ジャーナリスト39人とENGINE編集部員6名、計45人が、雑誌が創刊した2000年からの20年間で「一度は手に入れたい」クルマ20台を選び順位をつけた。選んだ20台についてと、「20年間のクルマをどう見てきて、この1台はどういう基準で選んだのか?」というテーマに答えてもらった。
今回の個人的なテーマは「心から降りたくないと思ったクルマ」。この20年、電子デバイスの進化や運動性の解析によって、どのクルマのハンドリングも乗り心地も飛躍的に向上した中で、スポーツカーらしさ、サルーンらしさ、GTらしさ、ミッドシップらしさ、NAらしさなど「らしさ」を色濃く残したモデルを選びました。正直、1位から20位までは僅差です。
RRに縛られた911に対し、誕生以来のびのびとミドシップ2シーター・スポーツの可能性を追求してきたボクスター。981はシャシー、エンジン、パッケージ、スタイルともに一つの到達点。21世紀スポーツカーのメートル原器。
ビッグ・シトロエン最終章。足りない点は多々あれど、それを補っても余りある流体サスペンションの有機的な乗り味、そしてデカダンス香る圧倒的な存在感は唯一無二。近くに置きたくて、実家で買わせたのは後にも先にもC6だけ。
「AWDハイパー・ラグジュアリーGT」という初代のコンセプトを見事に昇華し、圧倒的かつ上品で優雅な動力性能を手に入れた3代目。美しいFRのプロポーション、触感までが上質な室内の仕立てなど、2020年のキング・オブGT。
チャップマン・イズムを継承する真のライトウェイト・スポーツ。基本を変えず四半世紀にわたり作り続けられている「奇跡」にも感謝。
スリリングなRRの楽しさ、鋭さを残した“最後で最高の911”。熟成された後期型も良いけど、敢えてアナログ感の残る前期型推しで。
初心者からベテランまで誰が乗っても楽しいと感じるピュア・スポーツ。口煩いエンスー諸氏をもメロメロにするスポーツカー界のアイドル。
もう二度と現れないヒリヒリするほどスパルタンでファンなロードゴーイング・レーサー。911史はもちろんスポーツカー史にも残る傑作。
991世代のエンジン、シャシーの旨味を最大限に活かした1台。上手く乗りこなせるなら悪魔に魂を売ってもいいと思わせるほど蠱惑(こわく)的。
991の良さはそのままに、より速く、快適になった911。乗り手や環境を問わない盤石の安定感は、RRであることを忘れさせるほど。
艶やかでエロい、世界で一番夜が似合うクーペ。マット・ベッカー・マジックで足まわりがさらにブラッシュアップされたV12のAMRが◎。
サー・ウィリアム・ライオンズ時代の香りを纏った最後のジャガー。乗り込むごとに馴染む温かみのあるスチール・ボディと、しなやかな足が絶品。
乗った後の余韻すら楽しめる、ブリティッシュ・ハイエンド・サルーンの極み。V8 OHVとともに目の前からいなくなると急に愛おしくなる。
派手な演出や装飾はないものの、走りに関しては一切の妥協を許さないイギリスのレース屋らしさが滲み出たシャシー・コンシャスなスーパーカー。
速く走ること以外、何もないことが最高! と思える孤高の存在。添加物一切なしのロードゴーイング・フロントエンジン・フォーミュラ・マシン。
未だ買い換える理由が見当たらない理想的な実用車。よく走り、お金も掛からず安全で壊れない。
世のターボ化への不安を見事に払拭させた立役者。その高い完成度は992が出ても色褪せない。
6気筒は最高だけど4気筒ターボも負けてない。特にケイマンGTSはA110に劣らぬ面白さ。
コンパクトなのにいっぱい乗って、いっぱい詰める。しかも走ったら案外速くて気持ちいい。
FRコルベットの最後を飾るにふさわしい、荒々しさと繊細さが絶妙なバランスで同居した傑作。
毎日の通勤にも使え、スポーツカー趣味の「入り口」にも「アガリ」にもなりうる万能選手。
文=藤原よしお(自動車ジャーナリスト)
(ENGINE2020年9・10月合併号)
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