『地下水道』のアンジェイ・ワイダや『イーダ』のパヴェウ・パヴリコフスキなどの名匠を輩出してきたポーランド映画界。激動の時代をくぐり抜けてきたこの国で、次代を担う才能として今、注目を集めているのが39歳のヤン・コマサ監督だ。
2019年度の米アカデミー賞にノミネートされた『聖なる犯罪者』は、ポーランドで起きた実際の事件を扱う。少年院を仮出所中に、田舎の村で司祭になりすましていた、殺人の前科がある20歳の青年が主人公である。
この“実話”が面白いのは、青年が前任者より有能で、村人からの信頼も厚かったこと。映画でも、スマホを頼りに司祭らしく振舞いながら、ストレートな物言いで、村人たちの心を掴んでいく様子が一種、痛快に描かれている。
やがて青年は、1年前に起きた悲惨な交通事故について知る。だが村の献花台にはなぜか犠牲者7人のうち6人の写真しか飾られていない。事故の真相を明らかにしようと決意した彼は、村の有力者の脅しにも動じず、大胆な行動を起こす。
NETFLIXで配信中の最新作『ヘイター』では、中傷が渦巻くネット社会の闇を炙り出したコマサ監督。この『聖なる犯罪者』の主人公が生きてきたのも、暴力に支配された混沌たる世界だ。人は如何にして罪を贖えばいいのか? 善と悪の境界線はどこにあるのか? 様々な問いかけのある作品だが、ラストに用意された小さな奇跡に、監督の答えを見る思いがした。
1月15日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて公開、以降全国順次公開
文=永野正雄(ENGINE編集部)
(ENGINE2021年2・3月号)
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