2019.12.19

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「22世紀に遺したい時計」髙木教雄が推す1本/F.P.ジュルヌ クロノメーター・スヴラン

ENGINE WEB WATCH CLUB SPECIAL「22世紀に遺したい時計」♯13

F.P.JOURNE/F.P.ジュルヌ クロノメーター・スヴラン

機構はシンプル。しかしマリンクロノメーターを規範にテンプが独立して見えるミステリーバランスを復活させ、超高精度をかなえている。端正なダイアルは、パワーリザーブ計とスモールセコンドの配置が絶妙。手巻き。プラチナ、ケース直径40㎜、3気圧防水。税別415万2000円。


100年先を見据えた時計製作

ご存知のように、F.P.ジュルヌは時計師フランソワ・ポール・ジュルヌ氏が率いる小メゾンである。今もジュルヌ氏自身がすべて設計をし、試作を組み立てている。では彼亡き後、メゾンはどうなってしまうのか? そんな疑問を、本人にぶつけたことがある。返ってきた答えは「私がF.P.ジュルヌを設立したのは、自分のクリエーションを実現するため。だから、私の代わりはいない」。


仮に「クロノメーター・スヴラン」を挙げたが、彼がこれまで創り上げてきた時計は、どれも素晴らしく独創的で、他に代わるものがない22世紀に遺すべき名作である。そしてそれらは、老舗あるいはグループ傘下のビッグメゾンの名作とは違い、ジュルヌ氏ただ一人の才能に委ねられている。ゆえに本人が亡くなった先、製作され続ける保証はない。所有者が意図せねば、後世には遺せない。


だが彼は言う。「私は100年後、200年後にも残る時計製作を続けてきた」と。そして「たとえメゾンが無くなったとしても、私が18~19世紀に作られた懐中時計を修復できたように、100年後の時計師が私の生み出した機構を理解し、直してくれるはず」。22世紀、さらにその先にも残るべくして残る時計製作に、ジュルヌ氏は向き合う。



たかぎ・のりお
ライター。1962年生まれ。時計を中心に建築やインテリア、テーブルウェアといったライフスタイルプロダクトを取材対象とし、様々な媒体で執筆。フランソワ・ポール・ジュルヌ氏著「偏屈のすすめ」(幻冬舎刊)の監修・解説も担当した。

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