ともに “カレラ” の名を手にするタグ・ホイヤーとポルシェがついに公式に手を組んだ。両者との関わりが深い立場ゆえに、この運命的なパートナーシップの知らせに込み上げてきた熱き想いとは?
1970年に映画『栄光のル・マン』でスティーブ・マックイーンはホイヤー モナコを着け、ポルシェ917でル・マンに挑んだ。半世紀を経てその姿をパトリック・デンプシーさんに重ねる人も多いはずだ。人気俳優にして、ポルシェ911 GT3 RSRでル・マンに挑戦し続ける彼は、ドライバーとして2015年のGTEアマチュア部門で2位、3年後に自身のチームが同部門で優勝している。
「ル・マン24時間は特別なレース。マインドフルネス的な要素が強く、強度の集中力が求められます。私にとっては、まさに人生そのものですね」
パトリックさんがアンバサダーを務めるタグ・ホイヤーと、ル・マン最多優勝を誇るポルシェが今年結んだパートナーシップについては、「とてもファンタスティックなニュース!」と顔をほころばせ、「時を超えて、やっと出会えた、というのが正直な感想です」と感慨深げに付け加えた。
実は両者の「カレラ」は、どちらも1950年代の伝説的な公道レース「カレラ パナメリカーナ メヒコ」にその名のルーツがある。タグ・ホイヤー カレラとポルシェ911は、ともに1963年に誕生し、現在ではそれぞれを代表するハイパフォーマンス・モデルに成長している。
「タグ・ホイヤーとポルシェにはもともと引き合うものがあるし、特にレースや計時など “時に挑戦する” という点で、非常に考え方が似ていると思います。今回のパートナーシップは、歴史的に何度も絡み合ってきた両者がやっと “よりを戻した” とも言えますね。時計もクルマもスピードを制して勝利するには、時を超越しなければなりません。両者はそのための情熱も技術も持っています。ヘリテージを失わず進化を続ける姿勢に共感を覚えます」
最後に、新作スペシャルエディションの印象を尋ねると、「まず、コラボモデルらしいカラーがいい。ポルシェ911 カレラのインテリアを思わせるステッチも気に入りました。しかも、やりすぎ感がなくエレガントで品のよい仕上がり。私はレースでも時計を着けるんですが、視認性が優れているのは大きなアドバンテージだし、腕に着けていることを忘れるような軽快感もいい」と、気に入った様子。
骨太のパートナーシップは、コンペティションから製品開発まで、広範囲に及ぶという。緊密で長期的な協力関係から、今後どんなイノベーションが生まれてくるか、パトリックさんも大いに期待している。
文=大野高広 写真提供=タグ・ホイヤー
(ENGINE 2021年4月号)
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