遊び心あふれるプロジェクトで制作された「実車ミニ四駆 1/1 エアロ アバンテ」がファンを出迎える。実際にサーキットでの走行も可能。
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タミヤ プラモデルファクトリー 新橋店がリニューアル。よりポップに、そして街の模型屋を彷彿とさせる親密さで、マニアもビギナーも楽しめる新しい名所となっている。
「実物の自動車を作る術を知りたければ、最初にタミヤのキットを組み立てるのが近道さ」──フェラーリのエンジニアはかつてこう語ったという。米国レベル社での発売から8年ほど遅れ、1959年にそれまでの木製模型から“プラモデル”づくりへと舵を切った田宮模型。後発ながら10年も経たずに海外でもTAMIYAとして知られるようになった。

その原動力は当時企画設計部長だった田宮俊作氏(後に社長、現会長)と多くの模型好きスタッフが持つ熱意。戦車のリサーチ用にアメリカの博物館に行き、フィルムカメラで3000カット以上を撮影、ポルシェのプラモデル開発のために実車の911を購入して分解するなど、徹底した実証主義に裏打ちされた品質は、国内外で高い評価を集め続けている。冒頭のエンジンのプロが語った言葉は、模型メーカーにとって最上級の栄誉といっていいだろう。
次のメカ好きを育む
だが、こうしたマニアに向けた専門性の追求は往々にしてアマチュア、特に子どもたちを遠ざける弊害がある。多くのメーカーが陥りがちなこうした矛盾を、タミヤは大ヒットとなるミニ四駆で乗り越えた。プラモデルに必須である接着剤を使わず、低学年でも簡単に組み立てられる仕様に加え、お小遣いで買える低価格、かつよく走る四輪駆動という特長は大きな反響を呼び、大会に年間で万単位の観客を動員するほどになった。

F1のレーサーや監督にも子どもの頃にタミヤ製品に夢中になった人は多い。遊びが人を育み、培われた才能が最新鋭のマシンとレースで花開き、そこから模型の世界へと還元される。オリジナルとコピーが螺旋状に進化するかのようだ。

新装オープンとなったタミヤ・プラモデルファクトリー・トーキョーが目指すのは、まさに昔ながらの模型遊びの原点。全キットはもちろん、アパレル、小物などの関連商品のラインナップ、工作スペースやサーキット、カフェの併設など、タミヤファンの聖地としてはもちろん、ビギナーにとってのゲートウェイとなる。
リアルな造型がもたらす昂揚感は、デジタルでは決して味わえない。走り続ける老舗の新しい拠点は、確かにキットを通じてアナログならではの次なる興奮を開拓し続けている。
文=酒向充英(KATANA) 写真=杉山節夫
(ENGINE2024年11月号)
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