2019.10.25

LIFESTYLE

実はとても居心地がいいウルトラモダンハウス! まるでSF映画に出て来そうな真っ白な室内は必見!!

ファッション・ブランド、SISII(シシ)のデザイナーであり経営者でもある小池さんお気に入りの空間。

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美意識がつまっている

一方、構造は極めて前衛的だ。一本の細長い紙を何か所かで折り曲げた、一筆書きのような作りをしている。東の玄関から入って廊下を過ぎれば大きなダイニングで、奥の階段を上がれば、一番西にある2階のリビングとなる。そしてリビングの扉を開けて屋根の上に出て、東側で折り返せば、傾斜した屋根の最高部である西側に辿り着く。



間取りは、ダイニングを中心に、個室などが繋がったもの。隣家が近いので、プライバシー保護のため、採光用の窓は2階のリビングスペースの南面に大きな摺りガラスがあるのみ。照明は、壁面に埋め込まれたLEDのラインが何本かあるだけだが、これで室内は十分に明るい。天井と壁が白で床が銀色のアルミ素材のため、反射して光が回るのだ。そして見上げた天井は、照明・空調の穴など何一つ存在しない、白くて平らな面。研ぎ澄まされた美意識を感じるものだ。

経済的なアイディアは経営者視点

美的な面にはとことん拘ったが、経済的な面もしっかり両立させているのが小池邸である。まずこの独創的な建物は、コンクリート造ではなく木造だ。柱の見えない大きな室内空間を作るため、建築家は屋根をできるだけ軽くした。結果、建築費も抑えられることに。床暖房は設けず、冬は絨毯の下にホットカーペットを敷くのはアイディアである。しかも送風機を上手く活用することで、「夏もエアコン1機で快適に過ごせ、電気代はさほどかかりません。男の子は成長するとすぐに家を出てしまうから」と、二人の子供(現在は高校生と中学生)のためにあえて個室を設けず、寝室は共用とした。勉強は大きなダイニングテーブルでしている。極めて合理的だ。

小池さんはデザイナーでありながら経営者でもある。この相反する二つの立場が、前衛的でありながら経済的な家を作りあげたのだろう。そんな小池さんの愛車は、ポルシェ・マカンGTS(2017年製)。それまではボルボXC90で、お子さんたちが幼い頃は、随分とキャンプに出掛けたそうだ。芦屋の山は自然が残っており、レンジローバーで悪路を走りまわった時代もあった。

「もともと走るのが好きなんです。長く乗ったボルボの買い替えを検討していた時、丁度マカンのGTSが出て。新しいXC90と値段はさほど変わらないし、GTSなら走りの面でも断然魅力的なので」クルマ選びも小池さんらしい。

そんな建て主の普段の生活と言えば、「職場では忙しく動き回っていますが、家に帰るとのんびりして、何もしないタイプなんです」

たしかに前衛的でミニマルなこの家に足を踏み入れると、最初はテンションが高いが、暫く身を置いているうちに不思議と落ち着いてくるのである。そして思った。この空間で何もしないというのは、心底気持ち良いのではないかと。小池さんがミニマルなこの家を建てた理由が、何となく分かった気がした。

文=ジョー スズキ 写真=鈴木 勝

上の写真奥が玄関で、サイズは必要最小限のもの。そこから伸びる廊下は、段々と広くなり、ダイニングルームにつながっている。右手の扉は、子供たちの部屋。バイクは、ブルックリン・マシンワークスのもの。他にもモールトンを所有しており、付近の山道走行などを楽しんでいる。



■建築家:山口隆 1953年京都市生まれ。 京都大学卒業後、安藤忠雄に師事し独立。安藤流のコンクリート造に拘ることなく、海外の理論家たちと研究を重ね独自の理論を展開。国内外の大学での講演も多い。住宅以外に、宗教施設、工場(写真)など幅広く設計。クルマ好きで、現在の愛車はマッドブラックのランボルギーニ・ガヤルド。

デザイン・プロデューサーのジョースズキさんのYouTubeチャンネル「東京上手」がスタート!

雑誌『エンジン』の大人気企画「マイカー&マイハウス」の取材・コーディネートを担当しているデザイン・プロデューサーのジョースズキさんのYouTubeチャンネル「東京上手」がスタート。第1回配信は、エンジンでも紹介したことのある国際的建築家、窪田勝文さん設計の山口県のミニマリスティックな住宅。現在配信中の最新のルームツアーは、ル・コルビュジエに学んだ最後の日本人といわれる建築家、進来廉が設計した家を、インテリアスタイリストの川合将人さんが丹精を込めて改修した、予約制のギャラリー・ショールーム兼撮影スタジオの「バンドルギャラリー」。必見です!


(ENGINE2019年11月号)

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