フェラーリのショウ・ルームを背に飯倉片町の交差点を東京タワー方面に渡ると、番地名が六本木から麻布台に変わる。六本木の喧騒もこの交差点を渡るとすっかりなくなる。
閑静な住宅街へ続くイタチ坂の途中にそのレストランはあった。外階段を上り、木のドアを開けると大きなキッチン・カウンターが目に入った。テーブル数わずか4つ。たった8人で満席になる小さなフレンチ・レストランは「Patous(パトゥ)」という。2020年8月にオープンした。

オーナー・シェフは山口義照さん。
「上質な食事とサービスを提供するために、あえてこのスペースにしました。少しでも開放的な空間になるようにオープン・キッチンを採用しました」
キッチン・カウンターには棚もないので、シェフの調理を見ることができる。まるで知人のお宅にお邪魔したような家庭的な雰囲気に心が暖かくなった。
匂いが店内にこもらないように、キッチンには大きな換気ダクトが備わっている。感染症の医師が客として来たとき、「こんなに大きな換気ダクトがあるなら空気清浄器はいらないね」と言われたそうだ。
コロナのことを考えると、大きなフロアにたくさんの客がいる店より、安心かもしれない。

「料理には斬新さ、盛り付け、オリジナリティなど、いろいろな要素があると思いますが、あくまでも美味しさにこだわっています」
山口シェフが言うように、料理は奇をてらったものではなく、素材そのものの旨味を引き出した素晴らしいものだった。
それでは私がいただいたランチ・コース(土日のみ6000円より)をご紹介しよう。
〇フォアグラとルバーブジャム ブリオッシュ

フォアグラに長野県で栽培された無農薬のルバーブのジャムを合わせたもの。フォアグラと酸味のあるルバーブのハーモニーが絶妙だった。
〇甘えび、ほたて、あおりいか、小たこのタブレ バジルソース

明石のたこなど新鮮な魚介と北アフリカのクスクスを合わせたサラダ。いろいろな食感があって飽きない。
「クスクスは本来、暖かい料理でシチューみたいにして食べるんですけど、サラダにしました」(山口シェフ)
〇バターナッツのスープ レモングラスのミルク

バターナッツ(かぼちゃの一種)に泡状のレモングラスを合わせたスープ。とても上品で優しい味わい。
「バターナッツはかぼちゃより淡い味わいです。インパクトが弱いので、違う香りをもうひとつ付けたかった。ミントを使ったり、いろいろと試行錯誤しました」(山口シェフ)
フランスの三ツ星レストランで修行したときに、ハーブの使い方を勉強したのだという。季節ごとに変わるパトゥのスープは楽しみにしている客が多く、わざわざ関西から来る人もいるそうだ。
〇対馬産甘鯛のポアレ ういきょうのピュレ

カリッとした甘鯛の皮と柔らかい身を、ういきょうの上品な香りを楽しみながらいただく。ハーブ・リキュールでもちょっと香りをつけている。
〇フランス産小鴨のロースト 冬野菜

定番の小鴨のロースト。噛むほどに味わいが増す小鴨と、ほんのり甘い根菜の調和が素晴らしい。
〇クレームカラメル

デザートは作り立てのプディング。
本当に質の高い料理を家庭的な雰囲気で味わえる「Patous(パトゥ)」。リピーターが多いのもうなづける。隠れ家的な大人のレストランが好きな人にはおすすめである。
レストラン「パトゥ」
■東京都港区麻布台3-4-14 Tel.03-6807-4820 営平日:18:00~20:00(ラストオーダー) 土日のみ12:00~13:00(ラストオーダー) 水曜休
予約はウェブ・サイトから https://patous.jp/

山口 義照
YOSHITERU YAMAGUCHI
香川県高松市出身。大阪あべの辻調理師専門学校卒業。神戸「レストラン コムシノワ」、札幌「コート ドール」、東京「コート ドール」で勤務ののち、渡仏。4年にわたる滞在中当時の三ツ星「マルク ヴェイラ」など4店で働き、1998年帰国。神戸市中央卸売市場にて1年間勤務。1999年神戸市中央区トアロードに「レストラン パトゥ」開店、2005年に中山手通沿いに移転。2020年1月 閉店 東京へ移転計画。2020年8月、東京都港区麻布台にてオープン。趣味は登山、ロック・クライミング。
文=荒井寿彦(ENGINE編集部)
(ENGINEWEBオリジナル)
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