2リッター4気筒ガソリン・エンジンに電動モーターを組み合わせたプラグイン・ハイブリッドのレンジローバーを長野駅を起点にする試乗会でテストした。
英ジャガー・ランドローバー・グループは大きな転換期を迎えた。ジャガーは今後EV専業のラグジュアリー・ブランドになり、ランドローバーも今後5年間で6種類のEVを投入。2030年に全体の60%をEV化し、2026年までにディーゼルも廃止する。
そんなニュースを耳にした直後、真新しいレンジローバーのプラグイン・ハイブリッド、P400eに長野で乗る機会を得た。とはいえ見た目はほぼ今までと同じ。給電口はグリルに巧妙に組み込まれ、少し離れたら見分けられない。一方中身は、300ps /400Nmを発揮する2リッター直列4気筒ガソリン・エンジンに142ps /275Nmの電気モーター内蔵の8段自動変速機を組み合わせ、4輪を駆動。システム総出力は404psで、これがP400eの由来だ。
長野駅前でクルマを受け取り、白馬のスキー場に向けて長い坂道をどんどん登る。それなのにエンジンはずっと沈黙したままだ。モニターをタップすると、航続可能距離は588km、モーターのみでもあと7kmという数字が現れた。わずかにロード・ノイズは聞こえるが、呆れるほど静かに滑らかに、たんたんと進む。かなり登ったところで、ごくわずかな振動とともにようやくエンジンが目覚めた。モニターはモーターとエンジンがきめ細やかに作動と停止を繰り返す様を示しているが、よほど気をつけていないと再始動に伴うショックは感じられない。峠道では上下動が穏やかで、重厚な印象。加速は鋭いがロールも大きく、グランドツアラー的な使い方が似合うタイプだ。
ハイブリッド化でP400eは5リッターV8ガソリンより70kg、3リッターV6ディーゼルより250kgも重く、車重は2.6トンを超える。けれどそこは元祖クロスオーバー4WDのレンジローバーだ。ゆったりめのステアリング・フィールをはじめ、極端な軽快感を演出していない操縦感覚は受け継がれていて、市街地も峠道も、どんな時も常に心穏やかでいられる。先進のパワートレインもレンジローバーの世界観に見事にマッチしている。
プラグイン・ハイブリッドは過渡期の技術だ。しかも欧州主導で決まった数字のマジックの上でのエコロジーであり、車体のライフサイクルの観点から見ても、ベストなパワートレインとは言い難い。とはいえ、あくまで身近に充電ができる環境があることが前提にはなるが、静かで滑らかで洗練されていて、航続距離も長く小食なP400eは、いわば今後のレンジローバーの進む先を象徴する1台なのだと、僕は思う。
文=上田純一郎(ENGINE編集部) 写真=山田真人
(ENGINE 2021年5月号)
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