「日のもとに新しきものなし」とは、世の中にはそう新しいものはない。すでに誰かが考えて作っている、との意味。時計も同じ。たとえばクオーツのステップ運針は、機械式の時代にもあったし、時刻を数字で表すデジタル表示も懐中時計時代に実現していた。A.ランゲ&ゾーネのふたつの新作も、この言葉を実証する機械式時計。
「ツァイトヴェルク・デイト」は見ての通りデジタル表示の機械式時計。さらに新作ではデイト表示も付け加えられた。一方、「リヒャルト・ランゲ・ジャンピングセコンド」はその名前どおり秒針がステップ運針する特殊機構を装備し、時・分・秒の軸が独立したレギュレーター(標準時計)を腕時計で再現したモデルだ。もちろん、着想は古くからあっても、そのメカニズムは現代のA.ランゲ&ゾーネでなくては完成しえない精緻にして信頼性の高いもの。「日のもとに新しきものなし」とは、新たな挑戦を諦める言い訳ではなく、そこに果敢に挑む精神を鼓舞する言葉、と解釈したい。
2009年に発表されたデジタル表示の「ツァイトヴェルク」をベースに、文字盤外周部にデイト表示を導入した新作。数字の下のディスクが移動して日付を赤く表示する。さらに、このモデルはパワーリザーブも72時間となり実用度も向上。手巻き。ホワイトゴールド、ケース直径44.2mm、3気圧防水。税別予価987万円。7月発売予定。
レギュレーターとはかつて時計師が用いた大型の標準時計のこと。時・分・秒の軸が独立しているのがポイントだが、ランゲが作ると実に個性的だ。最大径の上部インダイアルが秒表示で、この針が1秒ごとにステップ運針することが名称の由来。手巻き。ホワイトゴールド、ケース直径39.9mm、3気圧防水。税別780万円。
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文=名畑政治 写真=近藤正一/沖田一真/A.ランゲ&ゾーネ スタイリング=石川英治(T.R.S)
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