2025.11.12

CARS

1000万円超えの価値はあるか?新型アウディSQ5スポーツバックの試乗で見えた「全方位の走り」

2025年に登場し通算3代目となるアウディQ5シリーズ。そのスポーツグレードとなるSQ5に試乗した。

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アウディの新世代プラットフォームPPCを採用した初のSUV、新型Q5シリーズ。そのスポーツグレードとなるSQ5に乗る機会を得た。ENGINE編集部のムラカミが、その乗り味を確かめた。

グッド・バランスのSUV

少し前に新型アウディS5アバントに試乗して、かつてのA4オーナーとしては、その進化ぶりに大いに感心させられたばかりだが、今度は同じプラットフォームとパワートレインを持つSUVクーペのSQ5スポーツバックに乗る機会を得た。

簡単におさらいすると、プラットフォームは電気自動車用のプレミアム・プラットフォーム・エレクトリック(PPE)をベースに、世界の電動化の流れが減速する中で、いわば後戻りする格好で内燃機関を搭載できるように開発されたプレミアム・プラットフォーム・コンバスション(PPC)。この出来栄えが、とても俄か作りとは思えないくらいに素晴らしいことは、S5で検証済みだ。

ダーククロームのテールパイプや21インチのシルクマットグレーポリッシュト・ホイール&タイヤはオプションとなる。

パワートレインの基本は可変ジオメトリー・ターボを装備した3リッターV6エンジンをフロント・オーバーハングに縦置きし、7段ATを介して4輪を駆動するアウディご自慢のクワトロ・システム。

加えて、トランスミッションの出力軸に48Vで駆動する24psの小さな電気モーターを取り付けたMHEVプラスと呼ばれるマイルド・ハイブリッド・システムを採用しているのが新機軸で、その結果、燃費効率が良いだけでなく、スムーズで力強い走りが実現していることも、S5に乗って知っている。

では、今回のSQ5スポーツバックと前回のS5アバントとの違いは何か。ボディ形状はもちろんだが、そのほかに足回りにエアサスペンションが使われていたことだ。A5シリーズには設定がないエアサスが、Q5シリーズではスポーツグレードのSQ5にのみオプション装備できるようになっており、今回の試乗車にはそれが奢られていたのだ。

ダイアモンドステッチの入ったナッパレザーが使われたスポーツシートは、エアサスも含めたラグジュアリー・パッケージ(71万円)のオプション。

ナッパレザーのインテリアなどと合わせたラグジュアリー・パッケージは71万円。値は張るものの、これのおかげでコイル・スプリングのS5アバントでも、かつてのA4アバントに比べて格段に良くなったと思った乗り心地が、さらに数段良くなっていることが、まず印象に残った。

スポーツ性能と実用性の両立

加えて前回、S5アバントに感心したのは、スポーツ性能と実用性を兼ね備えた1台としての幅の広さが増していることだったが、その点でもSQ5はさらに進化を遂げていた。

そもそも、SUVという車型が、その名前の通り、スポーツ性能と実用性(ユーティリティ)を兼ね備えたものであるとしても、実際にはその両者を1台で実現することは容易ではない。

スポーツ性能を上げるためには、実用性を犠牲にしなければならないか、あるいはその逆というトレードオフの関係があるからだ。それをアウディは、モットーである「技術による先進」で解決しようとしてきて、この内燃機関の時代の掉尾を飾る新型SQ5でついに実現した、と言っては誉めすぎだろうか。

48Vモーターを取り付けたMHEVプラスと呼ばれるマイルド・ハイブリッド・システムを採用。燃費効率だけでなくスムーズで力強い走りも実現している。

高速道路での直進安定性と乗り心地の良さ、走りのスムーズさ、山道でのハンドリング性能の高さ、街中での使い勝手の良さ、そして大人4人が快適に過ごせて、荷物も満載できる実用性、さらに付け加えるなら、場合によっては道無き道でも走破できるようなオフロード性能。そういった強欲な人類がクルマに求めてきたもののすべてを、SQ5は見事なまでに兼ね備えている。

そして、それはクワトロ4WDに始まり、48Vの電気モーターでの走行も可能なマイルドハイブリッド、高さも硬さも調整可能なアダプティブ・エアサスペンションといったハード面の技術、そしてマルチメディア・インターフェイス(MMI)を始めとするソフト面の技術による進化が合わさって実現したものだ。

SQ5はバランスト、ダイナミック、コンフォート、エフィシェンシー、オフロードの5つのドライブ・モードを持つが、私が一番感心したのはバランストを選んだ時の自由自在な乗り味で、スポーティに走りたい時にはクルマが勝手にスポーティな設定にしてくれるし、高速道路をゆったりと走りたい時には快適性を重視した設定になる。

この全方位に適応するバランスの良さこそがアウディの真骨頂であり、新型SQ5はその頂点に立つ1台だと思ったのだ。あえて欠点を挙げるなら2t超の重さと1000万円超の価格だが、このオールマイティな性能を思えば、これもグッドバランスなのかもしれない。

文=村上 政(ENGINE編集部) 写真=望月浩彦

■アウディSQ5スポーツバック(エアサス、サンルーフ装着車)
駆動方式 フロント縦置きエンジン4WD
全長×全幅×全高 4715×1900×1630mm
ホイールベース 2825mm
車両重量(車検証) 2110kg(前軸1160kg、後軸950kg)
エンジン形式 V6DOHC可変ジオメトリー・ターボ
排気量 2994cc
ボア×ストローク 84.5×89.0mm
最高出力 367ps/5500-6300rpm
最大トルク 550Nm/1700-4000rpm
トランスミッション 7段DCT
サスペンション(前) マルチリンク/エアスプリング
サスペンション(後) マルチリンク/エアスプリング
ブレーキ(前後) 通気冷却式ディスク
タイヤ (前後) 255/40R21
車両本体価格(税込み) 1058万円(+オプション157万円)

(ENGINE2025年12月号)
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