2020年最後を飾る新作が世界に向けて発表された。それは、リピーターウォッチの王者パテック フィリップならではの超大作。最高峰の複雑時計の分野でまたしても技術革新を打ち立てた。
機械式時計の伝統的な複雑機構の中でも、とりわけ最高峰の技術を要するのが時刻を音で知らせるチャイム機構だ。パテック フィリップは、1839年の創業当初から精巧なチャイム機構を搭載した懐中時計を製作し、その技術伝統は受け継がれ、現在もチャイム・ウォッチの分野では群を抜く第一人者である。
この最新作もそうしたパテック フィリップの本領が存分に発揮されたグランドコンプリケーションだ。このモデルに搭載されるチャイム機構は3つ。正時と15分、30分、45 分に、時とクオーター(15分)の数を自動的に音で知らせる「グランドソヌリ」と、15分、30分、45 分には時は鳴らない「プティットソヌリ」、そしてプッシュボタンの操作によりオンデマンドで現在の時刻を分単位まで告げる「ミニット・リピーター」だ。
腕時計でこれらのチャイム機構をすべて併せ持つモデルは極めて少ない。パテック フィリップは、こうした希少価値絶大なグランドコンプリケーションをレギュラーモデルとして発表するのだから驚くほかない。
「パテック フィリップ・グランドソヌリ 6301P」に搭載された新しいキャリバーGS 36-750 PS IRMは、パテック フィリップが創業175周年を祝った2014年に発表した「グランドマスター・チャイム」のキャリバー300から派生したものだが、技術的な見どころは豊富にある。
まず通常の時計用とチャイム機構用にそれぞれ独立した2組のゼンマイを設け、手巻きムーブメントに72時間、チャイム機構に24時間のパワーリザーブを実現した点。チャイム機構が時計機構のエナルギーを消費する問題を回避するためだ。
独立したそれぞれのゼンマイは、1個のリュウズで巻き上げが可能だ。さらにリュウズに格納されたプッシュボタンによってミニット・リピーターの作動が可能になる。通常はケース左に配されたスライドレバーを引き下げて行うのだが、操作しやすいプッシュボタンは秀逸だ。
さらにもうひとつの新鮮な特色は、6時位置のジャンピング・スモールセコンドだ。特許取得のこの秒表示では1秒ごとに針がステップ。このように興味深い技術を秘めながらも、時計の表情はいたってシンプルかつエレガント。控えめで上品な美観は、タイムレスな価値を重視する、いかにもパテック フィリップらしい。
問い合わせ=パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター
Tel.03-3255-8109
文=菅原 茂
(ENGINE WEB オリジナル記事)
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