ひとつでフレンチのディナーに匹敵する価格ながら、常に予約で満席となるパフェが注目を集めている。
洋食が欧米を源としつつ、日本で独自に発展した料理であることは広く知られている。洋菓子も同様。単に食習慣や味覚に合わせただけではなく、和の素材との折衷、「旬」という季節感でアレンジされてきた。たとえば果実を合わせた生ケーキなどは、日本が長くスイーツのお手本としてきたフランスでも意外なほど少ない。中でも最近注目を集めている高級パフェは、その到達点と言えるだろう。
ブームの火付け役といえるのが、世田谷区等々力の住宅街にある「パティスリィ アサコイワヤナギ」。単価が3000円から5000円、時には8000円を超える価格ながら、常に予約でいっぱいになる人気店だ。手がけるオーナーの岩柳麻子さんは、テキスタイルデザイナーを目指して染織を学びながらも、パティシエに転身したという異色のキャリアの持ち主。
「生活のために飲食店で働いていた際、メニュー開発を担当していたのですが、デザートが特にレシピ通りにつくってもなかなかうまくいかなかったんです」
こうした疑問と探求心が、岩柳さんを奥深いスイーツの世界にのめりこませ、食材を徹底して生かす技に結実させる。高品質なフレッシュフルーツを厳選し、チョコレート、ジェラート、ジュレ、ビスケット、ゼリー、キャラメリゼなどの手の込んだ菓子を大胆かつ繊細に組み合わせたパフェは、“パルフェビジュー”という名の通り、まるで精緻な宝石細工を思わせる美しさ。すべて数週間の期間限定で、季節が巡っても同じ組み合わせは二度とない。セットで供されるコーヒーや紅茶は、パフェに合わせて豆や葉から考案されるという徹底ぶりだ。
「ケーキづくりを通じて知り合ったすべての方々、たとえば果物の生産者の方などから受けたインスピレーションがアイデアの源になっています」
1年である程度の結果を得られる野菜に比べて、果物のそれは10年単位だという。「日本の季節を感じられるようなパフェをつくっていきたい」と静かに語る岩柳さんの矜持には、研鑽と研究を重ねてきたつくり手へのリスペクトが根付いている。一期一会の眼福と口福として、四季の国ならではの恵みがぎっしり詰め込まれたグラスに匙を入れてみたい。
問い合わせ=PATISSERIE ASAKO IWAYANAGI https://asakoiwayanagi.net/
文=酒向充英(KATANA) 写真=杉山節夫、PATISSERIE ASAKO IWAYANAGI
(ENGINE2021年6月号)
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