アメ車好きな工務店社長がオーダーしたインパラの原寸大ネオン。
全ての画像を見る
かつては都会の華やかさと妖しさの象徴だったネオン。LEDに主役を譲り、夜の街角で見ることは少なくなっているが、カスタムメイドとしてよりパーソナルに輝き始めている。
ネオンは、かつて「都会の夜」の代名詞だった。

もともと20世紀初頭にフランスで発明されたもので、細長いガラス管にネオンガスかアルゴンガスを封入し、両端の電極から高電圧をかけることで前者を赤、後者を青に発光させる。さらに着色された管との組み合わせで、さまざまな色の表現が可能だ。熱で曲がるガラス管の特性も大きい。職人の腕で自在に文字や絵を描けるため、看板を照らすのではなく、自らが発光体となって店や商品をアピールできる。ネットはもちろん、テレビ程度しか映像媒体がなかった時代、「光る広告」が大量消費社会を支える原動力となったのは当然だったろう。
だが現在、照明広告はLEDが主流だ。ひとつのガラス管で一色のみのネオンに比べ、3原色の組み合わせでより多くの色を生み出せ、動画再生にも対応できる。電気代も安価だ。都会でのネオンの数は減少の一途であり、人を引き寄せる誘蛾灯の効果はない。
熟練の技で自分だけの光のアート
商業的には翳りを見せるなか、インテリアとして再び脚光を浴びつつある。数少なくなったネオン職人の高橋秀信さんの元にも、自宅やオフィス用につくってほしいという依頼が増えているという。「ネオンにはムードがあります。そこに惹かれるようですね」(高橋さん)

実際に住まいに取り入れる顧客も照明広告の全盛期を知らない若い世代が多い。昨今の昭和ブームにも通じるレトロ回帰のひとつと言えるが、「かっこいいし、見ていて落ち着く」「クールなのに温かみがある」と異なる印象が共存する魅力は、光度が充分ながら眩しすぎない特徴によるだろう。最近では「ネオン浴で整う」という癒しの言葉さえ生まれているほど。こうしたメリットに加え、オーダーメイドならではのカスタム性も静かなブームを後押しする。家族の名前をあしらったり、好きな車をモチーフにしたりとデザインは唯一無二。既製の照明器具にはない個性に加え、訪れる人に楽しいサプライズをもたらすコミュニケーションツールとして愛されている。
マスに向けた広告から自分だけのインテリアへ。ネオンが描き出す光の魅惑は、これからも消えることはない。
文=酒向充英(KATANA) 写真=松崎浩之(INTO THE LIGHT)
(ENGINE2024年11月号)
無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。
無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。
いますぐ登録
会員の方はこちら