2023.05.30

CARS

フェラーリからマクラーレンに移籍した、元プロサングエの最高技術責任者にインタビュー! マクラーレンのスーパーSUVの可能性はあるのか?

マクラーレン・オートモーティブのCEO(最高経営責任者)、マイケル・ライターズ氏が来日、これからのマクラーレンを率いるリーダーに、モータージャーナリストの山崎元裕がインタビューした。

最高技術責任者としてフェラーリでプロサングエを開発

昨年7月にCEOに就任したマイケル・ライターズ氏に短い時間だがインタビューする機会を得た。

――まず、マクラーレンのCEOとなられるまでのキャリアを簡単に教えてください。



ライターズ氏(以下L) ドイツ・アーヘンの大学で機械工学を学び、その後応用工学に関連する会社で働き、博士号を修めました。最初のプロ・キャリアはポルシェでの13年間。様々な役職を経験する中で、カイエンやマカンなどのプロダクション・ラインの責任者を務め、その後フェラーリでCTO(最高技術責任者)として、おもにプロサングエの開発にあたりました。

――外から見たマクラーレンと、実際に中に入って見たマクラーレンには何か違いはありましたか。

L マクラーレンはポルシェの時代にも、フェラーリの時代にも常にベンチマークのひとつとして考えていたメーカーでした。特に軽量化技術とエアロダイナミクス関しては。実際にその内側に入ってみても印象はまったく変わりませんでした。まずブランドとしての強さに大きな感銘を受けました。カスタマーに対してのコミットメントを確かに実現するということも同様ですね。そしてそのコミットメントこそが、我々マクラーレンというブランドの本質とするべきなのだと考えるようになりました。

アルティメット・シリーズのP1とスーパーカーズのアルトゥーラの並走。

一体感が大切

――マクラーレンと他メーカーのカスタマーとの間には、キャラクターの違いはあるのでしょうか。

L マクラーレンのカスタマーは常に本物を求めています。マクラーレンのDNA、スーパーカーのDNAを求めているのです。特に大切なのはもちろんドライビング・ダイナミクスにあり、クルマとのコネクション、すなわち一体感をステアリングなどドライバーが直接触れる部分の感触から、どれだけ正確に得るかが最も重要な本物の定義です。

――アルティメット、スーパーカーズ、そしてGTという各シリーズで、現在のマクラーレンはポートフォリオを形成していますが、これに何かが加わる、あるいは変更される可能性はありますか。

L 将来のことについて具体的にコメントするのは、時期尚早だと思いますが、私自身の考える基本的なコンセプトについて説明しましょう。まずトライしたいのはモデル間の区別をもっと明確にしたいということです。これはそれぞれのモデルの個性をもっとはっきりさせるという言葉に置き換えてもよいでしょう。

チリひとつない真っ白なフロアが美しいマクラーレン・プロダクション・センター。2025年までにはすべてのモデルを電動化し年間約6000台の生産を計画している。

第一にはまずテクノロジー。どのモデルにどのテクノロジーを使うのか。同時にデザイン上の違いというものもより強く打ち出していかなければならない。つまり将来のマクラーレンのモデルには、より分かりやすさが必要であるとともに、そのモデルが存在する目的、なぜマクラーレンがそれをカスタマーに提供するのか。そしてカスタマーがそれを購入し、実際にどのように使うのかというアライメントを取っていかなければならないということなのです。

例えるならばサーキットを走るのか、日常的な実用性を重視するのか。パフォーマンスやエンゲージメントなどのコンセプトを各モデルで定めて、そこにマクラーレン独自の技術を落とし込む。これが私の考える将来のマクラーレンと考えていただければよいでしょう。

日本は成長市場

――実際に新たなポートフォリオが見えてくるのは、いつくらいの時期になるでしょうか。

L 新しいポートフォリオの策定はステップ・バイ・ステップで行うものですから、概略が定まるにはこの先2年から3年の時間が必要になるでしょう。その前に少しずつ明確化されてくるのだとは思いますが。クルマのライフサイクルはそれなりに長いものですからね。

――日本市場についてお伺いします。率直にこれまでの我々の市場についてはどのような感想をお持ちでしょうか。さらなる成長性はあると考えていらっしゃいますか。

L マクラーレンはほかのライバル・メーカーと比較して、非常に若いブランドです。にもかかわらず過去、素晴らしいリザルトが達成されていると私は自負しています。私は今回一日半をこの東京で過ごし、ディーラーの皆様ともお会いするチャンスがありましたが、みなさんのコミットメントの強さ、そしてさらにその上に何かを乗せることができる強さを感じることができました。日本はすでにマクラーレンにとっては発展途上ではなく、十分に成熟した市場ですが、さらなる成長を遂げるポテンシャルを持つことは確かだと思います。

日本のカスタマーはスーパーカーに対して常に強いパッションを持っている。そこにマクラーレンはさらなるアプローチをかけることができるはずです。そのためには我々もさらに積極的な投資をしていかなければならないと思います。

2022年6月のグッドウッドで発表されたアルトゥーラGT4。

60周年記念

――今年、2023年はマクラーレンのレーシングチームの発足から60周年というアニバーサリー・イヤーですが、それを記念する特別なイベントは計画されていますか。

L いくつかのイベントを考えています。後ほどマクラーレンから正式な発表がありますので、ぜひご期待ください。カスタマーに対しての特別なエクスペリエンス、マクラーレン・レーシングと、マクラーレン・オートモーティブのつながりをより強化すること。改めてヘリテージを振り返ること等々、現代に相応しい方法で60周年を祝います。

――レーシングの戦績は、オートモーティブの販売に大きな影響力を及ぼすのでしょうか。

L それはF1でのリザルトということになると思いますが、直接の関係はないと考えられます。F1の戦闘力が上がってくれば、将来それに搭載された技術がプロダクション・モデルに採用され、ここでカスタマーに大きなセールス・パフォーマンスを与えるとは思います。もちろんマーケティングや企業イメージなどの分野では、レーシングの影響力が欠かせないのは確かです。

文=山崎元裕 写真=マクラーレン・オートモーティブ

(ENGINE2023年6月号)

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