2021.01.22

CARS

ヤリスの超ホット・モデル、GRヤリスに乗った 期待を裏切らない

2020年1月の東京オートサロンで発表されて以来、話題を呼んでいた、トヨタ久々のWRC直系4WDスポーツ、GRヤリスについに試乗することができた。競技を前提につくられたその走りっぷりはどんなものだったのだろうか。


競技前提で開発!

元々はWRC(世界ラリー選手権)のトップ・カテゴリーに参戦するWRカーのベース車として開発されたGRヤリスは、その生い立ちからして特徴的だ。これまではすでに出来上がった市販車をベースに競技車両を仕立てていたが、このクルマでは寸法やパッケージング、エンジン性能等々すべての部分で、予め競技に使われることを前提に設計、開発が行なわれた。


装飾は若干異なるが、インパネは普通のヤリスとほぼ同デザインとなる。RZハイパフォーマンスは専用のスポーツ・シートを装着。後席2人掛けの4人乗りだ。

ヤリスを名乗ってはいるものの、ボディは低全高の3ドアに変更。車高を低めているのは、WRカーのリア・ウイングはフロアからの高さが規定されていて、全高が低いほどしっかり風が当たることになるから。実は現行WRカーはライバルに較べて、この辺りがとても不利なのだという。3ドアの採用も、5ドアよりもフェンダー周りの造形の自由度が大きいことが理由で、ちゃんと意味があるのだ。しかもルーフは何とCFRP製。“CSMC”と呼ばれる新製法による大幅なコストダウンにより、全車への採用が可能となったという。


CFRPのほかにボンネットやドアなどにアルミを用いている。1.6リッター直3はヤリス用の1.5リッター直3とは別物。RZが396万円、RZハイパフォーマンスが456万円となっている。

主力であるRZとRZハイパフォーマンスのエンジンは直列3気筒1.6リッターターボで、最高出力は272ps、最大トルクは370Nmを発生する。あえて3気筒としたのは、軽さとコンパクトさを狙ってのこと。実は開発にはインディカ-などのエンジンに携わった技術者も参画した、生粋の競技用ユニットである。このパワーは新開発の6段MT、そして前後トルク配分可変式のスポーツ4WDシステムを介して路面へと伝えられる。


バーゲン・プライス

実際の走りっぷりも、このスペックから抱く期待を裏切ることはない。まず車体の剛性感が凄まじい。そしてハンドリングは非常に軽快。ステアリングも目が詰まったようなフィーリングで、非常に精度の高い機械を操っているという感触がありありと伝わってくる。


そしてエンジンは、その吹け上がりの緻密さ、低回転域から密度の濃いトルク感で、3気筒のイメージを軽く吹き飛ばす。トップ・エンドまでリニアにパワーを盛り上げながら滑らかに回り切るこのエンジンを、秀逸なタッチの6段MTで操るのは、文句なしの快感だ。


前後トルク配分比を“ノーマル”の60:40、“スポーツ”の30:70、そして“トラック”の50:50の3モードに切り替えられるフルタイム4WDは、ワインディング・ロードでは軽快な挙動となるスポーツが一番楽しめた。プロトタイプではサーキットやダートコースも試しているが、走行するステージに応じて切り替えて好みのセッティングを見つけ出すのも、これまた楽しい。


RZに対して上級グレードのRZハイパフォーマンスには、ミシュラン製パイロットスポーツ4SタイヤとBBS製鍛造アルミホイール、締め上げられたサスペンションに前後トルセン式LSD、インタークーラー・ウォータースプレーなどが追加される。もちろん速いのは後者だが、一般道前提ならばRZでも十分楽しめると感じられた。最初はRZを選んでおいて、スキルアップあるいはクルマへの習熟に合わせて、好みのパーツで徐々に仕上げていくのもアリだろう。


これだけの内容を持った本格スポーツ・ギアが、400万円を切る価格(RZ)で手に入るのは間違いなくバーゲンと言うべきだろう。もっとも、その持てる力を発揮させるには、サーキットに持ち込むか、あるいはラリーに出たくなる。トヨタは今後、走る場所づくりや、パーツ販売などを積極的に行なっていくというから、将来の展開まで含めて楽しみな1台である。


競技用ベース・グレードのRC。

文=島下泰久  写真=篠原晃一


(ENGINE2021年2・3月合併号)


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