2021.07.06

CARS

ドイツ車にはない独特な魅力を放つDS7クロスバックEテンス PHEVとの相性が抜群です!

プラグイン・ハイブリッド4WDを得たDSのトップSUV、DS 7クロスバックE-テンス。静かで低振動、加速感も滑らかといった電動パワートレインの長所を生かし、アバンギャルドなプレミアム・ブランドを目指すDSに相応しいクルマに仕立ててきた。

CO2削減の優等生

エレガントなDSでも電動車戦略は着々と進んでいる。すでにコンパクトなDS3クロスバックにはEV(電気自動車)が用意されているが、DS7クロスバックには新たにPHEV(プラグイン・ハイブリッド)が加わることとなった。

 
PSAグループの電動化戦略は明快で、コンパクトカー用の「CMP」プラットフォームはEVを、Cセグメント以上の「EMP2」プラットフォームではPHEVを、それぞれガソリンやディーゼル・モデルと並行してラインアップする。フレキシブルなモジュラー構造のプラットフォームであり、電動化しても室内への影響が少なく、ガソリン車やディーゼル車とかわらないパッケージとなっているのが賢い。
 


ところで欧州では自動車メーカーが販売した車両のCO2排出量平均値が基準を上回ると巨額の罰金が科されるCAFE規制がある。近年の動向を見てみるとPSAグループは優秀で常にトップレベルにあり、2020年はもともとハイブリッド・カー比率が高いトヨタ・グループとともについに100g/kmを下回った。コンパクトカーのシェアが高いというメリットはあるものの、パワートレインの戦略が的確である証だろう。5~6年前までは燃費に優れるディーゼルの比率が60%前後でCO2排出量削減に貢献していたが、徐々に高効率なガソリンの比率を高め、そして電動化にも力を入れたことが昨年の100g/km切りを実現したのだ。


DS7クロスバックE -テンスのパワートレインは基本的にプジョー3008GTハイブリッド4と同様で、フロントは1.6リッターターボと8段ATの間にモーターを挟み込み、リアには独立したモーターを持つ。バッテリーも13.2kWhで3008と同様だが、ボディが大きく車両重量も増すためEV走行距離が56kmとわずかに減少するのが違いだ。それでも、日常の通勤や買い物などはほぼEVで済ませ、週末のロングドライブではハイブリッドでガソリンを消費するというプラグイン・ハイブリッドらしい使い方には十分だ。

アバンギャルドをブランドの旗印に掲げるDSらしい、特徴的なデザインを持つインパネ。E-テンスはパリにある通りの名前から取った最上級トリムの「リヴォリ」を採用しているが、内燃機関モデルがシックな黒基調なのに対し、E-テンスは白色の革をふんだんに使った明るい仕立てになる。

インパネ上部中央の特等席に鎮座するのはリヴォリの特徴であるB.R.M.社製アナログ時計。

シート表皮は前後ともキルティング加工された革を採用。こちらも白色となる。



コンフォート・モードが絶品

 
走りのフィーリングも3008に似ているが、プレミアムなDSだけあって静粛性は一段と高い。特有の浮世離れした雰囲気と、上質なモーター駆動は相性がいい。

ドライブ・モードは標準的な「ハイブリッド・モード」、バッテリー残量が十分にある場合にEV走行する「エレクトリック・モード」、エンジンを積極的に活用してパワフルな走りを堪能する「スポーツ・モード」、リア・モーターを使いながら強力なトラクションや悪路走破性を高める「4WDモード」といった4つは3008と共通ながら、DS7クロスバックE -テンスでは「コンフォート・モード」が加わる。これは前方の路面の凹凸をカメラで捉え、ショックアブソーバーの減衰力をリアルタイムに最適化する「DSアクティブスキャン・サスペンション」を作動させるものだ。3008が225/55R18のタイヤを履くのに対して、235/45R20になるので乗り心地では不利であり、少しだけタイヤの大きさやバネ下の重さを意識させられることもある。だが、コンフォート・モードを作動させると、たしかに効果はあり、大きな凹凸に対して身構えていても肩透かしを食らうような感覚だった。フラットライドかつ快適で、ロングドライブでもドライバーの疲労を軽減してくれそうだ。大きなタイヤ&ホイールによるルックスと快適性を両立させるシステムと言えるだろう。ワインディング・ロードでのハンドリングもタイヤのグリップ力が高いだけあって、ステアリング操作に対するレスポンスがシャープで安定性も一際高くなる。システム最大で300ps/520Nmもの力をフルに発揮させてもシャシーはまったく動じないほどだ。
 


PHEVは、EVが航続距離やコストなどの課題を完璧にクリアするまでの繋ぎの技術と見られることもあるが、エンジンにはパワー感や燃料消費効率の高さなどのメリットがあり、それにモーターといいところを組み合わせることで、EV以上に走りを楽しくさせている。技術的な興味をひくことも含め、PHEVには独自の魅力があるのだ。


■DS 7クロスバックE-テンス
駆動方式 フロント横置きエンジン+前後2モーター4輪駆動
全長×全幅×全高 4590×1895×1635mm
ホイールベース 2730mm
トレッド(前/後) 1625/1605mm
車両重量 1940kg
エンジン形式 直列4気筒DOHC16V直噴ターボ
総排気量 1598cc
ボア×ストローク 77.0×85.8mm
エンジン最高出力(モーター前/後、総合) 200ps/6000rpm(110ps/112ps、300ps)
エンジン最大トルク(モーター前/後、総合) 300Nm/3000rpm(320Nm/166Nm、520Nm)
変速機 多板クラッチ式8段AT
サスペンション形式(前/後) ストラット式/マルチリンク式
ブレーキ(前/後) 通気冷却式ディスク/ディスク
タイヤ(前後) 235/45R20
車両価格(税込み) 732万円

文=石井昌道 写真=望月浩彦


(ENGINE2021年7月号)

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

いますぐ登録

advertisement

PICK UP



RELATED

advertisement