2021.02.22

CARS

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ヨーロッパで今一番売れているコンパクトSUV、新型ルノー・キャプチャーに乗った!

ますます加熱するSUV人気。そんななか、いまヨーロッパで一番売れているSUV、新型ルノー・キャプチャーが日本に上陸した。


洗練されたお洒落なクルマ

フランス人は自分らしさを表現するのがとても上手い。アメリカ人の留学生のジェニファーがパリで生活した日々の思い出を綴った『フランス人は10着しか服を持たない』(大和書房)には、服にも食べ物にもこだわりを持っているけれど、贅沢をしているわけではない。でも、大事なものにはお金をかける。ただし、無駄は嫌い。本当に気に入ったものだけを使う。とパリのフランス人についてあれこれ書かれているのだが、大事なのは、自分が必要としているものは何か、何が似合っているのかを常に考えていることだという。素敵なのは、そうした自分らしい生き方、暮らし方を「シックな生き方」「シックな暮らし方」と表現していることだ。シックと言えば、上品とか垢抜けているという見た目の印象と思われがちだが、実は内面から滲み出ているとジェニファーは言っている。


前置きが長くなってしまったけれど、新型ルノー・キャプチャーの魅力は何かと考えたとき、この「シック」という言葉は、クルマのイメージにピタリと当てはまる。シンプルで、贅沢ではないけれどちゃんといいモノ感があって、使い勝手もいい。それでいてお洒落で洗練されている。まったく、キャプチャーのようなクルマをつくってしまう、フランス人のセンスには脱帽するしかない。


新型になったキャプチャーの一番のポイントは、デザインがより大人っぽく、官能的になったことだろう。ボディ・サイドの抑揚のある大胆なデザインは見る者をハッとさせる。

強調されたSUVらしさ

たとえばデザイン。プラットフォームは新世代のものに刷新されているが、基本的には2013年に登場して大ヒットし、ヨーロッパのコンパクトSUV市場を牽引してきた初代のイメージを引き継いでいる。デザインのコンセプトそのものは、先に登場したルーテシアと同様だが、新型キャプチャーではよりSUVらしさが強調された。


そのデザインの一番のポイントはエクステリの曲面の素晴らしさだ。ボディ・サイドにはフロントからリアに向かって流れるような大きな凹凸が描かれ、ボンネットに追加された大胆なプレスラインの効果もあって、先代と比べて力強くなった。また、Cシェイプと呼ばれるフロントとリアのLEDシグネチャー・ライトのデザインは、クルマを視覚的にワイドに見せている。


ルーテシアと同様、前後ともフルLED化されたヘッドライトには「Cシェイプ」と呼ばれる意匠が採用され、より幅広く、SUVらしい力強い見た目となった。

ルノー・デザインが見事なのは、力強さと美しさのバランスだ。今回はクルマの雰囲気に合うと考え、早朝の代官山で撮影したが、思ったとおり街並みに馴染んだ。もっと言うと、朝の街がいつもより、ほんの少しお洒落に見えた。最近は押し出しが強すぎて威圧感を感じるクルマも多いが、新型キャプチャーのデザインは適度に官能的で洗練されている。何処を走っていても目に留まるような個性がちゃんとあって、しかも風景とケンカしない。そこがいい。


室内のデザインも機能性と官能性を上手く両立している。インパネ周りはドライバーを包み込むような形状となり、運転姿勢の最適化が図られている。触れる所の全てにソフト樹脂が使われた室内の質感の高さは驚くほどだ。
ステアリングのエアバッグを小型化することにより、メーターの視認性も高められた。
上級グレードのテックパックでは、本革シートが標準で装備される。フロント・シートは座面が20mm拡大され、サポート性の高い形状に変更されている。
後席レッグルームは先代比17mm拡大され、221mmを確保。後席は160mmも前後にスライドする。

さらに、キャプチャーはサイズも良く考えられている。今やSUVはハッチバックやワゴンの代わりになろうとしているから、室内空間は広ければ広いほどいい。バカンスでどっさりと荷物を積んで家族全員で移動するお国柄なので尚更だが、新型は全長、全幅、全高がそれぞれ4230mm、1795mm、1590mmと、高さはプラス5mmでほぼ同じだが、全長は95mm長く、全幅は15mm広くなった。拡大された分をきっちり実用に使うのもフランス流。前席、後席ともシート間を広げて余裕をつくり、荷室も拡大した。ちなみに221mmの後席ニールームと536リッターの荷室容量はクラス最大だ。


