2025.12.07

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【2027年発売:GR GT】日本のモノづくりの思想で開発されたトヨタのフラッグシップ・スポーツカー

GR GTは逆転の手法で作られたフラッグシップ・スポーツカー(2027年頃発売予定)

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トヨタは、2025年12月5日、開発中のプロトタイプ車両であるGR GTとGR GT3を世界初公開した。日本のモノづくりの伝統を継承する年式遷宮(ねんしきせんぐう)の思想によって開発された新たなフラッグシップ・スポーツカーにはどのような特徴があるのだろうか。

「低重心、軽量・高剛性、空力性能の追求」にこだわったGR GTとGR GT3

フラッグシップ・スポーツカーとなるGR GTとFIA GT3規格に準じたGR GTベースのレーシングカーGR GT3は、基本的な骨格やメカニズムを共有している。

GR GTとGR GT3

どちらのモデルもキー要素となるのは、“低重心”、“軽量・高剛性”、“空力性能の追求”だ。

重心を低くするために重量物の最適な配置やエンジンなどにこだわっている

GR GTは、キー要素である“低重心”を実現するために、全高とドライバーの位置を極限まで下げることから開発がスタートした。

新型フラッグシップ・スポーツカー「GR GT」

また、ドライサンプ方式を採用した4リッターV8ツインターボエンジンやリアに搭載されたトランスアクスルなどのユニット類を最適な位置に搭載し、重量物の重心位置を下げている。

新型フラッグシップ・スポーツカー「GR GT」

その他にも、クルマとドライバーの一体感と扱いやすさを高めるために理想的なドライビングポジションを追求。その結果、ドライバーとクルマの重心がほぼ同じ位置になっている。

駆動方式は、限界領域までの扱いやすさを考慮し、FR(フロントエンジン・リアドライブ)が採用されている。

軽量・高剛性のボディを実現するためにトヨタ初となるアルミボディを採用

GR GTでは、“軽量・高剛性”を実現すべく、トヨタとして初めてオールアルミニウムの骨格を採用。骨格の主要部には、大型中空アルミ鋳物を使用している。

新型フラッグシップ・スポーツカー「GR GT」

その他にも、アルミ押出材など、最適な部材配置と接合技術を使って高いボディ剛性を実現した。

ボディパネルには、アルミニウムのほか、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)を使用し、強くて軽いボディに仕上げている。

新型フラッグシップ・スポーツカー「GR GT」

サスペンションは、前後ともに新設計となるアルミ鍛造アームを使用したローマウントのダブルウィッシュボーン式。サスペンション特性をゼロから開発し、日常使いから限界域までリニアなレスポンスと高いコントロール性にこだわっている。

新型フラッグシップ・スポーツカー「GR GT」

タイヤは、MICHELINのPILOT SPORT CUP2を装着。このタイヤは、GR GTのために専用開発された。

ブレーキは、Brembo(ブレンボ)製のカーボンディスク。ブレーキをかけたときの車両の挙動制御は、プロドライバーとともに作り込まれている。

GR GT3

GR GTのVSC(Vehicle Stability Control:横滑り防止装置)は、駆動力とブレーキ制御を多段階で調整することが可能。運転技量や走行時の天候に応じて車両コントロールの難易度を選択することで、楽しく、安心してドライビングを堪能できる。ちなみに、このVSCは、ニュルブルクリンク24時間耐久レース参戦車にも採用されている技術だ。

GR GTに使われているオールアルミニウム骨格、前後ダブルウィッシュボーンサスペンションの基本構造は、GR GT3にも共用できるように開発されている。

理想の空力性能を決めてからエクステリアをデザインする逆転の開発手法

GR GTでは、先に空力性能の理想像を定めてからデザインの検討を進める「空力ファースト」の考え方でエクステリアデザインが決められた。

新型フラッグシップ・スポーツカー「GR GT」

従来のクルマでは、エクステリアデザインを先に決めてから、空力を考慮するという方法だったが、GR GTでは逆の順番となっている。

あえて従来のクルマづくりとデザインの順序を変えた理由は、320km/h以上の最高速度を誇るGR GTにおいて、空力性能は最重要課題のひとつと考えているためだ。

新型フラッグシップ・スポーツカー「GR GT」

GR GTは、「公道を走るレーシングカーとしてあるべき姿とは何なのか」ということを考え、FIA世界耐久選手権(WEC)の参戦車両を手掛ける空力エンジニアも開発に携わり、デザイナーと議論を重ね「空力モデル」を空力設計のメンバーが提案。

