機構はシンプル。しかしマリンクロノメーターを規範にテンプが独立して見えるミステリーバランスを復活させ、超高精度をかなえている。端正なダイアルは、パワーリザーブ計とスモールセコンドの配置が絶妙。手巻き。プラチナ、ケース直径40㎜、3気圧防水。税別415万2000円。
ご存知のように、F.P.ジュルヌは時計師フランソワ・ポール・ジュルヌ氏が率いる小メゾンである。今もジュルヌ氏自身がすべて設計をし、試作を組み立てている。では彼亡き後、メゾンはどうなってしまうのか? そんな疑問を、本人にぶつけたことがある。返ってきた答えは「私がF.P.ジュルヌを設立したのは、自分のクリエーションを実現するため。だから、私の代わりはいない」。
仮に「クロノメーター・スヴラン」を挙げたが、彼がこれまで創り上げてきた時計は、どれも素晴らしく独創的で、他に代わるものがない22世紀に遺すべき名作である。そしてそれらは、老舗あるいはグループ傘下のビッグメゾンの名作とは違い、ジュルヌ氏ただ一人の才能に委ねられている。ゆえに本人が亡くなった先、製作され続ける保証はない。所有者が意図せねば、後世には遺せない。
だが彼は言う。「私は100年後、200年後にも残る時計製作を続けてきた」と。そして「たとえメゾンが無くなったとしても、私が18~19世紀に作られた懐中時計を修復できたように、100年後の時計師が私の生み出した機構を理解し、直してくれるはず」。22世紀、さらにその先にも残るべくして残る時計製作に、ジュルヌ氏は向き合う。
たかぎ・のりお
ライター。1962年生まれ。時計を中心に建築やインテリア、テーブルウェアといったライフスタイルプロダクトを取材対象とし、様々な媒体で執筆。フランソワ・ポール・ジュルヌ氏著「偏屈のすすめ」(幻冬舎刊)の監修・解説も担当した。
無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。
無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。
advertisement
PR | 2024.11.21
LIFESTYLE
冬のオープンエアのお供にするなら、小ぶりショルダー! エティアムか…
2024.11.21
CARS
日本市場のためだけに4台が特別に製作されたマセラティMC20チェロ…
PR | 2024.11.06
WATCHES
移ろいゆく時の美しさがここにある! ザ・シチズン の新作は、土佐和…
2024.10.25
LIFESTYLE
LANCIA DELTA HF INTEGRALE × ONITS…
2024.11.19
WATCHES
エンジン時計委員、菅原茂のイチオシ 世界限定1200本! グランド…
2024.11.01
CARS
これは間違いなく史上最速のウルスだ! プラグイン・ハイブリッドのウ…
advertisement
2024.11.16
こんなの、もう出てこない トヨタ・ランドクルーザー70とマツダ2 自動車評論家の渡辺敏史が推すのは日本市場ならではの、ディーゼル搭載実用車だ!
2024.11.15
自動車評論家の国沢光宏が買ったアガリのクルマ! 内燃エンジンのスポーツカーと泥んこOKの軽自動車、これは最高の組み合わせです!
2024.11.15
GR86の2倍以上の高出力 BMW M2が一部改良 3.0リッター直6ツインターボの出力をさらにアップ
2024.11.08
【後篇】2024年総まとめ! 自動車評論家44人が選んだ「いま身銭買いしたいクルマのランキング!」 クルマ好きの人たちの深層心理がわかった!!
2024.11.12
BMW4シリーズ・グランクーペが初の変更 新しいヘッドライトと装備の充実で商品力を高める