1999年に発表された「トゥールビヨン・スヴラン」は、ルモントワール機構付きトゥールビヨンを搭載する当時世界で唯一の腕時計。第二世代となるこの現行モデルでも、高い計時精度を誇る同機構を採用。ケース裏面からは、ローズゴールド製のムーブメントが特別な存在感を放つ。手巻き。プラチナケースにホワイトゴールド文字盤、ケース直径40㎜。税別1862万4000円。
最新作は、一般的な水平に対して垂直にトゥールビヨンのケージを配置し、発明者ブレゲの原型を連想させる。歴史に根差すルモントワールやデッドビートセコンドなどの精密機構をトゥールビヨンに組み合わせて精度向上を目指す超絶技もジュルヌならでは。ストラップはカーフかアリゲータ(写真)より選べる。手巻き、パワーリザーブ約80時間。プラチナ、ケース直径42㎜。税別2760万円。
20世紀の終わりに続々と登場して、21世紀にはすでに特別扱いさえされなくなった複雑機構、それは他ならぬトゥールビヨンである。かつて錬金術師のみが知る秘術のように思われたトゥールビヨンの威光は薄れ、今やダイアルを飾るギミックにさえなっているのはどうしたことか? だから今、本来の役割を正しい形で後世に伝えていかなくてはならないと思うのは、現代最高の時計師フランソワ-ポール・ジュルヌとて同じではなかろうか。とくにその思いを強く感じさせるのが彼の「トゥールビヨン・スヴラン ヴァーティカル」だ。トゥールビヨンを2世紀以上も前に発明したアブラアンルイ・ブレゲが特許申請書に添えた機構図を彷彿させる構造を採り入れ、見る者をその原点へと連れ戻すのだから説得力は絶大。22世紀の時計師にも機構の真意を伝える格好のモデルになりうるはずだ。(菅原 茂)
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キュレーション=ジョースズキ 写真=近藤正一/沖田一真 スタイリング=安部武弘/仲唐英俊
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