2024.04.04

CARS

次期BMW X3の雛型か? セダンに続き、BMW新世代EV、ノイエ・クラッセのSUV版が登場

BMWの「Neue Klasse」(ノイエ・クラッセ)といえば、5シリーズの前身モデルとして知られている。BMWの中型車として投入された1962年の発売当時、ノイエ・クラッセは車名ではなく、社内での呼称だったという。BMWは1963年に「BMW1800」を発売したのちに、1964年から「ノイエ・クラッセ」という名称を宣伝として意図的に使うようになったと振り返っている。キドニー・グリルやホフマイスター・キンクなどのBMWのデザインを印象づけるディテールはすでにノイエ・クラッセにも採用されていた。

ヴィジョン・ノイエ・クラッセのSUV版

最近では、その名は電気自動車=バッテリーEV(BEV)向けでモジュラー式のプラットフォーム、「ノイエ・クラッセ・プラットフォーム」に使われている。さらに、「ジャパン・モビリティ・ショー2023」にも出展されていた次世代EVのコンセプト・カー、「BMW Vision Neue Klasse」(ビジョン ノイエ・クラッセ)にもノイエ・クラッセの名称が掲げられていた。このほど、ドイツ本国で発表された「BMW Vision Neue Klasse X」(ヴィジョン・ノイエ・クラッセX)は「Neue Klasse SAV モデル」、つまりヴィジョン・ノイエ・クラッセのSUV版といえるモデルで、車名の最後にはBMWがSUVの車名に用いている「X」が飾られている。



ノイエ・クラッセの美学や哲学、技術をSUVで具現化

ヴィジョン・ノイエ・クラッセXはノイエ・クラッセが紡いできた美学や哲学、技術や持続可能性を「SAV」(スポーツ・アクティビティ・ビークル、BMWは自社のSUVをこのように呼ぶ)で具現化するモデルとなる。新たなアーキテクチャに初めて電動パワートレインが搭載され、2025年からハンガリーのデブレツェン工場でラインオフされる。なお、同工場はBMWグループ製造拠点の中で初めて化石燃料以外のエネルギーのみで稼働することになる。

ヴィジョン・ノイエ・クラッセXはアクティブなライフスタイルにマッチしながらも時代の要請に応える高効率性を備えている。



シンプルなデザイン

デザインは、セダン・タイプのヴィジョン・ノイエ・クラッセと同じ考えのデザイン言語で仕立てられたエクステリアと明るく広々としたインテリアとの調和が特徴。インテリアには次世代の「BMW iDrive」によるライティングやサウンド・エフェクトも備わることで、新しい没入感をもたらしてくれそうだ。

エクステリアは、ノイエ・クラッセ用に開発されたシンプルなデザイン言語をもとに、BMW Xモデルの2ボックス・スタイルを融合。最低地上高をより高くしたEVアーキテクチャの採用により、ロング・ホイールベース、ショート・オーバーバンクという、BMWの典型的なプロポーションを実現した。

デザイン・ディレクターのエイドリアン・ファン・ホーイドンク氏は、「Xモデルのモノリシック(一体型表面)なデザインで、すっきりとしたルックスや独特な縦型の解釈を加えたBMW ライト・シグネチャーなど、力強い特徴を受け継いでいます」と解説している。



照明を上手に活用

フロント・マスクは、縦に並んだLEDユニットが新鮮味をもたらしていて、フロント中央のキドニー・グリルはバックライト付き縦型フレームとともに立体感のある彫刻的なフォルムになっている。また、ヘッドライトとキドニー・グリルが連動して作りされる照明はドライバーの車両接近によって起動し、その後、インテリアにまで広がるという。

リア・ビューはパワフルかつアスリートのようなスポーティな仕立てになっている。中心部の奥まで届くテールランプはBMWお馴染みのL字型に水平的な要素が加えられたデザインになっている。さらに、可変式の光強度が個別に制御される3D プリント・エレメントも備わり、表現力豊かな深い光の効果をもたらしている。

エクステリアでは輝き感のあるガラス製サーフェスと鮮やかな「コーラル・シルバー」のペイントも特徴だ。軽やかな印象を与えるサイド・ウィンドウ後方のホフマイスター・キンクには クロームの縁取りではなく、見る角度によって透明あるいは反射面になる「反射プリント」が採用された。



洗練されたインターフェイスを採用

インテリアはSUVらしく高めのシート・ポジションが特徴で、ゆったりと安心できる走りも楽しめるという。そのインテリアには専用開発されたマルチファンクション付ステアリング・ホイールをはじめ、直感的なタッチ操作が可能なセンター・ディスプレイ、「BMW パノラミック・ビジョン」を用意。さらに、最新の「BMW インテリジェント・パーソナル・アシスタント」の音声操作機能により、洗練されたユーザーインターフェイスになるはずだ。

視認性では、最新の「BMW 3Dヘッドアップ・ディスプレイ」が市販モデルに搭載される予定になっている。なお、センター・ディスプレイはインパネと一体化され、前席の乗員はすべてのインフォテイメント機能を快適に操作することができるという。



次のステージへと昇華した走り

もちろん、BMWブランド最大の特徴であるドライビング・プレジャー(駆けぬける歓び)は、ノイエ・クラッセが搭載する電動駆動とシャシー制御、第6世代の「BMW eDrive テクノロジー」により次のステージに昇華することになるだろう。

第6世代となるBMW eDrive テクノロジーは、改良版のe-driveユニットに加え、これまでの角形バッテリーよりも体積エネルギー密度が20%向上した新しい円形リチウムイオン・バッテリーが搭載される。さらに、800Vの新システムと組み合わされることで充電速度が最大30%改善。300kmの航続距離に必要なバッテリー量を10分で充電することが可能になる。

現行ラインアップの同等モデルと比較すると、航続距離も最大30%延長されるとともに空気抵抗が20%低減。加えて、EV向けの新しいタイヤとブレーキシステムの採用により、車両全体の効率性を最大25%高めることに寄与している。



4つの新「スーパー・ブレーン」を搭載

電動駆動とシャシー制御は各ドライバーのニーズに合わせてカスタマイズすることが可能だという。それを支えるのがBMWグループが自社で開発し、ノイエ・クラッセ各モデルのスムーズな走行を常に保証するための基盤となるソフトウェア・スタック。4つの新「スーパー・ブレーン」が搭載され、その中の2つが新世代にふさわしいドライビング・エクスペリエンスに導いていくとしている。

4つの新「スーパー・ブレーン」について、BMW AG開発担当取締役のフランク・ウェーバー氏は、「高性能コンピューターは、今まで個別に処理されていたものが、同時に動く高度な性能を備えています。1つ目のスーパー・ブレーンはすべてを自社で開発しました。これにより、パワートレイン全体とドライビング・ダイナミクスが一体化し、最大10倍のコンピューティング能力を発揮します。2つ目のスーパー・ブレーンは自動運転機能を大きく飛躍させます。今後は、4つの主要コントロール・ユニットを1つの高性能コンピューターに統合します。これにより、ダイナミック性能や効率性、そして駆けぬける歓びが向上します」と説明している。

そのほか、100%植物と鉱物由来の原料を使い、石油をいっさい使わずに製造されるサーフェス用素材が開発されるなど循環性にも配慮された。サイド・スカートとフロント・エプロン、リア・エプロンの付属品も単一のリサイクル素材を使用。リサイクル性を最適に実現するために、広い範囲に単一素材を使用する。これらの技術はヴィジョン・ノイエ・クラッセXの市販モデルにも活かされる予定だ。



文=塚田勝弘

(ENGINE WEBオリジナル)

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