硬くて大変だろうと思ったら、コレが大間違い。硬いことは硬いけれど、しっとりしたところもちゃんとあって嫌な感じが全然しない。サーキットに持ち込めばそれなりの走りをするとは思うが、このクルマの真骨頂は高速道路で長距離を走るようなシーンだと思う。速度が増すにつれてどんどんフラットになる上質で気持ちのいい走りは感心するほかない。
モーター駆動による走り出しもスムーズそのもので、エンジンが加勢をはじめても荒々しさはなく、とにかく滑らか。体感的には、よくできた大排気量のマルチシリンダー・エンジン車に乗っているような感じだ。一見すると地味。室内のデザインも基本的にほかのボルボと同じだが、シートベルトが黄色になり、このクルマが特別なボルボであることをさりげなく主張している。価格は税込で919万円。速いクルマは好きだけれど、目立ちたくないという人にぴったりのボルボです。
文=塩澤則浩(ENGINE編集部) 写真=望月浩彦
(2021年1月号)
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