究極を超えるウルトラマシン「ウアイラR Evo ロードスター」が、富士スピードウェイに姿を現した。自動車ライターの西川淳は、取材と同乗試乗でこのスーパーマシンに一体なにを感じたのか?
そのすべてが頂点
その名も「アルテ・イン・ピスタ」。“サーキット上の芸術”と名付けられたこのイベントは、スーパーカー界において別格の存在と言うべきパガーニの、さらに究極の存在であるトラック専用マシン=Rモデルのオーナーのためだけに催された。

創始者オラチオ・パガーニの立身出世物語は有名だ。母国アルゼンチンから80年代後半に単身イタリアへと渡る。ランボルギーニの工場のモップ掛けから始まって2年やそこらでチーフデザイナーに。92年に独立後は、得意のCFRP成型技術に磨きをかけ、99年、ついに初のオリジナルモデル・ゾンダを発表。メルセデスAMG製V12をリアミドに積んだ究極のスーパーカーはその後、ウアイラ、ウトピアへと進化した。
ごく少量生産とはいえ市販車である以上、様々な規制から逃れることはできない。ゾンダからウアイラ、ウトピアへの進化は同時に規制対応との戦いでもあった。
オラチオは強いフラストレーションを抱く。ウアイラ開発時にはアメリカの、ウトピア開発時には全世界の規制対応に心血を注ぐ一方で、性能向上とは相容れない様々な制約から逃れた自由なスポーツカー造りを望んだ。そうして生まれたのがゾンダRであり、ウアイラRである。「レーシングカーを作ったわけじゃない。ありとあらゆる技術を進化させるためのサーキット専用マシンを企画した」と彼は言う。

世界30台限定のウアイラRはその名前とミラー以外、ロードカーのウアイラとは全くの別物だ。CFRPモノコックボディからエンジン、サスペンションまで専用設計で、しかも全て安全性や(トラック専用モデルとしての)使い勝手を最優先した。
例えばHWA(AMG創始者が始めたモータースポーツの専門会社)製V12NAエンジンにはサーキットで1万km走行可能な耐久性を盛り込む。1万km走った後(富士スピードウェイなら2222周)、エンジンのオーバーホールとなる。さらに初心者でもすぐに楽しめるようにライドハイトを高めに設定するなど随所に工夫が見受けられる。それらは全てロードカーの進化にも役に立つ。
とはいえその性能は純レーシングカーに勝るとも劣らない。最新モデルのウアイラR EvoロードスターはWECハイパーカーと同等の性能を発揮する。そんなRモデルを手に入れた数少ないオーナーがマシンのポテンシャルを各々の実力に応じて楽しめるよう、万全のサポート体制をもって企画されたイベントが「アルテ・イン・ピスタ」だった。

彼らがこのイベントを始めたのは22年から。プログラムそのものはフェラーリが主催するXXプログラムをベンチマークに企画されたが、ユニークな点はオーナーのみならずその家族も楽しめるようなアクティヴィティも併催されていること。家族ぐるみで新たなコミュニティを形成しようという試みであるらしい。ちなみにウアイラRの車両価格には5回分の参加費用が含まれていた。