新型フラッグシップ・スポーツカー「GR GT」

この「空力モデル」の理想フォルムを表わした模型をベースに車両のパッケージを決定した後、量産化を見据えてエクステリアデザイナーがスケッチを描き、最終的なデザインが決まった。

新型フラッグシップ・スポーツカー「GR GT」

GR GTのインテリアは、ドライビングポジションと視界を最重視したデザインだ。

プロドライバーとともに、サーキットユースとデイリーユースを両立する最適なデザインを目指し、守られ感のある空間となっている。

また、ドライビングに関わるスイッチ類をステアリング付近に配置し、直感的に押しやすい位置と形状になっているのも特徴だ。

新型フラッグシップ・スポーツカー「GR GT」

メーター表示は、サーキット走行時でも視認できるように、シフトアップインジケーターとシフトポジションといった情報表示の幅、高さ、位置などを試行錯誤しながらつくりあげられている。

4リッターV8ツインターボエンジンとモーターの組み合わせで650PS以上を発生させる新開発のパワーユニット

GR GTには、トヨタの市販車として初となる4リッターV8ツインターボエンジンを搭載する。

エンジンは、GR GTの“低全高・低重心パッケージ”を実現するため、徹底的に小さく・軽くしている。

新型フラッグシップ・スポーツカー「GR GT」

具体的には、ボア×ストロークを87.5mm×83.1mmのショートストロークにすることでエンジンそのものの高さを抑え、バンク内に2つのターボを配置したホットV形式やドライサンプシステムを使い、オイルパンの薄型化により、小さく・軽いエンジンに仕上げている。

エンジンが生み出した動力は、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)製のトルクチューブを介して、リアのトランスアクスルへ伝達。

新型フラッグシップ・スポーツカー「GR GT」

トランスアクスルは、モータージェネレーターに加え、トルクコンバーターを廃した「WSC(ウェット・スタート・クラッチ)」を使った新開発の8速ATと機械式LSDを一体化。エンジンの動力をタイヤまでダイレクトに出力する仕組みとなっている。

4リッターV8ツインターボエンジンに1モーターを組み合わせたGR GTのシステム出力(開発目標値)は、最高出力650PS以上、最大トルク850Nm以上だ。

新型フラッグシップ・スポーツカー「GR GT」

GR GTの前後重量配分は、前45:後55。リアトランスアクスルの採用と、駆動用バッテリーや燃料タンクといった重量物の最適配置によってバランスのよい前後重量配分を実現している。

GR GTは、高い動力性能だけでなく、V8ツインターボならではのレーシングサウンドを追求。「クルマと対話できるサウンド」、「熱量変化を感じさせるサウンド」の2つの柱を軸に、排気管の構造を作り込み、クルマの状態と連動するサウンドを実現しようとしている。

また、GR GTを継続的に販売するために、今後さらに厳しくなる排ガス規制への対応も視野に入れて開発中だ。

FIA GT3規格のGR GT3はGR GTと基本構造を共有して運転しやすいレーシングマシンへ

GR GT3は、GR GTをベースに世界中のレースで活躍するクルマを目指したマシンだ。

GR GT3

また、プロドライバーのみならずジェントルマンドライバーも含めたすべてのカスタマーに向けて、勝ちたい人に選ばれる、誰が乗っても乗りやすいクルマを目指している。

GR GT3

なお、オールアルミニウム骨格を採用したシャシーやダブルウィッシュボーン形式のサスペンション、4リッターV8ツインターボエンジンはGR GT譲りの構造だ。

発売は2年後となる2027年頃!続報は随時発表される!

