4月27日、ロータスはグローバル・ヴァーチャル・カンファレンス、“ドライビング・トゥモロー”を開催し、全世界に向けて、これまでプロトタイプとして公開していたタイプ131の正式名称と、4つの新しいプラットフォームについて発表した。
ロータスの歴代ロードカーは、大きく4つの世代 に分けることができると思う。第1の世代は初の量産車、マーク6以前の黎明期のモデル。第2の世代が、初のクローズド・ボディとなったエリートをはじめ、いまなお高い評価を得ているセブンやエランやヨーロッパ。第3の世代が2代目エリートやエクラ/エクセル、エスプリ、2代目エランなど、混迷の時代のモデルたち。そして第4の世代が、1995年のエリーゼを祖とし、ロータスにふたたび活気溢れる時代をもたらした、エキシージやエヴォーラたちだ。
これまでロードカーの世代交代は比較的ゆるやかに行われ、旧世代と新世代のモデルが時に重なりながらロータスはラインナップを構築してきた。2019年に第5世代にあたる電気自動車でなんと2000馬力を発揮するハイパーカー、エヴァイヤが登場しても、それは変わらなかった。
しかし2021年2月、ロータスは突如現行のエリーゼ、エキシージ、エヴォーラすべてのモデルの生産を終え、その後継となるタイプ131が登場すると発表。そしていよいよ、その正式名がこのたび公開された!
コード・ネーム・タイプ131こと“エミーラ(Emira)”は、エヴォーラ以来13年ぶりの内燃機関を搭載するまったく新しいスポーツカーだ。しかもロータスにとってこれが最後の内燃機関搭載モデルになるという! もちろん彼らの伝統に則って頭文字は“E”である。ちなみにエミーラとは多くの古代言語に登場し、「司令官」や「リーダー」という意味を持つ。「最初の存在」という意味を持つとされるエヴァイヤに続く、新しい世代のロータスを率いていくモデルに、ふさわしい名といえるだろう。
現在のロータス・カーズのマネージング・ディレクターであり、これまでエンジニアリング部門の長として活躍してきたマット・ウインドルによれば、2025年にはエヴァイヤやエミーラを含むまったく新しいスポーツカー・ラインナップが完成。そして2020年代後半にロータスは完全な電気自動車専門ブランドとして生まれ変わるという。
ロータスのデザイン・ディレクター、ラッセル・カーによれば、エヴァイヤによって得られたロータスの新たなデザイン言語は、エミーラはもちろんのこと、今後のロータス各車にも受け継がれていく。
サイドからリアへ車体の内部へ大きな穴を開け、エアロダイナミクスと独自性を両立させたボロシティ(多孔性)というエヴァイヤのコンセプトも、エミーラにふさわしい方法で再解釈され、採用される。ロータスは伝統的なクレイモデルの作成も行う一方で、VRやフルスクリーン・プロジェクションも使用。新型コロナウイルスによるロックダウン中も、彼は世界中のスタッフとコミュニケーションを取りながら開発にあたることができたという。
エミーラの生産は2021年5月に完成予定のロータスの本拠地、ヘセルの新工場で行われる。ロータスは2017年にジーリー傘下となって以来、数十億ポンドという巨額の投資を行っているが、この工場の建設には1億ポンドを投資。敷地面積は1万2000平方メートルで、建設には18カ月を要し、最新鋭の自動塗装ブースや効率的な生産ラインを備えるという。
エミーラに搭載されるパワートレインは事前の予想を覆し、ハイブリッドではなく純粋な内燃機関となる。今回は新しいパートナーシップによるパワートレインをベースに、ロータスがチューニングを施したもの、ということだけが発表された。新たなパートナーシップ、という言葉が意味するのは、ロータスと同じくジーリー・グループに属するボルボなのか、次期型アルピーヌの開発をともに行うルノーなのか。それとも何度もエスプリの次世代モデルの開発などで噂されてきたBMWなのか。いずれにしても、これまでのトヨタ製4気筒ないしはV6ではないようだが……。
エミーラは7月6日に生産工場となるヘセルでワールド・プレミアとなり、7月8日~16日に開催されるグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードで一般公開される予定だ。
もう1つ、注目すべきはこのエミーラが用いるプラットフォームだ。ロータスは現在、4つの専用プラットフォームを開発している! 1番目は、すでに公開されているエヴァイヤの“ハイパーカー・アーキテクチャー”。そして2番目が、エミーラの“スポーツカー・アーキテクチャー”だ。これはロータス社内では元素を意味するエレメンタル・アーキテクチャーと呼ばれており、従来同様、アルミの押し出し材を使用した軽量で柔軟性のあるシャシーをベースにするという。
そしてエグゼクティブ・ディレクターのウダイ・セナパティは、さらにもう2つのプラットフォームを開発していると語った。そう、スポーツカーだけでなく、ついにほかのセグメントにも参入するというのだ!
それが3番目のプラットフォームとなる“プレミアム・アーキテクチャー”である。ロータスのまったく新しいライフスタイル・ヴィークルの基礎となるものであり、同時にロータスが飛躍するための原動力になるという。はたしてそれがどのような形で登場するか、詳細は不明。だが、ポルシェにとってのカイエンやマカン、ランボルギーニにとってのウルス、ベントレーにとってのベンテイガ、ロールス・ロイスにとってのカリナンなどと同様、セールスの面でブランドそのものをサポートすることのできるSUVになる可能性が非常に高い。
なお、4番目のプラットフォームは“エレクトリック・スポーツカー・アーキテクチャー”で、これはルノーとのパートナーシップに基づき、前述の次期型アルピーヌでも用いられるものだ。ロータス社内でE-Sportsと呼ばれており、エミーラに続く次世代のロータスも、もちろん使用することになるはずだ。このプラットフォームは多くの電気自動車のようにバッテリーを床下に配置するのではなく、ドライバーの後ろに配置するレイアウトに挑戦した、とセナパティはいう。彼によれば、ロータスならではのハンドリングやドライビング・プレジャーを期待するドライバーのためには、むしろこの方が、要望に応えられるというのだ。
またマット・ウインドルはこのプラットフォームを用いる近未来のエレクトリック・ロータス開発にあたって、チームに「エミーラと同じ車両重量に」とオーダーしている。どうやらたとえ動力が電気になったとしても、ロータスらしさが失われることはないようだ。
ちなみに、この“エレクトリック・スポーツカー・アーキテクチャー”については、アルピーヌだけでなく他社への提供も可能だという。アルピーヌ以外にも、このプラットフォームを用いるエレクトリック・スポーツカーが続々と登場するかもしれない。
最後に、2月上旬にロータスがラインナップを一新する、と発表した際に公開した写真をもう一度見返してみよう。右端の黄色いエヴァイヤの隣に並ぶ、最も小ぶりで最もシンプルなヘッドライトを採用したモデルが、エミーラであることは分かる。ではその隣に並ぶ2台は、今回発表になった “エレクトリック・スポーツカー・アーキテクチャー”と“プレミアム・アーキテクチャー”を用いたニュー・モデルなのだろうか? 前者はともかく、後者はライフスタイル・ヴィークルというには、いささか背が低すぎるようだが……? どうやら、まだまだ隠し球があるようである。
いやはや、7月のエミーラ正式発表はもちろんのこと、ロータスからは、とうぶん目が離せそうにない。
文=上田純一郎
(ENGINE WEBオリジナル)
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