ルパン三世のアニメ化50周年の今年、3月15日にアニメーターの大塚康生さんが亡くなった。ルパンをチンクエチェントに乗せたのは大塚さんだった。
『ルパン三世』の1stシリーズで作画監督をつとめた日本を代表するアニメーターの大塚康生さんを偲んで
ルパン三世のアニメ化50周年を記念したTVアニメ「ルパン三世PART6」が10月から放送されているが、『ルパン三世』の1stシリーズや『ルパン三世 カリオストロの城』で作画監督をつとめた日本を代表するアニメーターの大塚康生さんが今年3月15日、89歳で亡くなった。無類のクルマ好きとして知られる大塚さんは、自身の代表作のひとつである『ルパン三世』になぜフィアット500を登場させたのか? かつて大塚さんを取材したモーター・ジャーナリストの藤原よしお氏が、ご本人の貴重な言葉を振り返る。
海沿いのワインディングロードを白いトライアンフTR4が疾走する。ボンネットには赤いレーシングストライプが入り、グリルが外されている代わりにチェッカー柄のカバーがついたフォグランプを取り付けるといった、カフェレーサー的なモディファイが施されたTR4を運転するのは峰不二子。すると助手席に乗ったルパン三世がこう切り出す。
「さすがトライアンフだ。コーナリングがいいや」
これは1971年から放送されたアニメ『ルパン三世』の第9話『殺し屋はブルースを歌う』の冒頭のシーンだ。
ルパンの一言で画面を走るトライアンフが、リヤ・リジッドアクスルのTR4ではなくトレーリングアームの独立懸架になったTR4Aだと“わかる人”にはわかる。そうしたマニアがニヤリとする瞬間が、随所随所に散りばめられているのが、いわゆる1stシリーズと言われる『ルパン三世』の魅力の1つだと思う。
このTR4以外にも作品の中にはルパンの愛車であるフェラーリV12を搭載したメルセデス・ベンツSSK、銭形警部の410系日産ブルーバード、BMW1800ノイエクラッセ、峰不二子のアルピーヌA110、パイカルのFMR KR200など、特徴を上手く捉え、登場人物に見事にマッチした“実車”が、数多く登場する。
中でもSSKとともに多くの人の印象に残っているのが、16話から愛車として登場し、映画『ルパン三世カリオストロの城』で主役ばりの活躍をしたフィアット500(チンクェチェント)だろう。
こうした当時のアニメーションでは前例のない、リアルな自動車や、銃器、時計などの描写にこだわり、ディテールを追求した仕掛け人が、作画監督をつとめた大塚康生さんだ。
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