ベゼルからダイアル、ストラップに到るまで“黒”で統一されたその時計は、セイコーのスポーツウォッチの中でもひときわ異彩を放つ。セイコー プロスペックスのハイエンドコレクションとして誕生したルクスライン。第1回で紹介した、いかにもセイコーらしいモデルと対をなす、もうひとつのラインアップがこのブラックエディションだ。ルクスラインのブランドアドバイザーを務める奥山清行さんが話す。

「黒というのは非常にスピリチュアルな意味合いを持つ色です。光を閉ざした“無の境地”を表す色でもあれば、すべての絵の具を混ぜ合わせた時にできる包括的な色でもある。僕はこの黒という色を使って、これまでのスポーツウォッチにはない質感と存在感のある、新しい時計を作りたいと考えたんです」
そんな奥山さんの提案は当初、セイコーの開発陣に不安と驚きをもって迎えられた。これまでスポーツウォッチの世界で優先されてきたのは、デザイン性ではなく機能性だったからだ。だがようやく出来上がったモデルは、伝統的なクロスラインレイアウトを継承しているため、視認性も損なうことはなかった。そして、今年3月に行われた時計の国際見本市、バーゼルワールドにも出品され、大きな反響を呼ぶ。
「手に取っていただくと分かるんですが、ブラックエディションでは、それぞれに質感の違う、様々な素材の黒を組み合わせています。たとえば“空”のモデルでは、光沢感のあるセラミックのベゼルに、マット感のあるダイアルを合わせ、ベルトにはクロコダイルの革を採用している。黒というのは素材感が出やすい分、一番ごまかしが効かない色でもあります。試行錯誤は繰り返しましたが、おかげでスーツ姿のビジネスマンにも似合う、高級感のある時計ができあがったと自負しています」
もちろんブラックエディションが優れているのはデザイン性だけではない。陸・海・空と、3つのモデルに応じたアウトドアシーンで使用しても、セイコーのスポーツウォッチならではの妥協なきクオリティが実感できるはずだ。
「ムーブメントに選んだのは、セイコーが独自に開発したスプリングドライブです。外部の温度変化や衝撃に強いだけでなく、秒針の滑らかなスイープ運針を特徴としています。こういったスムーズな動きというのは、どこか繊細な日本の文化に通じるところがある。セイコーが世界に誇る技術のひとつでしょうね」
長らく海外を拠点に活躍してきた奥山さんが、日本でデザイン事務所を立ち上げたのが12年前。以来、“モダン、シンプル、タイムレス”という、自身のデザイン哲学を守りながら、多彩なジャンルの仕事を続けてきた。
「モノづくりとは、少なからず地球環境に負荷を与えてしまう行為です。だからこそ我々が作るのは、世の中に出す意味のある、新しくてモダンなものでなければならない。それでいてデザインは、力強くシンプルであるべき。そういった飽きのこない商品こそが、時代を超えたタイムレスなものとして人々から愛されていくんです。ブラックエディションにこめたのは、僕がデザイナーを続けてきた末にたどり着いた、そんなモノづくりへの思いです」

「海」モデルは、逆回転防止仕様のセラミック表示板のベゼルにチタン美錠をセットした強化シリコンストラップを組み合わせ、様々な黒の質感を楽しめるダイバーズモデル。自動巻きスプリングドライブ。チタン(スーパー ブラックダイヤシールド)。ケース直径44.8mm。300m飽和潜水用防水。税別63万円。

「空」モデルは、耐傷性が高く、マットでストイックな世界観の中にケースのザラツ鏡面と24時間表示のセラミック表示板の艶が映えるGMTモデル。自動巻きスプリングドライブ。チタン(スーパー ブラックダイヤシールド)。ケース直径44.8mm。10気圧防水。税別58万円。

「陸」モデルは、簡易方位計付き回転ベゼルを搭載するGMTモデル。自動巻きスプリングドライブ。チタン(スーパー ブラックダイヤシールド)。ケース直径44.8mm。20気圧防水。税別53万円。
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写真=近藤正一 文=永野正雄(ENGINE編集部)
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