クエンティン・タランティーノ監督の新作の舞台は、1969年のハリウッド。 2時間41分の物語を織りなすのは、2人の架空の男性と、実在した1人の女性だ。
レオナルド・ディカプリオが演じるのは落ち目のスター俳優、リック・ダルトン。かつてはテレビの西部劇で主役を務めていたが、映画俳優への転身がうまくいか ず、今や不本意な悪役ばかりを演じている。そんなリックのスタントマンを務めるのが、ブラッド・ピット扮するクリフ・ブースだ。ベトナム戦争の英雄でもある彼は、情緒不安定なリックを精神的に支える親友でもある。
そしてもう一人の主人公が、リックの隣家に引っ越してきた女優のシャロン・テート(演じるのはマーゴット・ロビー)。『ローズマリーの赤ちゃん』の大ヒットでハリウッド映画界の寵児となった、ロ マン・ポランスキー監督の夫人である。
本作ではこの3人を巡るエピソードが、カラフルに綴られていく。落ち目のリックは大物プロデューサー(アル・パチーノ)から気の進まないマカロニ・ウェスタンへの出演を勧められ、腕っぷしの強いクリフは、撮影所で出くわしたブルース・リーと決闘をする羽目になる。またシャロン・テートは、自身が出演したB級スパイ 映画の上映館に潜り込み、観客の反応を見ながら秘かにほくそ笑む、といった具合だ。
タランティーノ自身がロサンゼルスの出身で、この映画は本人の懐かしい記憶を映像に焼き付けた作品でもある。リックとクリフが乗り回すのは、1966年式 のキャデラック・ドゥビルで、カーラジオから流れるのは『夢のカリフォルニア』や『ミセス・ロビンソン』といった当時のヒット・チューン。そして巷には、ツイッギーのごときミニスカート姿の女性たちがあふれかえる......。
だがこの年の8月9日、世界を震撼させるある事件が起きる。カルト集団のリーダー、チャールズ・マンソンの信奉者たちが、妊娠8カ月のシャロン・テートとその友人たちを、彼女の自宅で惨殺したのである。
タランティーノは、この凄惨な事件を予想だにしない方法で描きだす。その驚きの結末を目にする時、本作がタランティーノから悲劇の女優、シャロン・テートに当てた、熱烈なラブレターであることに気づくのである。
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』は8月30日より全国公開
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
文=永野正雄(ENGINE編集部)
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