2024.11.23

LIFESTYLE

森に飲み込まれた家が『住んでくれよ』と訴えてきた 見事に生まれ変わった築74年の祖父母の日本家屋 建築家と文筆家の夫妻が目指した心地いい暮らしとは?

長らく放置されていた家が……

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雑誌『エンジン』の大人気連載企画「マイカー&マイハウス クルマと暮らす理想の住まいを求めて」。今回は、静岡県島田市の田んぼの隣に立つ日本家屋。長らく放置されていたこの家が、建築家と文筆家のご夫婦の手により生まれ変わった! ご存知、デザインプロデューサーのジョースズキ氏がリポートする。

家が『住んでくれよ』と訴えてきた……

建築家の町秋人さん(39歳)と文筆家の紗耶香さん夫妻が、2人の子供と暮らす静岡県島田市の家。右頁の写真は、この家のメインのスペースとなるダイニング・キッチンだ。天井高は5m近くあり、ガラス窓の向こうに庭が広がっている。向かって右手の壁には大きな木製のオリジナルのキッチンカウンターがあり、左手の棚には吟味された調理道具や食器が並んでいる。レンガの床にはウールの絨毯が敷かれ、寒い時期に活躍する薪ストーブも。そしてダイニング・セットは、少量生産の作家モノである。実はこの家、築74年の祖父母の家を改修したというから驚きだ。





町邸が建つのは、工場に店舗、住宅に田畑などが混在する駅に近いエリア。ここから少しクルマを走らせた茶畑の丘からは、青々とした山の間から流れてきた大井川が作る、自然豊かでダイナミックな景色が楽しめる。そんな島田市は木材産業の歴史が長く、町さんの実家も兄で4代目の製材業。祖父母の家は、家業の事務所や倉庫がある敷地の一角に建っていたが、会社ともども35年前に移転している。以来この家は、長いこと放置されていた。

そんな製材所の事務所を、町さんが独立して建築事務所として使い始めたのは7年前のこと。市内の古い一軒家を借りて暮らしていた町さん夫妻は、祖父母の家に住むことを想像すらしていなかった。手入れがされていない家の周りは木々が伸び放題。街の中でここだけが木が鬱蒼と茂り、小さな森になっていた。

住み手のいなくなった家は傷みが早く、白アリの被害も。住むにしても、生活用品が残ったままの室内を片付けるだけで大変だ。それでも、祖父母の家を改修したのは、建築家として自身の思想が表現された空間になるから。そのうえ不思議な話だが、「家が『住んでくれよ』と訴えている」ような気がしたのだ。

このような経緯で改修した町邸は、なかなかユニーク。古い住宅を古民家風にしないで、現代の住宅の要素も上手く盛り込んでいる。また、ガラス窓の使い方が独特だ。壁の一部をガラスにして採光を確保するだけでなく、視線が抜ける設計になっている。なかでも印象的なのは、階段を上がって二階に着いた先の壁がガラス張りなこと。階下のダイニング・キッチンの様子がよく分かる。

「家族の姿が見えることで、お互いの距離がゆっくりと近づいていく」というのが、町さんの考えだ。










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