536リッターのクラス最大の容量を誇る荷室は優れモノで、2段式の床と前後にスライドできる後席が生み出す巨大な空間は、間違いなくキャプチャー最大の魅力だ。
後席は6:4の分割可倒式。
後席の背もたれを倒した状態。
後席背もたれを倒して前方にスライドし、2段式の床を外した状態。なんと容量は1235リッターに達する。

室内のデザインは、基本的にルーテシアと同じコンセプトで、触れるところには全てソフト樹脂が使われており、質感は申し分ない。インパネのデザインも高級感を意識したものになっていて、運転に集中できるように、モニターやスイッチ類はドライバーを囲むように配置されている。実際に運転してみて、操作のし易さはもちろんだが、質感の高さはひとクラス上かそれ以上だと思った。


7インチのセンター・ディスプレイも運転席側に傾けられている。
フライング・センターコンソールと呼ばれる宙に浮いたようにデザインされたセンターコンソールは、操作性を向上させただけなく、アウトドアを都会的に解釈したような遊び心もある。
ルーテシアと同様、センターコンソールにはお洒落なキーを置くスペースもある。

走りの質感も高い

望外だと思ったのは、走りの質感の高さだ。エンジンは先代の1.2リッター4気筒ターボから1.3リッターに変更され、最高出力は34psアップの154ps、最大トルクは65Nmアップの270Nmと動力性能が大幅に上がっており、走りに余裕が生まれている。特に豊かなトルクのおかげで過度にエンジンの回転を上げずに走れることが、質感の高さにも結びついていると思った。高速道路でアップダウンの多い日本では、この余裕は大きなメリットになるはずだ。


1.3リッター4気筒ターボのエンジンは、154psの最高出力と270Nmの最大トルクを発揮する。トランスミッションはデュアルクラッチ式の7段自動MTを搭載する。
ホイールは18インチ。タイヤ・サイズは215/55R 18だ。

新型ルーテシアと同様、ステアリングのギア比がクイックになったことで、先代よりも軽快感が増しており、その分、運転が楽しくなったことも忘れてはならない。ただ移動できればいいとか、荷物が運べればいいというのでは、フランス人は絶対に我慢できないだろう。やっぱり走りはしっかりしていて、運転も楽しくなければならい。欲張りな話だけれど、その上でできるだけ室内は広く、荷物もたくさん積めること。そして忘れてはならないのは、自分の美意識に叶うものになっているかどうか。カッコよく、お洒落でなければならない。


さらに付け加えておくと、キャプチャーはこの新型から運転支援装置が最新のものにアップデートされている。全モデルに360°カメラやレーンキープアシストが標準で装備されているほか、試乗車のインテンス・テックパックにはレベル2相当の自動運転に匹敵するレーンセンタリングアシストも備わる。


美意識の高い大人のフランス人たちは、自分が何を必要としているか、何が似合うか、何が楽しみをもたらしてくれるかを本当によく知っている。それは食べるものでも着るものでも、生活の全てに言えることで、もちろんクルマも同様だ。人生を楽しむことにかけては、フランス人の右に出る者はたぶんいない。そんなフランスで、もっと言えばヨーロッパで、今一番選ばれているSUVがこのキャプチャーだ。日本でもいよいよ新しいキャプチャーに乗れるようになった。どんな毎日になるか、想像しただけでワクワクしてくる。


ルノー・キャプチャー・インテンス・テックパック

駆動方式:フロント横置きエンジン前輪駆動
全長×全幅×全高:4230×1795×1590mm
ホイールベース:2640mm
トレッド:1555/1540mm
車重:1310kg
エンジン形式:直噴式直列4気筒DOHC16バルブ・ターボ
排気量:1333cc
最高出力:154ps/5500rpm
最大トルク:270Nm/1800rpm
トランスミッション:ツインクラッチ式7段自動MT
サスペンション(前):ストラット式/コイルスプリング
サスペンション(後):トーションビーム式/コイルスプリング
ブレーキ(前/後):通気冷却式ディスク/ドラム
タイヤ(前後):215/55R 18
車両本体価格(税込):319万円


→『ルノー キャプチャー』の詳細はコチラ

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文=塩澤則浩(ENGINE編集部) 写真=柏田芳敬