クラシック・カー&ヒストリック・カーのイベント、「ノスタルジック2デイズ」の目玉企画の1つが「選ばれし10台」。主催社が発行する『ノスタルジックヒーロー』、『ハチマルヒーロー』両誌の公募によって選ばれた10台クルマ(今年はプラス1台のスクーター)が会場に展示される。その中から、まずは3台の日産車を紹介しよう。
1973年式日産バイオレット 2ドア・ハードトップ1400デラックス1970年代に入ると、日産は3代目510型「ブルーバード」をフルモデルチェンジし、4代目となる610型を「ブルーバードU」という名称を与え、1つ上のクラスに移行した。これによりサニーとのすき間が大きくなり、そこを埋めるために登場したのがこの「バイオレット」だ。バイオレットの登場により、日産車はボトムからチェリー、サニー、バイオレット、ブルーバードUと充実したラインアップを構成することになった。
アピールポイントは “すっぴん”初代バイオレットは1973年にデビュー。4ドア・セダンと2ドア・セダン、2ドア・ハードトップの3種類のボディ・バリエーションでスタートするが、のちにライトバンも追加される。エンジンは1.4リッターから2.0リッターまで4機種用意され、そのバリエーションは豊富だった。
展示車はデビュー年ト同じ1973年式のスポーティな2ドア・ハードトップだが、グレードは最も安価な1400デラックス。「SSS」といったスポーティ・グレードなどの人気グレードがラインナップされていたなか、廉価モデルであることがさらに珍しい。
オーナーによるアピールポイントは「なんといっても“すっぴん”であること」と語っている。ボディは追浜工場で使用していた純正塗料で再塗装済み。クルマ選びのバイブルと呼ばれた単行本、「こんな車でも買う人がいるから不思議」の中で酷評されたとオーナーは語るが、それがかえってバイオレットに対する愛着として伝わってくる。
1979年式日産セドリック4ドア・セダン2000SGL-Eエクストラ初代30系セドリックは1960年に登場。展示車は1975年にフルモデルチェンジを受けた4代目の330系で、1979年は330系最後の年となる。当時、すでにショーファー・ドリブンのプレジデントは存在していたが、セドリック(と兄弟車のグロリア)は日産のオーナーカー向けモデルの最上位に据えられていた。
330セドリックには4ドア・セダン、4ドア・ハードトップ、2ドア・ハードトップ、ステーションワゴンおよびライトバンの4種のボディ・タイプがあった。エンジンはガソリンとディーゼルがあり、ガソリンは2リッターと2.8リッターで、最終型となる1979年式はそれぞれに電子制御燃料噴射のEGIとキャブレターが設定されていた。
展示車は2リッターの最上級グレードでEGIのエンジンを搭載する。オーナーのお父様が新車で購入されたクルマで、当時、2リッター・モデルにはバンパーのオーバーライダーが装備されなかったが、新車で納車される際に注文して装着しているところがオリジナルと異なるが、そのほかはすべてオリジナル状態を保っている。子供の頃から現オーナーが兄弟とともに洗車&ワックス掛けを担当していたという。車庫保管ということもあり、状態は非常にいい。
1992年式日産スカイライン4ドア・スポーツセダンGTSタイプX1957年に富士精密工業(のちのプリンス自動車工業)が製造した初代モデルから数えて8代目に当たるR32型スカイラインがデビューしたのは1989年。GT-Rが復活したモデルとしても有名だ。7代目は高級車志向のモデルとしてデビューしたが、後期型からはスポーツ指向に方向転換。R32はその流れをさらに強調する、スポーツ色の強いモデルとなった。
スカイラインにも様々なボディ・バリエーションが存在していたが、この時代は4ドア・セダンと2ドア・クーペのみ。ただセダンやクーペと呼ぶのではなく、スポーツセダン、スポーツクーペと呼称したところにこだわりを感じる。エンジンは2リッター6気筒をメインに2.5リッター6気筒、2リッター6気筒ターボ、1.8リッター4気筒、そしてGT-R用の2.6リッター直6ツインターボが用意された。いずれのエンジンであっても前後マルチリンク式サスペンションを採用するのも特徴的だ。
2リッター6気筒を積むこのGTSタイプXのオーナーは女性で、現在の旦那様と出会ったのがクルマの部品交換だったという。結婚後もR32のスカイラインに乗っていたが、長男が生まれたタイミングで2ドアから4ドアへ乗り換え。その4ドアがこの個体かと思いきや、こちらは長女が生まれたときに増車したクルマだという。フルエアロ、BOSCHツインフォグ、レースのカバーなどはすべて純正品。ホイールはBBSを履いている。
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文=諸星陽一
(ENGINE WEBオリジナル)