GR GTとGR GT3は、かつてのトヨタ2000GT、レクサスLFAに続くフラッグシップ・スポーツカーという位置づけのモデルだ。

左:LFA、中央:GR GT3、右:GR GT

今回、世界初公開されたGR GTとGR GT3は、2027年頃の発売を目指して開発を進めている途中だ。詳細は随時公開されていく予定となっている。

GR GTの主要スペックと歴代フラッグシップスポーツカーのスペック一覧

新型フラッグシップ・スポーツカー「GR GT」

【GR GT(プロトタイプの開発目標値・社内測定値)】
・全長:4820mm
・全幅:2000mm
・全高:1195mm
・ホイールベース:2725mm
・車両重量:1750kg以下
・乗車定員:2人
・前後重量配分:前45:後55
・パワートレイン:4リッターV8ツインターボエンジン+トランスアクスル内蔵1モーター
・システム最高出力:650PS以上
・システム最大トルク:850Nm以上
・駆動方式:FR
・サスペンション(フロント/リア):ダブルウィッシュボーン式・コイルスプリング/ダブルウィッシュボーン式・コイルスプリング
・ブレーキ(フロント/リア):カーボンセラミック・ディスクブレーキ/カーボンセラミック・ディスクブレーキ
・タイヤサイズ(フロント/リア):265/35ZR20/325/30ZR20
・最高速度:320km/h以上
・発売時期(予定):2027年頃

レクサスLFA

【レクサスLFA】
・全長:4505mm
・全幅:1895mm
・全高:1220mm
・ホイールベース:2605mm
・車両重量:1480kg
・トレッド(フロント/リア):1580mm/1570mm
・乗車定員:2人
・エンジン:V型10気筒DOHC(1LR-GUE型、排気量4805cc)
・最高出力:412kW(560PS)/8700rpm
・最大トルク:480Nm(48.9kgm)/6800rpm
・トランスミッション:6速ASG
・駆動方式:FR
・サスペンション(フロント/リア):ダブルウィッシュボーン/マルチリンク
・ブレーキ(フロント/リア):ディスク(カーボンセラミックブレーキ)/ディスク(カーボンセラミックブレーキ)
・タイヤ(フロント/リア):265/35ZR20(95Y)/305/30ZR20(99Y)
・最高速度:325km/h
・0-100km/h加速:3.7秒
・販売台数:世界限定500台(日本での販売台数:165台)
・生産開始時期:2010年11月
・生産終了時期:2012年12月14日
・販売価格:3750万円

トヨタ2000GT

【トヨタ2000GT】
・型式:MF10
・全長:4175mm
・全幅:1600mm
・全高:1160mm
・ホイールベース:2330mm
・トレッド(フロント/リア):1300mm/1300mm
・最低地上高:155mm
・室内長:720mm
・室内幅:1430mm
・室内高:950mm
・車両重量:1120kg
・乗車定員:2人
・最小回転半径:5.0m
・エンジン:直列6気筒DOHC(3M型、排気量=1988cc)
・最高出力:150PS/6600rpm
・最大トルク:18.0kgm/5000rpm
・トランスミッション:5速MT
・駆動方式:FR
・燃料タンク容量:60L
・ブレーキ(フロント/リア):油圧ディスクブレーキ/油圧ディスクブレーキ
・最高速度:220km/h
・最高巡航速度:205km/h
・0-100km/h加速:8.6秒
・0-400m加速:15.9秒
・生産期間:1967年〜1970年
・生産台数:337台
・車名の由来:2000ccのGT(Grand Tourismo)

新型フラッグシップ・スポーツカー「GR GT」

GR GTとレクサスLFAのサイズを比べると、全長と全幅が拡大し、全高が低くなっている。つまり、LFAよりGR GTの方が、よりワイドでローなスタイルということになる。このスタイルのまま発売されるのかどうかは現時点では不明。続報を待つしかない。

文=齊藤優太(ENGINE編集部)

(ENGINE Webオリジナル)

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