2022.12.10

LIFESTYLE

幅はジムニーと同じたったの1.4m! 売れ残っていた都心の旗竿地に建つ超狭小住宅の「狭さをまったく感じない」アイディアとは

細長い旗竿敷地で、周りをぐるりと囲まれた邸宅。

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雑誌『エンジン』の大人気連載企画「マイカー&マイハウス クルマと暮らす理想の住まいを求めて」。今回は、都心の住宅街に建つ建築家ご夫妻の自邸。うっかり見落としてしまいそうなその家は周囲を建物に囲まれた狭い旗竿地に建っていた。デザインプロデューサーのジョースズキ氏がリポートする。

小さなジムニーが大型SUVに見える?

東京・広尾の、駅から少し離れた住宅街にある、吉田州一郎さん(48歳)とあいさん一家の自宅+シェアオフィス。建築事務所アキチアーキテクツを主宰する2人の拠点は、ぐるりと周りを建物に囲まれた61平方メートルの旗竿地に建っている。旗竿の間口部の幅は2.5m。奥の一番広い所でも4.1mしかない細長い敷地だ。狭い通りから見えるのは、窓が4つ縦に連なった幅1.4mの部分のみ。手前に置かれた、古い軽自動車規格のスズキ・ジムニー(1997年製・幅1.4m)と同じ幅しかない。小さなジムニーが、大型SUVに見えたほどである。



家作りは、2人がこの敷地を見つけた10年近く前に始まった。当時、ここから近いマンションで暮らし、「いずれは一軒家」と考えていたところ、偶然この土地に出会ったのだ。狭い変形の敷地は、以前建っていた建物を取り壊して2区画にして販売したところ買い手が付かず、3区画としたため。この場所ならお子さんの学区変更の必要がないうえ、予算的にも手が届く。どのような家を建てるかプランを決めないまま、二人はこの土地を手に入れる。それからというもの、週末になると何もない敷地にキャンプ用の椅子を置いて一日を過ごし、実際の広さ(狭さ)や風の流れなどを体に沁みこませ、設計のアイディアを膨らませていった。

家が完成したのは7年前のこと。去年から屋上で植物を育て始めた。通りからは想像できないほど、屋上の眺めは開けている。鳥が訪れる庭を作りたかったそうで、鳥が好む実のなる植物が多い。それにしても僅か一年で、都会の住宅の屋上がこれほど豊かな庭になるとは。植物の生命力に驚かされる。



そんな屋上庭園を楽しんでいる吉田さん。ジムニーは4年前に手に入れたものだ。少し古いクルマが好きで、長いこと憧れていた2代目ジムニーの中でも、家族で使うのに快適なモデルを選び、専門店に依頼して自分好みに改造してきた。全面塗装や車体のリフトアップ、グリルの変更に始まって、オーバーホールしたエンジンへの載せ替え等々。こうしたカスタマイズは、家のリノベーションに似ていて楽しいそうだ。このジムニーで、家族でキャンプに出掛けてきたが、最近は山歩きに夢中になっているとか。都心の小さな住宅に暮らしながら、アウトドア・ライフを楽しんでいる吉田家である。



この家が契機で

現在は共同で建築事務所を運営している吉田さん夫婦だが、土地を手に入れた当時はそれぞれメーカー勤務やフリーランスの立場で設計を行っていた。この頃の悶々としていた創作意欲の発揚の場として、2人の理想を実現させたのがこの家だ。こだわりと実験的な試みが随所に見てとれる。そしてこの自邸設計が、後の事務所共同設立に繋がるのである。

建物は、地下1階、地上3階にロフトを加えた5層で、各階の広さは27平方メートルにも満たない。下から上まで、ほぼ同じ形をしており、各階での役割も似たもの。例えば南の部分は、1階の玄関から屋上に至るまで階段で、北東は外部テラスになっている。

吉田邸の大きな特徴は、地下と1階の一部を自分たちで使いながら、シェアオフィス・シェアキッチンにしていること。住居は建物の2、3階だ。玄関は共通で、両者を仕切るのは2階に上がる階段前のガラス扉のみ。シェアスペースの入居者は不動産系のサイトで募り、建築とは関係のない職種の人たちが机を並べている。1階奥のシェアキッチンは、パティシエが借用中だ。


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