ロマン・ガリ(1914-1980)というフランスの作家をご存知だろうか? この国の最も権威ある文学賞のひとつ、ゴンクール賞を2度受賞した唯一人の人物であり、外交官としてもロサンゼルス駐在領事を務めるなど華々しいキャリアを誇った。またジャン=リュック・ゴダール監督『勝手にしやがれ』のヒロイン、ジーン・セバーグと結婚し、妻を主演にした映画でメガホンを取るなど、マルチな才能の持ち主として知られる。
そのガリの代表作である自伝小説『夜明けの約束』(1960年刊)が映画化された。1月31日より公開される『母との約束、250通の手紙』である。
ユダヤ系ロシア移民であるガリ(ピエール・ニネ)は、シングル・マザーのニーナ(シャルロット・ゲンズブール)に溺愛されながら、幼少期をポーランドで過ごした。貧しさから逃れるためなら、詐欺まがいの商売も平気で行うニーナ。フランスに憧れる彼女は、「お前はいつかフランスの大使になる」、「トルストイやユゴーのような大作家になる」と言い続けながら、幼い息子に社交界に出るための教育を施していく。やがてガリは、母親と共にニースに移り住み、21歳でフランスに帰化。本格的な執筆活動を開始するものの、ヒトラー政権の台頭により、フランス空軍に入隊することを決意する。
映画の軸となるのは、ガリと母親ニーナの驚くような絆の深さだ。とりわけ強烈な印象を残すのが、息子が将来、大物になると信じて疑わないニーナの猛母っぷり。息子が街の子供たちにいじめられて帰宅した際には、「今度、母さんが侮辱されたら担架に乗って帰ってこい」、息子が近所の町娘と交際し始めると「あんな小娘は忘れろ、大使になれば世界中の美女が寄ってくる」と平気で言い放つ始末。そんな母親の期待に応え、彼女が思い描いた夢を本当に実現してしまった息子も凄いのだが……。
ロマン・ガリを知らなくとも、本作は十分に楽しむことができる。時に狂気じみていて、それでいて傍目にはどこか微笑ましくも見えるガリと母親の関係は、実話とは信じられないほどユニークでドラマチックだからだ。ちなみに映画には描かれていないが、ガリは1980年に66歳で自ら命を絶った。遺された言葉は「いっぱい楽しんだ。ありがとう。さようなら」だったという。
『母との約束、250通の手紙』1月31日(金)より、新宿ピカデリーほか全国公開。
配給:松竹 131分 R15+
©2017-JERICO-PATHE PRODUCTION-TF1 FILMS PRODUCTION-NEXUS FACTORY-UMEDIA
文=永野正雄(ENGINE編集部)
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