イラク戦争を止めろ！　英国を揺るがせたキャサリン・ガン事件を映画化した『オフィシャル・シークレット』の迫真

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キャサリン・ガンを演じたイギリス出身の人気女優、キーラ・ナイトレイ。イラク戦争が始まった当時、まだ17歳だった。

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戦争の行方を左右する国家機密をリークしたイギリス諜報機関の女性職員。その事件の驚くべき顛末を描いた、スリリングなポリティカル・サスペンスが公開される。

イラク戦争の是非をめぐり、イギリス政府を揺るがした“キャサリン・ガン事件”をご存じだろうか。イギリスの諜報機関に勤める女性職員が、この大義なき戦争にストップをかけるべく、米英両国による不当なスパイ活動をマスコミにリークした事件である。一人の女性の勇気ある行動から始まったこの事件は、やがて世界が注視する裁判へと発展していく。その過程と意外な顛末を描いたのが映画『オフィシャル・シークレット』だ。

政府の機密情報をスクープしたオブザーバー紙の面々。

サダム・フセインが大量破壊兵器を開発しているという“情報”が流れ、米英がイラクに戦争を仕掛けようとしていた2003年。アメリカのNSA（国家安全保障局）から、一通のメールがイギリスの諜報機関GCHQ（政府通信本部）に届けられた。大量破壊兵器が存在する証拠を見つけられず、イラク攻撃を支持する国が広がりをみせない中、焦りを募らせたアメリカが、国連安全保障理事会5カ国の代表に対する盗聴をイギリスに求めていたのである。それから約1カ月後、この国家機密はイギリスの新聞、オブザーバー紙のスクープとして一面を飾ることになる。執拗な犯人探しが行われた結果、リークした本人であると名乗り出たのは、翻訳分析官としてGCHQに勤務していたキャサリン・ガン。だが戦争を止めるための告発も虚しく、英米によるイラク侵攻は開始され、彼女は重大な国家機密を漏洩した疑いで起訴されてしまう……。

キャサリンの全面無罪を勝ち取るべく、大胆な戦略に打って出る人権派弁護士のベン・エマーソン（レイフ・ファインス）。

膨大なリサーチと、キャサリン・ガン本人の協力により完成した本作は、イギリスの諜報機関の内幕をリアルに伝えていて見応えがある。骨太な作品ではあるが、国家権力を総動員して彼女を反逆者に仕立てたい政府、事実の裏取りに奔走するジャーナリスト、そして彼女を救うために立ち上がる人権派弁護士など、それぞれの思惑や正義が交錯し、娯楽要素のあるポリティカル・サスペンスとしても一級の出来栄えとなっている。だが何より感動的なのは、時の政府に抹殺される恐怖に戦きながらも、自らの信念を貫くヒロインの姿だ。当局による厳しい取り調べに対し「私が仕えているのは国民だ」と言い切る彼女。その力強い言葉に、我が国の政治家や官僚の在り方についても考えさせられる。

監督のギャビン・フッド。現代のドローン戦争を描いた『アイ・イン・ザ・スカイ　世界一安全な戦場』など、緊迫感あふれるサスペンス描写に定評がある。

『オフィシャル・ストーリー』は8月28日(金)、TOHOシネマズシャンテほか全国ロードショー。配給：東北新社 STAR CHANNEL MOVIES。112分。

Photo by: Nick Wall © Official Secrets Holdings, LLC
©2018 OFFICIAL SECRETS HOLDINGS, LLC. ALLRIGHTS RESERVED.

文＝永野正雄（ENGINE編集部）

（ENGINEWEBオリジナル）

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