2025.04.26

LIFESTYLE

【GW】これが日本画? 異端の日本画家・中村正義、生誕100年 川崎で出会う驚きの世界

春の展覧会が5月18日(日)まで開催中 中村の代名詞ともいうべき顔を描いた作品が壁一面に

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1977年に亡くなるまで、広く人々から愛された日本画家の中村正義。生誕100年を迎え回顧展などが開催される中、彼の自宅を改築した美術館を訪ねてみた。

短い生涯を駆け抜けた画家

生誕100年を迎えた日本画家の中村正義(1924 - 77)に、再び脚光が当たっている。若くして注目されるも、権威主義的な画壇と距離を置き、「反逆児」と呼ばれることもあった中村。伝統的な日本画とは異なる前衛的な画風で「異端」とも評されたが、作品の評価は高く東京国立近代美術館にも収蔵されている。また週刊誌の連載の挿絵を手掛けるなど、広く人々から愛された。癌のため、1977年に52歳で亡くなっている。

写生旅行中の中村正義。1972年

そんな中村の生まれ故郷である、愛知県豊橋市の美術館で始まった大規模回顧展が、現在平塚市美術館で開催中。初夏には奈良県立美術館への巡回が予定されている。テレビでも特集番組が制作され、さらに関心が高まっているようだ。

唯一無二の美術館

そんな画家がかつて暮らした家を使った「中村正義の美術館」は小ぶりだが、この早逝の画家を深く知ることができるオススメの美術館だ。場所は川崎市の緑の多い住宅地で、展覧会は春と秋の年2回。娘の倫子さんが館長で孫たちが手伝っている、家族運営の施設だ。

訪れて驚いたのは、白い直方体の建物がもともと美術館のようなこと。54年前の住宅とは思えないほど洗練されている。やはり中村正義は、ただ者ではない。

1971年に建てられた自邸は、2階建ての2世帯住宅だった。1988年に美術館として開館。かつては大きなアトリエが、自宅隣りに建っていた。

同館の天井高が5m超えるメインの展示室は、かつてリビング・ダイニング・キッチンだったスペース。取材時は春の展覧会(5月18日まで)が開催中で、中村の代名詞ともいうべき顔を描いた作品が壁一面に掛けられていた。同館には「顔の作品」だけで、300点ものコレクションがあるそうだが、日本画というより現代アートに近い。斬新だ。作品作りでは妥協をしなかったが孤高の画家ではなく、同時代の作家たちと「つながり」ながら、新しい創造を目指したという。

「中村正義の美術館」の天井高が5mを超えるメインの展示室。コロナ禍で休館中に、絵の具の跡が残るかつてのアトリエの床材が移設された。

そうしたDNAを受け継いでいるのだろう。中村正義の美術館では、状況が許すかぎり、館長他スタッフの皆さんが、来館者に解説をしてくれる。そうすることで我々と中村正義が「つながり」、作品を深く理解し作家を身近に感じるのだ。それがこの美術館の大きな魅力になっている。是非、訪れてみてほしい。

■中村正義の美術館 
神奈川県川崎市麻生区細山7-2-8 Tel.044-953-4936
https://nakamuramasayoshi.com/

文=ジョー スズキ(デザイン・プロデューサー) 写真=阿部昌也

(ENGINE2025年6月号)

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