『ENGINE』8月号では「2023年、推しの1本はこれだ!」をテーマに時計を大特集(前篇)。編集部が信頼する時計ジャーナリストと目利きたちでエンジン時計委員会を結成し、時計好きとしての原点に立ち戻り、2023年のイチオシの時計について、その熱い想いを打ち明けてもらった。 今回はタグ・ホイヤーから、「カレラ」誕生60周年を記念した最新の「カレラ クロノグラフ」を紹介する。 “ホイヤー復活”の象徴 細田雄人(「クロノス日本版」編集部員)
タグ・ホイヤーにこんなワクワクさせられる日が再びくるとは思わなかった。それくらい今年のタグ・ホイヤーは、出してくるモデルがどれも細部までしっかり考えられていて、変な矛盾や妥協した部分が見えてこない。 新しい「タグ・ホイヤー カレラ」はその最たる例だ。39mmというケース径は、明らかに近年のトレンドを意識したもの。小径化に伴って小さくなった文字盤スペースをベゼルレスとすることで確保し、そこに立体感のあるタキメーター付き見返しリングを押し込む。このリングを収めるために、風防は大きく立ち上がったボックス型を採用した。こうして理詰めで出来上がった時計のデザインが、理屈抜きでカッコいい、というのも重要なポイントだ。 走り続けた60年を凝縮 柴田 充(時計ライター) 20年以上前、カレラ・パナメリカーナを取材したことがある。数日間の同行だったが、コースは険しく、当時の路面を極限のスピードで競ったら事故も続出するだろうと実感した。それだけに「この伝説のレースに敬意を表す」と、訪れていたスイスのF1ドライバー、クレイ・レガツォーニ氏も語っていた。 その時に見せてくれたのが、かつてホイヤー(現タグ・ホイヤー)がトップ・ドライバーに贈ったゴールドのカレラだ。今年60周年を迎えた名作にもそのレガシーは宿る。初代デザインをモチーフに、ドーム型風防で前面を被うなどモダナイズも忘れない。何よりも39mm径ケースが気に入った。引き締まったサイズにレースの魅力を凝縮するのだ。映画顔負けのPV 松尾健太郎(「THE RAKE JAPAN」編集長) 「アレ見た?」が合言葉となっているプロモーション・ビデオがある。タグ・ホイヤーがカレラ クロノグラフのために作った『THE CHASE FOR CARRERA』だ。今までの腕時計のPVといえば、専門家以外には理解不能なものが多かったが、これは違う。ハリウッドのスタッフが手掛けたアクション・エンタメになっているのだ。 主演は『ラ・ラ・ランド』でG・グローブ賞に輝いたライアン・ゴズリング。カレラを腕にした主人公が撮影スタジオから脱走するという内容で、カーチェイスあり、爆破シーンありと映画顔負けの内容だ。YouTubeの再生回数が1ヶ月で1800万回というのも頷ける。「時計はよくわからん」という方でも楽しめること請け合い。私は3回見ました! VIDEO タグ・ホイヤー/ カレラ クロノグラフ「カレラ」誕生60周年を記念する最新クロノグラフの特徴は、1960年代の特徴的な要素を再解釈してデザインをアップデート。新型ケースは直径39mm、その縁まで「グラスボックス」と呼ばれるドーム型サファイアガラスが覆う。カーブを描く斬新なタキメータースケールやインデックスも印象的だ。ムーブメントは自動巻き機構を改良した進化版のTH20-00を搭載する。パワーリザーブ約80時間。ステンレススティール。100m防水。80万8500円 問い合わせ=LVMHウォッチ・ジュエリー ジャパン タグ・ホイヤー Tel.03-5635-7054 写真=岡村昌宏 (ENGINE2023年8月号)