ゆで卵みたいな500X
荒井 今回の試乗車は、フィアット500X(以下500X)とDS3クロスバック(以下DS3)です。
吉田 DS3は6月に発売されたばかりの最新モデル。私、最新ってやっぱりいいなあって思っちゃった。
飯田 500Xがちょっとかわいそう。なんでこのクルマをぶつけてきたんだろうって。でも、アルファ・ロメオにはスモールSUVがないんですものね。
吉田 いま500Xを駐車場に停めてきたんだけど、もう少し壁に寄せようとしたら、安全装置が働いて前に進まないの。思わず笑っちゃった!(笑)
藤島 健気で可愛いじゃないですか。
飯田 そうなの。500Xは本当に見た目が可愛い。カラを剥いたゆで卵みたいにツルンとしてて。
吉田 グッズとかが欲しくなる可愛さだよね。
藤島 だから所有すれば愛着がわくクルマだと思います。
吉田 そこはくすぐるよね。
飯田 DS3は見た目がスノッブで、運転すればめちゃくちゃ洗練された乗り味に驚いた。対比はわかりやすかったけど、ハンドリングとか、乗り心地とか、音とかが対照的すぎてかわいそう。そこは比較しちゃいけないなって思いました。
藤島 私、チンクエチェントを2台乗り継ぎましたけど、500Xって別物ですよね。
飯田 そうなのよ。チンクエチェントは、意外とよく走るの。500Xだったら同じプラットフォームのジープ・レネゲードの方がいいかなって思っちゃう。
藤島 もともとレネゲードにも使うからと、500Xのプラットフォームは4WDを前提にした設計。それなのに、今回のマイナーチェンジで4WDモデルがなくなった。理由は街乗り主体で低燃費で走るFFが売れるから。PSAグループみたいに最初からFF大前提というプラットフォームではないところに、500Xのかわいそうなところがあります。レネゲードはジープということもあってさらに強化されてますからね。
吉田 だから、次の世代になればもっと良くなるんじゃないの?
藤島 でも、私は500Xをドライバーズ・カーと呼びたい。
飯田 ホントに?
藤島 なぜかと言うと、5月にマイナーチェンジしたんですけど、後ろの乗り心地が良くなってない。すごく広いか? というと、そうでもない。運転席が特等席なんです。
吉田 私、実は500Xを買おうと思ったことがある。でも後席の乗り心地が悪くて、両親を乗せるのがちょっと厳しいと思って諦めた。それ以外は大好き。見た目は可愛いし、大きすぎず、5人乗れる。
飯田 ともちゃんの主張は、ドライバーズ・カーじゃなくて、ドライバーズ・シート・カーでしょ?
藤島 それともうひとつ。1.3リッター直4ターボを思い切って回す楽しさがあるということ。音の聞かせ方、盛り上げ感、そういうところでほかのクルマとは違う楽しさもある。
飯田 なるほど~。
吉田 見た目は可愛いんだけど、乗るとウルさくて商用車っぽいなあと思った。可愛さと働くクルマ感のミスマッチが面白い。そういうところも含めてオーナーは愛着を持つんだろうね。
飯田 人と違ったクルマに乗りたいと、SUVに目を向け、そこに自分らしさを取り入れる。500Xはいい世界観を提供しているよね。
荒井 僕も乗ったんだけどね、もう思い切って、ガンガン踏んじゃった方がいい気がした。このクルマをここまで走らせられるのは、オレしかいないぜ、ベイビー! みたいな。
飯田&藤島&吉田 アハハ。さすがロックン・ローラー。
藤島 あのエンジン、いいですよね? よく回るし。
飯田 2500rpm以上になると、突然元気になる。
吉田 そうそう。
飯田 この前、ディーラーに仕事で行ったんだけど、500X売れてるって言ってた。
吉田 それは良かった〜(笑)。
■FIAT 500X
乗ってもビックリDS3
荒井 DS3は乗った瞬間から気持ち良くて、ずーっとどこまででも気持ちいい。
藤島 DS3は乗り味の良さビックリしました。1.2リッター直3ターボに力不足はまったくない。
吉田 見てビックリ、走ってビックリ。ビックリの連続。デザインもここまでやるのかって。
藤島 走る方は極めて自然ですけど、見る方はクセがありますよね。
吉田 クセだらけ。クセしかない。
藤島 ダッシュ・パネルのレザーにある細かいシボ、あれ一歩間違えれば象の肌ですよ。
飯田 それを実にエレガントに使っている。色の組み合わせなんか、そのセンスに脱帽だよね。
藤島 日本人にはない感性です。
飯田 ドイツ人、イタリア人とも違う。エキセントリックなんだけど、品がある。
藤島 今の時代の空気に対してどう映るか? というのを読み切っている感じがします。
■DS 3 CROSSBACK
ドア・ノブの動きも美しい
吉田 クルマから離れるとロックされ、近づくと開錠する。そのときにドア・ノブが出てくるんだけど、ジャガーやランドローバーみたいに水平じゃなくて、斜めに出て優雅なの。
藤島 女性のポーズって斜めが美しいと言うじゃないですか。
吉田 正対すると太って見えるけど、ちょっと斜めに立つと細く見えるテクね。
飯田 乗るときの美しい所作まで意識しているのかも?
