ジャーナリスト39人とENGINE編集部員6名、計45人が、雑誌が創刊した2000年からの20年間で「一度は手に入れたい」クルマ20台を選び順位をつけた。選んだ20台についてと、「20年間のクルマをどう見てきて、この1台はどういう基準で選んだのか?」というテーマに答えてもらった。
ENGINEが創刊した2000年といえば、私がシトロエン・クサラVTSを購入した年だ。以来、私はフランス車しか買えない体質になってしまい、今は自宅にルノー・ルーテシアが2台ある。今回の20台は、すべて乗り味に「フランス車が入っている」と個人的には思っている。私とにってのフランス車=サスペンションが生き物みたいに良く動くクルマのことだ。
エンジンとハンドリングのキレにおいて、いまだ究極のFFスポーツ。4WS付きの次期型や可変サスと空力でドーピングされたシビック・タイプRでは、このアナログ技術集大成の「今日も揉んでやった」的な自己満足は得られない。
お尻がネバりすぎないシャシーと3.4Lエンジンを組み合わせた初代ケイマンSは史上もっともコントローラブルなミドシップの1台。その後、改良や世代交代ごとに安定感が増していくが、同時に振り回すにはウデも必要に……。
エンジンにも操縦性にも、古典スポーツカー的なキレ味と歯ごたえを残した最後の911。ちょっとした小物置き場もあって、ドアトリムが汚れにくい実用的なインテリアも、991以降は消えてしまった伝統の魅力を保っている。
4気筒NA、FF、3ペダルという「私的ホットハッチ3箇条」に合致する最終最強ホットハッチ。自分でも買って10年、いまだ手離せず。
ただの食パンスタイル型のバンがなぜにこんなに運転が楽しいか。現行カングーも素晴らしいが、小型軽量の初代は歴史に残る金字塔。
世界一折り目正しい設計のFRスポーツカー。この次でミドシップになってしまったのも「もうFRでやることないんだろう」と妙に納得。
とある雑誌の企画でポルシェ911(当時は997)と本気で乗り較べて、かけ値なしに「甲乙つけがたし」とうなった記憶が今もよみがえる。
ざっと25年ほど続いた「WRX STI」の中で、容姿も走りも個人的に一番好きなのがこれ。グリングリン曲がるのに乗り心地も良かった。
よく曲がるのに乗り心地も快適。超軽量低重心という正義のエンジニアリングが生み出す走りは、いわば「優雅」である。トレビアン。
GM共同開発のハードウェアにイタルデザインのスタイル。重いけど剛性感と操縦性は素晴らしかった。とくに4WDは曲がる曲がる!
「スポーツカーを追っかけ回せるバン」という初代以来の伝統を正しく継承。その接地感あふれる走りは、何度乗ってもジンワリ沁みる。
大海原感たっぷりの乗り心地に前衛デザイン……日本の好事家に「こういうのがシトロエンだろ!?」といわしめる最後のシトロエン。
いうまでもなく本物の悪路車だけど、見た目よりはるかに低重心で舗装路でも路面に張りつく。オンでもオフでもスポーツなカーだ。
軽量シンプル。普通のエンジンと細いエコタイヤでも速く楽しく、低燃費でタイヤ減らず。一周回って、これぞ今あるべきスポーツカー?
ロータスはすごい……と乗るたび思う。クルマ自体は超スパルタンで操縦性キレキレなのに、乗り心地も絶品。それが20年以上変わらない。
実車はとにかく小さい。高級車なのにどこか無骨なアラ削り感。そこがとてもイギリス。17位 ランボルギーニ・ウラカンデザインは悪ノリの劇画調なのに、設計と走りは冷徹かつ正論。ギャップ萌えスーパーカー。
造形も乗り味もほどよい隠れシトロエニスト感。こういうシトロエンが今も欲しいの!19位 スズキ・スイフト・スポーツ(2代目)速い、安い、うまい……。昭和から平成初期はこういうクルマを国産各社がつくってた!
デザインはあざといけど素直にカッコいいし、走りは優秀ではないけど素直に楽しい。
文=佐野弘宗(モータージャーナリスト)
(ENGINE2020年9・10月合併号)
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