2021.12.26

CARS

僕らは貴重なクルマの「一時預り人」 38台のクルマを乗り継いできたロータス・エランとポルシェ911のオーナーがたどり着いた「想いを受け継ぐ」気持ちとは

オースティン・セブンを4台も乗り継ぐなど戦前車にも造詣が深い村山さん。様々なクルマを乗り継いできた経験から趣味の古いクルマには2つの楽しみ方があるという。それがどんな楽しみ方なのか、ガレージにお邪魔して話を伺った。

免許を取って最初に買ったのは日産サニー・エクセレント

湘南ヒストリックカークラブ(SHCC)の副会長を務める村山東さんと知り合ったのは、もう20年以上前のこと。個人的にはその時から“英国車の人”であり、“戦前車の人”というイメージを持っていた。

4年前に新築したご自宅の母屋ガレージに911とともに収まるシトロエン・ベルランゴ。離れのガレージにはイベントの思い出やミニ・バイクのコレクションがぎっしり。

確か少し前まで初代ロータス・エランとホンダS600とオリジナル・ボディを載せたオースティン・セブンというラインナップだった記憶があったのだが、現在ガレージに収まるのは1965年型のロータス・エランS2と、1973年型のポルシェ911E、普段乗りに使っている2019年型のシトロエン・ベルランゴという組み合わせだ。

「この前までMG・J2ミジェットを持っていたんだけど、知人にずっと欲しいと言われていて、ついに譲ったんですよ。その話が決まってから1929年式のMG・Cタイプを手に入れて、今仕上げているところです」

戦前車から降りてしまったわけじゃないんだ、と安心したところで、村山さんのクルマ遍歴から話を伺った。



「18歳で免許を取って最初に買ったのは、中古の210型の3代目日産サニー・エクセレント1400GX。それで大学に通っていたのですが、当時は雑誌『ポパイ』の全盛期でね。確か“彼女は左側の顔も見たいと言った”なんてキャッチの外車の特集があったんですよ。それでVWビートル欲しくなった。そうしたら高校の先輩の親父が、1971年の1302Sを乗らないからって50万円で売ってくれた。そこからですよ、古いクルマに行くのは」

その後、初代ゴルフやマルニなどのドイツ車を乗り継いだ村山さんは、SCCJ(日本スポーツカークラブ)の走行会に参加するようになる。そして27歳のとき、仲間たちとSHCCを立ち上げるのと同時期に1台のクルマに出会った。

「1966年のモーガン、1500ccのフォード105Eを積んだモデルでした。周りにフォード乗りが多かったので、パーツも心配ないだろうと買ったんです」



自分色に仕立てたエラン

現在に至るまで38台のクルマを乗り継いできたという村山さん。その中で一番思い出深いクルマは? と聞くと、こんな答えが返ってきた。

「モーガンですね。奥さんと付き合い始めた時に乗っていて、結婚資金として売りました。残ったお金で買ったのがオースティン・セブン。それからセブンを4台も乗り継ぐんですから。もう戦前車歴は22年ですよ!」

最初に手に入れたオースティン・セブンは、神田にあった“機輪内燃機”が戦前にボディを架装したロードスターだ。次にレーサーにモディファイされたモデル、『ORIGINAL AUSTIN SEVEN』にも掲載されたフル・オリジナル、そして自分自身のオリジナル・ボディを載せたセブンへと乗り継いでいく。

「セブンの魅力は、やっぱりフラットアウトですよ。どこでもそれができるクルマはなかなかない。低いスピードでも操る楽しみだけは十分にありますからね。最後にオリジナルまで作って僕のオースティン・セブンは完結しましたが、4台も乗った結論はなんだと思います? それはね、オリジナルが一番いい(笑)」

その他にもカニ目こと、オースティン・ヒーレー・スプライトを3台乗り継ぐなど正統派なブリティッシュ・ライトウェイト生活を送っていた村山さん。それゆえ、ロータス・エランに6年も乗り続けているというのは、少々意外な気もする。



「確かにロータスのイメージないでしょ(笑)。でもエランは一度乗ってみたいなと思っていたんです。で、乗ってみたら想像以上のものだった。だから買ってしばらくして、バックボーン・フレームがちょっと傷んでると言われた瞬間に全部やろうと決意してフレームも新品に変えてオールペンしたんです」

イタリアっぽいイギリス車にしたかったということで、エランのボディはアバルトっぽいグレーで全塗装。シートとトノカバーは辻堂のベスパ屋で見たモペットのシートのレザーを譲ってもらって張り替え。さらに濃い小豆色の幌をワンオフで作るなど、全体をコーディネートしている。

「あのサイズで1600ccあって、あのハンドリングのクルマは他にない。まさに乗ってよし見てよしで、お気入りです」

想いを受け継ぐ911

一方の911Eは、1973年式のディーラー車。2オーナー・モノで、非常にオリジナリティが高い。

「点検もずっと三和でやっていたディーラー車。走行5万kmほどで記録簿も全部残ってる。手に入れて燃料系のホース類を変えたくらいで、エンジンはインジェクションだし、1発でかかってすごく気楽に乗れます。革ジャンみたいな感じですね。何にでも似合うみたいな」

母屋の隣にあった築50年の倉庫を改装したガレージに収まるエランと911。

これまで紹介したとおり、基本的に英国車党だった村山さんが突如911Eを手に入れたのは2019年のこと。そこにはこんな理由があった。

「僕にポルシェのイメージもないでしょ(笑)。実際、欲しかったけど買うとは思っていませんでした。これはジャガーSS100やXK140でよくイベントに出場されていた久富浩さんが30年くらい乗っていたクルマなんです。実は2019年、久富さんが癌になってしまって、ポルシェの面倒を見きれなくなったから乗ってくれないか、と託してくれたんです。そこで急遽S600を売って、お金を工面して引き取りました」

残念ながら久富さんは2020年3月に亡くなり、11月末に行われたSHCC大磯ミーティングでメモリアル・イベントを開催したところだという。そんな特別な想いのこもった911を手元に置くようになって、村山さんはこんな気持ちを強くするようになった。

「大体、半々なんですよ。エランをグレーに塗って“いいね”という人と、“オリジナルじゃない”って人の割合が。でも僕は色ありきなんで、自分のクルマは自分のカラーにしたいんです。周りから“村山さんのクルマ”って認識されるくらいに楽しみ尽せれば最高ですね。一方でオリジナルのセブンの時にはどこもイジらなかった、多分この911も同じ。そこだけは“村山さんのクルマ”にしちゃいけない。そうしていいのと、いけないのがあるんですよ。仲間内でもよく話しますが、僕らは貴重なクルマの“一時預かり人”なんですから」

文=藤原よしお 写真=神村 聖

マニアの間では“久富さんのクルマ”として有名な911E。スライディング・ルーフ装着車で純正のクーラー、ラジオも実動状態とオリジナリティも高い。前オーナーの愛情の深さが窺える素晴らしいコンディションだ。「期せずしていい組み合わせになりました。これでMGが来れば理想的。古いクルマは方向性が違うから、置く場所とお金があれば欲しくなるのは仕方ないんじゃないですか(笑)」

(ENGINE2021年2・3月合併号)

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