2019.06.21

LIFESTYLE

マンガ アート ホテル トーキョー 世界へ発信する「漫泊」体験

オープンして数カ月、すでに海外からも注目を集める 本の街にできたマンガ アート ホテル トーキョー。「紙の本に浸る」という体験性がその人気の秘密だ。

本棚に囲まれるようにベッド・スペースをレイ アウト。床との隙間は荷物入れのスペースになる。入り口上や床に書かれたルーム・ナンバーのタイポグラフィにもセンスがあふれる。


カプセルホテルは、建築家の故黒川紀章が1970年に大阪万博で発表したプロトタイプがルーツになる。寝るために必要最小限の機能に絞るという斬新な発想は、やがて高度成長からバブルに至る日本で安価な簡易宿泊施設として広く受け入れられる。主にビジネス街に近いターミナル駅の周辺に数多くつくられ、働く男たちの束の間の休息を支えてきた。


平成の終わり頃から、「体験型」という新しいタイプのカプセルホテルが生まれ始める。今年2月にオープンしたマンガ アート ホテル トーキョーもそのひとつ。名の通り、マンガのみを置いた「漫泊」 というユニークなコンセプトで話題を呼んでいる。場所が東京を代表するカルチ ャー・スポットである書店街、神田というのも象徴的だろう。ターゲットはインバウンド政策で増加する外国人観光客だ。「マンガは日本を代表するソフト・コンテンツです。外国人とコミュニケーションを取るのに最適だと思いました」と語るのは、運営する株式会社dot.の代表取締役、御子柴雅慶氏。同社では外国人観光客向けのホステル運営を代行してきたが、今回は立地、物件選びからオープンまでを一貫して手掛けた。本のセレクトも、御子柴氏と共同経営者の吉玉泰和氏がマンガ・ソムリエとして厳選している。「マンガに夢中になれるホテル」というコンセプトに、見事な設計で応えたのが建築家の山之内淡氏。装丁のアート性を際立たせるために、壁や什器を白で統一。マンガを並べた本棚がいくつも並び、その中に隠れるようにベッド・スペースが点在する。宿泊客同士の視線が合わないように配置も工夫し、心置きなくマンガに没頭できるように計らった。それはあたかも日本の子どもなら誰でも一度は経験がある"押し入れにこもってマンガを読む楽しさ"を彷彿とさせる。



650タイトル、5000冊を揃えている。英語版も豊富。書店としても登録されており、気に入った本を購入するゲストも多い。


無機質なユニットが整然と並ぶ従来のカプセルホテルと明らかに異なる心地よさ。その雰囲気に惹かれ、開業から常に満室に近い稼働率を誇る。狙い通りに海外からの予約も多く、訪れた顧客の出身国はすでに40を優に超えているという。


電子書籍にはないリアルな紙を指に感じながらの読書は、デジタルへの静かなアンチテーゼ。「漫泊」体験を通じて、カプセルホテルは日本文化の新しいアンバサダーとなりつつある。


「漫泊」をヴィジュアライズしたディスプレイ。
東京都千代田区神田錦町1-14-13 LANDPOOL KANDA TERRACE 4、5F

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写真=宇田川俊之

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