4月上旬にスイスで開催されたWatches & Wonders Geneva(W&WG)でお披露目されたパルミジャーニ・フルリエの新作はすっきりと美しくまとめられたパーペチュアルカレンダー。ENGINE時計委員の目にはどのように映ったのだろうか。
美観とは何か、を考えさせる時計
仕事柄プレスリリースをもらうことが多い。それらを読んでいると、ときどき実物と容との差異を感じることがあり、やはり実際に時計を手に取って見ることは重要だと痛感する。
しかしこの新作を見たとき、なんと資料の言葉にたがわずブランドの理念を着実に具現した時計なのだろう、と思った。

文中に綴られたキーワードは、“純粋さ”や“ミニマリストのビジョン”。
複雑になりがちなパーペチュアルカレンダーの表示を、同軸上の二つのサブダイアルの中にすっきりと、美しくまとめた。しかも長さの異なる針は読みやすく、3つのコレクターによる調整も簡単で、日常的に使いやすくなっている点が実によい。
海塩などを混ぜたペーストを塗りブラシで仕上げる、古典的なグレナージュ仕上げで文字盤は質感溢れる表情となっており、うっとりといつまでも眺めていたくなる。こんな手の込んだ、引き算の美学が宿る時計をすっと着けこなす、そんな大人になりたいなあとつい思ってしまうのだ。
トリック パーペチュアルカレンダー
シンプルな2針モデルとして2024年に再出発した「トリック」にパーペチュアルカレンダーを追加。“ミニマルデザインとプライベートラグジュアリー”のコンセプトを貫き、パーペチュアルカレンダーの表示も、ダイアル下半分のスペースに控え目に配置。

ダイアルを賑やかに飾ることが多いパーペチュアルカレンダーとはまったく趣が異なり、格別な気品が漂う。モーニングブルーと呼ぶカラーダイアルも優美な表情を生む。手巻き。プラチナ950、ケース直径40.6mm、3気圧防水。世界限定50本。1511万4000円(ローズゴールドモデル1397万円)
問い合わせ=パルミジャーニ・フルリエ
pfd.japan@parmigiani.com文=野上亜紀
(ENGINE2025年7月号)