2023.03.08

CARS

【試乗篇】フェラーリ・プロサングエ初試乗! 「これまで私が乗ったすべてのクルマの中で、これが一番かも知れない!」イタリアから帰国したエンジン編集長の第一声がすべてを物語る!!

フェラーリ初の4ドア4シーター・モデル、その名もプロサングエ(イタリア語で“純血”の意)。イタリア北部ドロミティ地方のピンツォーロを起点にドロミティ・ディ・ブレンダなどスキーリゾート地を周遊するコースで行なわれた国際試乗会に参加したエンジン編集長のムラカミが驚きの報告をする。◆プロローグから読む場合はコチラから!

ウルトラ・フラット!

私にあてがわれたのは赤の1台。確認すると、23インチのミシュランのスタッドレス・タイヤを履いていた。まずはコクピット・ドリルを受ける。すでに9月にマラネロで展示車の運転席に腰掛けた経験があるとはいえ、知らないことが多かった。

たとえば、中央に大きな回転計を持つインパネがすべて液晶画面上のヴァーチャル表示になっていることは知っていたが、ナビ画面を表示するためには、その回転計を消さなければならないとは思ってもみなかった。一人で試乗コースを巡るのにナビは必需品である。センターコンソールには液晶モニターがないから、ここに映し出すしかない。困った顔をしていたら、先のマーケ担当者氏に、車両情報はヘッドアップ・ディスプレイに映し出せばいいと言われた。でも、大きな回転計を眺めながら走れないのはとても残念だ。



そのほか、ステアリング・ホイール上に運転に関するすべての操作系が配置されているところなどは、ほかのフェラーリとまったく同じだが、マネッティーノのダイヤルは選択肢が増えている。ダイヤルを捻って変えられるドライブ・モードがアイス、ウェット、コンフォート、スポーツ、ESCオフの5種類。さらにダイヤルを押すとダンパー・セッティングを変えられるのだが、アイスからコンフォートまではデフォルトがミディアムで、押すとソフトになる。スポーツとESCオフではデフォルトとしてハードが加わり、押してミディアムかソフトを選ぶこともできる。というわけで、計12通りもの設定が可能になっているのだ。

ところが、ここでマーケ担当者氏が強調して言うには、どのモードを選んでも基本的なハンドリングや乗り心地はまったく変らないというのである。えっ、それってどういうこと? 私は思わす聞き返してしまった。彼はこう答えた。

「確かに、ハードとソフトでは乗り心地が変わったと感じるかも知れない。しかし、それはそう感じさせるようにアクティブ・サスペンションが反応の仕方を変えているだけで、ダンパーの硬さは変わらない。基本的なハンドリングも同じ。このクルマはそういう風にできているんだ」



狐につままれたみたいな話で、何を言っているんだかさっぱりわからない。頭の中を疑問符でいっぱいにして走り始めた。ところが5分も経たないうちに、なるほど彼が言っていたのはこういうことか、と私は運転席で大きく頷くことになったのだ。

着座位置が地面からいつもより高いところにあるというほかは、これまでのフェラーリとまったく変らない風景がフロント・ガラス越しに広がっている。室内がとても静かであるということを除いては、V12気筒エンジンがもたらす低回転域からのグッと押し出すようなトラクションのかかり方も、そこからアクセレレーターを踏み込んでいった時の淀みのない吹け上がりとその時に聞えてくる低く力強いサウンドも同じだ。



しかし、明らかに違っているのは、ブレーキを踏んでも、スロットルを開けても、あるいはステアリングを左右に切り込んでも、ボディが常にフラットな状態を保ったままで、ノーズダイブもしなければ、スクワットもしない、ロールさえほとんど感じられないということだ。しかし、それがどこかの足が突っ張ってそうなるというイヤな感じをともなうものではなく、まったく自然に、あたかも、それが当り前のことであるかのごとく、サラッとやってのけるものだから、それがどんなに凄いことであることかさえ、よくよく考えてみないと気づかない。物理学の法則に反することを、ごく自然にやってのけているのである。ひと言で言えば、ウルトラ・フラット。こんな乗り味のクルマには、これまで一度も乗ったことがない。

路面はドライからセミウェット、ウェット、スノーと様々に変化していき、それに応じて、あるいはわざとそれに反して、様々なドライブ・モードとダンパー・セッティングを試したが、確かに、どれを選んでいても基本的に乗り心地が素晴しくいい。常にフラットであることも変わりないが、その度合いはモードに応じて違っているように思えた。





途中、雪道の特設コースが設けられており、かなりバンピーな路面と大小のコーナーを持つ1km弱の道を最初はスノー・モードで、2度目はスポーツ・モードで走った。ダンパーはいずれもソフト。スノー・モードだと、クルマがトラクションコントロールから後輪操舵まであらゆる操作系を電子制御して、何の破綻も起こらないように助けてくれる。バンピーな路面でも、ボディはほとんどフラットな状態だ。スポーツ・モードでもほぼフラットなのは同じだが、電子制御の介入が遅くなる分、スロットル操作でリアを滑らせて走ることができるようになる。これは思い切りリアを滑らせて走ったら、とんでもなく楽しいだろうと思った。

グーグル・プレイを使ったナビを頼りに一人で試乗コースを回っていたのだが、途中でミスコースして、他の人たちよりもランチ・ポイントに着くのが2時間以上も遅れてしまった。しかし、そのおかげで素晴しい山道を思う存分走り回ることができた。スポーツ・モードで走っていると、スタッドレス・タイヤを履いた試乗車は、コーナーの出口で簡単にオーバーステアに持ち込める。その時のコントロール性の良さは特筆モノで、こんな乗り心地が良く、しかも、常にフラット・ライドで、さらにコントロール性も抜群のスポーツカーはほかにないのではないか。4ドア4シーターであることの車両重量を除いては、まったく非の打ち所がない。走っているうちに、これまで私が乗ったすべてのクルマの中で、機械としてのクルマのデキで言えば、これが一番かも知れないと思えてきた。もっとも、私がそれなりの距離を乗った市販車の中で、もっとも高価であることを考えれば、それも当然なのかも知れないが……。

◆感動の走りを生み出す新兵器の解説は【エピローグ】で!

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文=村上政(ENGINE編集部) 写真=フェラーリS.p.A



フェラーリ・プロサングエ
駆動方式   フロント縦置きエンジン4WD
全長×全幅×全高   4973×2028×1589mm
ホイールベース    3018mm
車両乾燥重量    2033kg
重量配分(前:後)   49:51
エンジン形式    65度V12DOHC48バルブ、ドライサンプ
排気量       6496cc
ボア×ストローク  94×78mm
最高出力     725ps/7750rpm
最大トルク     716Nm/6250rpm
最高許容回転数   8250rpm
トランスミッション  ツインクラッチ式8段自動MT
サスペンション(前)ダブルウィシュボーン/コイル
サスペンション(後)マルチリンク/コイル
ブレーキ(前後)  通気冷却式ディスク
タイヤ(前/後)  255/35R22 /315/30R23
燃料タンク容量  100リッター
トランク容量  473リッター
最高速度  310km/h
0-100km/h加速  3.3秒
車両本体価格(税込み)  4760万円

(ENGINWEBオリジナル)

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