自動車ジャーナリスト38名に本誌編集部員6名を加えた総勢44名の自動車のプロが20台、さらにエンジン・プレミアム・クラブ会員19名が5台、「新時代のトップランナーたち」とは? を考えながら、自分の欲望のままにクルマを選んだ。その集計により新時代におけるクルマのトップランナー100台が決定したのを踏まえて、ジャーナリストを代表する高平高輝氏と島下泰久氏の2名と本誌編集部員、村上、村山の2名による結果を読み解く座談会を行った。1位から3位までの前篇に続いて後篇をお送りする。
4位から10位まで
荒井 4位はBMW M2クーペ。高平さんの1位です。
高平 これ、いいですよ、マジで。大好き。M3とM4が大きくなり過ぎた。下に初代M2があったけど、あれはMを名乗るほどのものじゃなかった。2代目に進化して本当に良くなった。これもロードスターと同じでまだやるつもりなんだと思った。6気筒後輪駆動でまだしばらくやるぜと。その気概がいい。
村山 僕は2位に入れました。BMWは最近4気筒のクルマばかりですけど、乗ってみると結構エンジンが気持ちいいんですよ。でも、6気筒に乗るとこんなに滑らかなエンジンはないなって思ったんです。あんまり嬉しくて3カ月前に初代1シリーズ・クーペ、135iのMTを中古で買いました。
高平 われわれ年輩者は6気筒FRでマニュアルもあるってだけで、“え?”ってなるからね。若者が6気筒に乗って気持ちがいいって思ったということは、それを狙ってBMWが作り直したってことだな。
荒井 HOT5はポルシェ718ケイマンGTS4.0。
村上 自然吸気で6気筒に乗れるのはGT系を除けば、これとボクスターだけ。それを考えると天然記念物。
島下 ちょっと軽快でハッチバックなのがいいと僕は思ってます。買い物に行くのも911より気楽だし。
荒井 HOT6の911カレラは昨年の15位から大きくジャンプ・アップ。EPC会員の1位。
高平 それはすごくわかる。想像していた通り。
村山 ジャーナリストの間ではカレラTの存在が大きかったんじゃないですかね。
村上 もうひとつはやっぱり次期型が出たから。新時代のトップランナーというものを考えたときに、まだ911を作っていくんだぞというポルシェの意志みたいなものが、1位のロードスターと同じように感じられた。新型911の国際試乗会で内燃機関どうするのか? というのをターボ・エンジンの専門家に聞いた。そうしたらあと80年は続けるって。次の世紀、2100年を超えてもやるってことなのかな。新時代につなげることもやろうとしているし、Tみたいな素朴な911の本来の走りを感じさせるものもあるし。僕の1位はやっぱり911カレラだな。
毛色の違うボルボEX30
島下 僕は7位のボルボEX30が衝撃でした。
荒井 1位から6位まで運転が楽しいクルマだけど、これはちょっと毛色が違うよね。僕は10位に入れました。理由はエクステリア・デザイン。特にリア周りは秀逸だと思う。
島下 未来感みたいなものを醸し出してますよね。
高平 新時代のデザインへの挑戦はどのブランドもやっているんだけど、こんなに潔く出来ないもんね。ここのスイッチを全部取っ払っちゃえみたいな。そこがみんなの心に刺さった。ただ、ハッキリ言って出来はもうひとつ。操作系もスイッチのタイムラグとか、反応の悪さとか。ちゃんと煮詰めたらいい。勿体ないよ。
島下 HOT8の911GT3は僕の1位です。あのシャープなフロントの切れ味は僕の911のこれまでの概念を超えました。スポーツカーに乗るならば、すごくシャープなものに乗りたい。スポーツカーに快適性を求めるのはどうよ?というのもある。“仕事行くだけなのに、気合入れなきゃ”みたいなのがいい。だから、みんな車庫にしまっていないで乗って欲しい。投資じゃないんだから。
高平 投資対象になってるからあんまり走ってるのを見ないよね。
島下 それと正反対なのが9位のアルピナB3なんです。みなさん本当に距離を走る。アルピナの人は好き過ぎて本当に毎日乗る。だから中古車が出てこない。誰も手放さないから。アルピナの世界にはそういうクルマ好きがまだ残っている。日本はアルピナが売れている国だから、本当にクルマ好きな人がいる国なんだなと思ってホッとします。
高平 アルピナは長距離を高速で移動というのが最優先。瞬間的な加速じゃなくて、エンジン全開1時間で冷却系が音を上げないというのが大事。フル負荷でどこまで安定できるか。その立ち位置は変わってないよ。
島下 だからみなさん距離を走る。
高平 10位のシボレー・コルベットはもっと上だと思ったなあ。スペックだけで白飯食べられる。Z06なんか3杯イケますよ。
島下 今度、eレイが来るじゃないですか。フロント・モーター駆動の。
荒井 V8OHVという古臭いことをやりながらフロント・モーターでしょ。新旧の組み合わせが凄いです。新時代へ道を切り拓いてると思う。
高平 最も怖くないミドシップ・スポーツかも。
欲望の結果
荒井 ということでザッと10位まで見てきました。それぞれ一言ずつお願いします。
高平 これをパッと見るかぎりこの結果はすごくいいと思う。1位と2位のガチな感じとか、20位までの多様性もすごくいい。
村上 自画自賛させていただくと、クルマ好きの人たちの深層心理がよく表れていると思います。欲望のありかがよくわかるものになっている。
島下 僕は「SUVはもういいかな」と考えたんですけど、これに関わるほかの人たちもそうなんだと思った。
村上 確かにドイツ御三家のSUVが上位には見当たらないね。
島下 使い勝手が良くて便利なんでしょうけど夢を喚起したり、新しい時代に向かって自分を変えたいと思うような買い物は、それとは違うんでしょうね。
村山 これを参考にして買う必要はないけど、自分の趣味にあったものをここで見つけるのにはいいかもしれませんね。
荒井 上位のクルマたちはブランドの思想に揺るぎがない感じがした。それがあるからこそ新時代への挑戦ができるからじゃないかな。
話す人=高平高輝+島下泰久+村上 政(本誌)++荒井寿彦(本誌/まとめ)+村山雄哉(本誌) 人物写真=茂呂幸正
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(ENGINE2024年9・10月号)
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