エジンバラ空港からクルマで北に30分ほど行った所にある、全長約2㎞のノックヒル・レーシング・サーキット。このスコットランドでは唯一のFIA公認レース・トラックが今回の718ケイマンGT4の試乗の舞台だった。
一方、718スパイダーの試乗はここからさらに北に位置するホテルに向かう丘陵地帯の一般道を使って行なわれた。
初日は夕方からのプレス・ブリーフィング。翌朝はケイマンGT4でサーキットを走るところから試乗プログラムはスタートした。
インストラクターが乗る911GT3RSの先導車に付いてまず8周、いったんピットで休んだ後、また8周走る。英国らしいハッキリしない天候の中、私はウェットの路面で走り出すことになった。ノックヒルはその名の通り丘の上にありアップダウンが激しい。
ホーム・ストレートから1コーナーを右に曲がると、左の高速コーナーを駆け抜けながら一気に下っていく。そして下り切ったところでフルブレーキングして右に曲がるのだが、そこまでのパートをGT4で走るのがすこぶる気持ち良かった。
その理由は明確。素晴らしく回頭性がいいからだ。ステアリングをAペックスに向けて切り始めると、スーッとノーズが内に入っていく。オーバーにもアンダーにもならないニュートラルなステアリング特性。
姿勢変化も小さいから、あまり頑張らなくても気持ちよくコーナリングすることができる。前を行くGT3RSのドライビング・スタイルと比較すると、その違いが良く分かる。強いブレーキングで前荷重をつくってドーンと曲がる911に対して、ケイマンはスーッと簡単にコーナーに入っていくことができる。
しかし、コーナーからの脱出ではトラクションのかかり方に大きな差があるようで、前がドーンとスロットルを開けると、一気に差を付けられてしまう。けれど再びコーナーが来ると、こちらがスーッと近づいていく。

雨が上がりコースがドライになった後、おまけに5周だけ走らせてもらえた。速度域が一段上がると、ダウンフォースが増した恩恵が感じられる。コーナーでのグリップ力が先代より格段に高まっている。
走っているうちに分かってきた。なるほど新型GT4はいよいよ本格的なミドシップのGTモデルとしての走りを突き詰めてきたのだ。ここまで仕上がっているのなら、もはやGT3と比べて速さがどうこうという話ではない。
あくまでどちらの走りのスタイルが好みか、の問題である。GT4はGT3の下位モデルではなく、一人立ちした718ケイマンGT4というスポーツカーになったのだ。

ランチを挟んで、午後は718スパイダーで一般道へ出た。走り出してすぐにわかるのは、シャシーの剛性感がとてつもなく上がっていることだ。単に足が硬いというのではなく、ステアリングやペダルを操作した時のクルマの動きが素晴らしくシャープでリニアなのだ。
エンジンは独特の味がある。やっぱりフラット6は気持ちいいなと思う反面、いや待てよ、このエンジンはずいぶんこれまでと感じが違うぞ、とも思えてくる。サウンドはこれまでより乾いた、992のフラット6ターボに近い音になっている。
エンジンが温まってきて巡航していると、すぐに気筒休止モードに入る。表示は何も出ないが、ボーッという音に変わるのと振動が出るのですぐにわかる。不快に感じたら、アイドル・ストップのスイッチをオフにすればいい。気筒休止もしなくなる。
このエンジンは1500回転も回せばしっかりトルクは出ているから、特に回さなくても一般道なら走れてしまう。いや、むしろ5000回転以上を使うことの方が稀だろう。
しかし、5000回転あたりを境にまるで性格が変わるような特性になっており、そこまでは燃費エンジン、そこから先は突如レーシング・エンジンに変わったような怒濤の吹け上がりを見せる。サウンドは爆音モードにしてもあまりババババと言わない。演出なしの素の音という感じだ。

それにしても、スコットランドの丘陵地帯のうねうねと続く田舎道を延々と走ってよくわかったのは、もはや718スパイダーは初代ボクスター・スパイダーのような清々しい青年ではなく、酸いも甘いもひと通り噛み分けた壮年になったということだ。
流してゆったり走ろうと思えば、それも気持ちよくこなせるし、サーキットで思い切り攻めようと思えば、十分以上に期待に応えてくれるだろう。走りの幅が拡がったのだ。
そして、今回の新型はどちらも完成度が高いが、お得感という意味で言えば、スパイダーが勝っていると思った。エンジンもシャシーもGT4と同じものが与えられた上に屋根も開き、それでいて価格はGT4より抑えられているのだ。
その理由をエンジニアに尋ねたら、幌が簡素になっているから、という答えが返ってきた。これは買い、でしょう。
ちなみに、GT4、スパイダーのいずれのモデルにも、来年には7段PDK仕様が加わる予定だという。
718ケイマンGT4(718スパイダー)
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