藤島 フランス人だから本当にそうしたのかもしれませんよ。そういう美的センスがあると思う。
吉田 ドア・ノブが出たときに水平じゃなくて、あっ! と驚かせるのが楽しいんだね。サプライズ好きなんじゃないの? 人生にもサプライズがあることが幸せだと思っているんだよ、きっと。
藤島 そうかあ。付き合ってみようかな(笑)。フランス人男性。
吉田 ドア・ノブは握ったときの触感もソフトでフランス車らしいなあと思った。フレグランスも3種類あって、その日の気分で選べる。そこもさすがフランス車。メルセデス・ベンツは1種類で大きい瓶をドン!と付ける。そこが野暮ったいと言えば野暮ったい。
藤島 フランス人ってそういうタッチとかニュアンスとか大事にしますよね。イタリア人はとにかく見た目。ドイツ人は機械として優れているかどうか。
飯田 あと、500Xというか、チンクエチェントはレトロでしょ? デザインが。でも、DSはレトロに行かないのね。オマージュはあっても。基本はアバンギャルド。
藤島 そうですね。フランスは基本的にデザインは前衛ですね。常に挑戦している感じがします。
飯田 DS3の乗り味が驚くほど良かったというのは、3人、アライさんも入れると4人の一致した意見だけど、今日乗ったやつは400万円オーバーなんですよ。だから、299万円のスタンダード・モデルに乗ってからじゃないと、ホメちぎるのはどうかなあと思いました。
藤島 新しいプラットフォームCPMの良さは感じました。このサイズのプラットフォームなのかな? と思うぐらいゆったりとした乗り味で本当に素晴らしかった。基本部分がしっかりしているので、スタンダード・モデルもかなりいいんじゃないか? と想像します。
吉田 スタンダード・モデルはシートがファブリックになって、ラジエター・グリルのクロームがなくなって、タイヤも小さくなる。キラキラ感がちょっと減るのかも。
飯田 タイヤが細くなったらもっと乗り心地が良くなるかもね。
藤島 いま、ファブリックでも高級なものがありますからね。レザーの方が体に馴染むというわけでもない。
飯田 ドアを開けて室内をパッと見渡したとき、シートの占める面積って大きいでしょう。だからシートって人間工学的に重要だけど、デザインも大事だと思う。
吉田 シートのデザイン力もフランス車は高いよね。DS3のシート・デザインは素晴らしかった。
飯田 うん。綺麗だった。
藤島 シートにこういうステッチを入れると硬く感じるはずなんですけどね。掛け心地はソフトだった。そのためもあって、ちょっとフワッとした乗り心地。そんなフワッとしたクルマの動きをペダル操作で収める。その対話がフランス車らしいなあって思いました。
吉田 DS3ばっかり褒めてない?
藤島 500Xの素晴らしいところ、まだあります! ドライビング・ポジションはDS3より自然。ステアリング・ホイールに手を添えやすくて、切り遅れがない。そこはイタリア人、こだわってるんだなと。
吉田 キュートな500XとエレガントなDS3、ラテンで括るけど、イタリア車とフランス車って全然違うのよね。
語る人=飯田裕子+藤島知子+吉田由美 司会とまとめ=荒井寿彦(ENGINE編集部) 写真=望月浩彦
フィアット500Xクロス
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