2022.11.26

CARS

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ポール・スミスとMINIのデザイナー、コラボレーションについて語る「MINIだから、やろうと思った」という言葉に込められた意味とは?

ポール・スミスさん(左)とMINIのデザイナのオリバー・ハイルマーさん(右)。クルマはPaul Smith MINI STRIP。

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10月上旬、東京・原宿にあるイベント・スペースで「MINI × Paul Smith in 東京」という展示イベントが開かれた。そのプレス・デイにはMINIのデザイン本部長のオリバー・ハイルマー氏とともにポール・スミス氏ご本人が登場。ふたりに話を聞いた。

表紙の撮影現場に現れた長身の人

表紙の撮影に向けて、かなり早い時間から室内で準備を進めていたら、入口のガラス戸の向こうに長身の人影がヌッと現れた。と思ったら、両手で双眼鏡のカタチをつくり、ガラスに張り付いて室内を覗いている。

オリバー・ハイルマー氏は1975年生れの47歳。ミュンヘン出身で、BMWグループのデザイン・チームに約20年間所属した後、2017年にMINIのHead of Designに就任。まるで親子のように仲のいいコンビだ。

「あっ、ポール・スミスさんだ!」

シルエットと愛嬌のあるしぐさだけで、すぐにその人とわからせてしまうところが、この人のデザイン界のアイコンたるゆえんだろう。

慌ててガラス戸を開けて外に飛び出し、「お早うございます。そしてお久しぶりです」と挨拶したら、にこやかに右手を差し出してくれた。

聞けば、会場周辺を一人で散策してきたのだという。きのう日本に着いたばかりだというのに疲れた素振りなど露ほども見せずに、

「久しぶりにイタリアとドイツに行ってきて、東京のあとはニューヨークに行くんだ」

と話しながら室内に入ってくると、そのままクルマの前に立ち、予定よりずっと早くから撮影は始まった。

とにかくサービス精神が旺盛で、勘が良く、ポーズを取るのが上手い。カメラマンの手振りに即座に反応して動いてくれるので、撮影はトントン拍子で進み、終了の合図とともに、そこにいたスタッフ全員が拍手した時には、まだ予定の撮影開始時間にさえなっていなかった。

■MINI × Paul Smith MINI STRIPの詳しい情報やMINI × Paul Smith in 東京のイベントの様子はコチラ!



2台のミニの共通点は?

数時間後のプレス・プレゼンテーションでは、ミニのデザイン本部長を務めるオリバー・ハイルマー氏とともに登壇。今回の「ミニ・ストリップ」と「ミニ・リチャージド」を製作した経緯を、ユーモアあふれる掛け合いで披露してくれた。

それによれば、ミニ・ストリップは、90 年代にクラシック・ミニとコラボレーションしたことのあるポールに対し、オリバーの側からの、新しいミニでまたコラボしないか、という呼びかけから始まったのだという。しかし、ポールはそれを一度は断った。ただ見た目だけを変えるだけでは、あまり面白くないと思ったからだ。しかし、話をしているうちに、見た目だけではなく根本的なコンセプトから変えていこうということになり、それならば、と議論を重ねた結果、「シンプルさ、透明性、持続可能性」をテーマにしたプロジェクトがスタートしたのだ。そしてワンオフでつくられた3ドアのミニ・クーパーSEをベースにしたミニ・ストリップは、不要なものを徹底的に取り除くことによって新たな特別な価値を創造した、まさに「レス・イズ・モア」という言葉で表される、いかにもポール・スミス氏らしいものに仕上がっている。



一方、もう1台のミニ・リチャージドは、90年代につくられたクラシック・ミニ・ポール・スミス・エディションの内燃エンジンを電気モーターに置き換えてEV化したものだ。だから見た目は基本そのままだが、このシンプルでミニマルなデザインは、ミニ・ストリップにも繋がるもので、今の目で見ても新鮮に映る。

プレゼンで披露された話で興味深かったのは、この限定モデルをつくった時のボディ・カラーにまつわるエピソードで、ポールはミニの担当者に自分が着ていたシャツの色にして欲しいと頼んだのだとか。その色のサンプルとしてシャツの端を千切って渡したという、そのシャツそのものがクルマの隣に飾られていた。

■MINI × Paul Smith MINI STRIPの詳しい情報やMINI × Paul Smith in 東京のイベントの様子はコチラ!

ひねりの効いたクラシック

さらにその数時間後、ホテルの部屋で二人に話を聞いた。まず、クルマをデザインすることと洋服をデザインすることの共通点と違いは?



「私の服は“ひねりの効いたクラシック”と評されるけれど、クルマをデザインする時にもそういうものにしたかった。明るいグリーンやブルーをクルマに取り入れているのはそういう意図によるものだ。一方、違いはタイム・スケール。服は思いつきで咄嗟にできることもあるが、クルマではそうはいかないよね」

とポール。オリバーが引き取って、

「クルマは4年。アイデアから始めた場合には7年から10年かけてつくるので、常に未来のことを考えてデザインしなければならない。その中で今、一番大切な要素と言えば、やはりサスティナビリティでしょうね」

「シンプルさ、透明性、持続可能性」をテーマに、ポール・スミス氏がデザインした「MINI STRIP」。文字通り不要なものをすべて削ぎ落とした「Less is More」のコンセプトでつくられている。ボディに塗装は施されず、剥き出しの亜鉛メッキ鋼板の状態で、塗られているのは腐食から保護するための薄い透明な皮膜のみ。工場での研削痕もそのままだ。

でも、同じものをあまり長く使われるとメーカーは困るのでは?

「ビジネスの観点から言えば新しいものを作ってどんどん売り、雇用を作らなければならないし、これはとても難しい問題です。だから、ひとつ言えるのは、なるべく地球を傷つけないものを作らなければならないということ。ポール・スミスのニット製品の大半はオーガニック。羊毛だって、どこの羊かすべて追跡できるように取り組んでいる」(ポール)

「資源は有限なのだから、100%リサイクルできるものにしていかなければいけない。クルマもそうなることを目指しています」(オリバー)

ところで、英国にはミニと並ぶアイコニックな存在としてロールス・ロイスもあるが、もしこれがロールスだったらどんなやり方を?

「断っていましたね。昔のものはともかく、今のロールス・ロイスには個人的には惹かれない。あれはステイタスを想起させるクルマ。一方、ミニはもっと実用的なタウン・カー。ミニだから、やろうと思ったのです」

ポールは力強い口調でこう語った。

文=村上 政(ENGINE編集長) 写真=柏田芳敬

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(ENGINE 2023年1月号)

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