2024.02.04

CARS

ランドナーとロードレーサー、2台の自転車で旅の喜びを知った小学生は、長じて愛するクルマ2台持ちを続け、今また人生をギア・チェンジする旅を模索する! そのエネルギーの源とは?

愛車のアルファ・ロメオ・ジュリエッタ(2014)とマセラティ・ギブリ(2014)のオーナーの是永さん。

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『エンジン』の人気企画、「2台持つとクルマはもっと楽しい」。まだ見ぬ景色、まだ走っていない道を求めてクルマで旅をするのが大好きな、アルファ・ロメオ・ジュリエッタ(2014)とマセラティ・ギブリ(2014)のオーナーの是永博基さん。でも出かけられない時は気心の知れた友達と、いつもクルマ談義に花を咲かせている。

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最初の2台持ちはランドナーとロードレーサー

なんだかずっと、イタリアのひととしゃべっているみたいだった。饒舌にして多弁。自由自在に緩急をつけ、身振り手振りを加えつつ、次々に心をぐっと惹きつける話題がすっと出てくる。さっき昼食をとったばかりだと思ったのに、あっという間に陽が落ちていた。3時間ぶっ続けで、口を開くと出てくるのはクルマとドライビングとロング・トリップのことばかり。北海道、秋田、出雲……日本中どこへでも自分の操る乗り物で出かけ、地場の美味しいものを食し、ともに過ごす家族や友人との時間を何より大切にする。アルファ・ロメオ・ジュリエッタとマセラティ・ギブリ、そしてシトロエンC4ピカソ3台を乗り分けている是永博基さんは、そういう人である。



是永さんの2台持ちはほぼ半世紀前の小学生の頃、ランドナーとロードレーサー、2台の自転車を手に入れた時からはじまっている。すぐ富士の五合目に登り、三浦半島一周もしたというから、いやはや筋金入りの乗り物と旅好きなのだ。プリンス・スカイラインに乗っていた叔父や、当時の格好いい自転車乗りの先輩たちに愛され、大人の世界を知り、オートバイやクルマを溺愛するようになるのは至極当然だった。

免許を取り、スバル・レオーネやレガシィを乗り継ぐも、日本中をクルマで旅すると、高速巡航で落ち着かないことに不満を憶えた。海外旅行先のイタリアで乗ったクルマたちはそんなことはなかった。アウトストラーダを何の不安もなくかっ飛んでいける一方で、出口では一気に急減速し、タイト・コーナーをずばっと抜けていける。欧州のクルマがどうしてあんな風に走れるのか。道が、土地が、クルマをつくっていると気がついた。ならば手に入れよう。イタリアで見た、濃紺のランチア・デルタ。あれしかないと思った。

過去の愛車の黄色いフィアット・チンクエチェント・スポーティングや2代目ランチア・イプシロンのミニチュアも大切に飾られていた。


人生を変えたデルタ

当時は円高で、個人輸入が自動車雑誌でよく紹介されていた。普通にディーラーで買うよりずっと安く手に入ることを知り、絶版になっていた“ガイシャを100万円安く買う方法”という本をわざわざ国会図書館まで行って読破。オランダの輸入会社にコンタクトし、夜な夜な彼の地からのファックスで一喜一憂し、ついにお兄さんのアルファ・ロメオ155と自分のランチア・デルタ・インテグラーレ・エヴォルツィオーネIIを手に入れる。

「高速道路でギアを上げていくと、あるところでぴたっとプロペラシャフトの振動がなくなって。そこからカァアアアーン! ってどこまでも速度が上がっていくんですよ」

人生のギアも、デルタを手に入れたことでチェンジした。155やデルタ同様にランチアYやクーペ・フィアットも輸入し、周囲の友人知人に奨めて乗ってもらった。デルタを大切にしたいからと、フィアット・チンクエチェント・スポーティングも手に入れた。欧州車2台持ちはここからで、デルタ同様、ボディのサイズのわりに、パワフルな心臓の持ち主、というのが是永さんの嗜好にピッタリだった。見た目は小さな2ボックスで軽自動車みたいな姿なのに、大人4人とスーツケースを2つ載せて、しっかり高速巡航ができるのにもほとほと感心した。



デルタやチンクエチェントのおかげで、趣味について話したり、一緒に旅に出かけたりするのは、それまでよりもさらにずっと大人の、格好いい先輩や友人たちになった。そして世界的なコレクターとして知られるギャラリー・アバルト自動車美術館の小坂士朗さんと、彼の蒐集してきた美しいクルマたちとの出会いが、是永さんに積年のイタリア車たちへの思いを絶たせることになる。

「今も昔も1950、60、70年代のクルマが大好きで。アルファ・ロメオならジュリエッタのスパイダーやSZ。ランチアならフラミニア・ザガート。マセラティならミストラル。ちょっと旧いやつならアルファ・ロメオのES-30のS.Z.か前輪駆動の最初のスパイダー。でも自分では乗らない。あそこまで徹底して情熱を注ぎこんだクルマを見てしまうと……」

万一、どんなに素晴らしいクルマを手に入れたとしても、西へ東へと走り回る是永さんの使い方には合わない。だから彼が乗るのは基本、新車か、ほぼそれに近いものばかり。ただし、そういうクルマの中では常に迷っているそうだけれど。

「チンクエチェントの距離が伸びてきたので兄に譲って、次に狙いを付けたのは欧州で主力になりつつあったディーゼル。2005年のジュネーブ・ショウで、ランチアが2代目イプシロンに1.9リッターディーゼルを載せたザガートとのコラボ・モデルを出した。それを待っていた」



しかし、残念ながらこのクルマはお蔵入りに。代わりに目を付けたのはフィアット・グランデプントの3ドア。目も覚めるようなオレンジで、当然1.9リッターのディーゼルだ。またしても並行輸入車である。

当日遊びに来ていたアバルト・グランデプントのエッセエッセに乗る友人の寺澤拓志さんは、是永さんとの旅をふり返ってしみじみこう呟いた。

「石川県の日本自動車博物館に行った時でしたけど、高速での加速は互角。でもこっちがブン回しているところを余裕で先行していくんです」

「最高速では負けちゃうけど加速は負けないよ。お財布にも優しいし」


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