2024.12.28

CARS

新型なのに、1円の値上げもなし! モーターをプラスした4.4リッターV8は凄かった やっぱりMの主役はエンジンだ!!

カーボン・セラミック・ブレーキはMレース・トラック・パッケージを選ぶと装着される。

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2代目5シリーズに初設定されて以来、今回で7世代目となるM5。新型最大のトピックはなんといってもPHEVによる電動化だ。果たして、M生粋のスポーツ・セダンは電動化を味方にできたのだろうか。エンジン編集部の新井がリポートする。

エンジンはそのままPHEVシステムをアドオン

2024年6月の本国での発表から間髪を入れず、新しいM5が日本にやってきた。M5に限らず、BMWは本国での発表と日本での発売のタイムラグが短い。欲しいと思った最新モデルがすぐに入手できるのは、クルマ好きとしてはうれしい限りだ。

 車重を考えるとそれなりに硬いスプリングが組み合わされているはずだが、ガチガチ感はない。


目の前に現れたM5は、ほぼ黒と言っていいツヤ消しの濃いグレーというボディ・カラーの影響もあるが、迫力が半端ない。スーパースポーツに勝るとも劣らぬ勢いを感じる。もちろん、その理由は色だけではない。フロント・バンパーは大きく口を開け、専用デザインのリア・バンパーからは4本出しのエグゾースト・パイプがこれ見よがしに突き出ている。さらに、太いタイヤを収めるためにフェンダーはフロントで70mm、リアで48mm拡大、そしてもちろん、キドニー・グリルが光る。M5には落ち着きのある大人のスポーツ・セダンらしい装いを持った世代もあった。しかし最新型は違う。限界まで極められた性能が外観ににじみ出ている。Mパフォーマンス・モデルのi5 M60でも十分スポーティだが、M5はさらにアグレッシブな仕立てにアップグレードされているのだ。



衝撃を受けたのはデザインだけではない。1998万円という価格にも驚いた。PHEV化されたにもかかわらず、先代の最終モデルであるM5コンペティションから1円も値上げされていないのだ。同じ価格帯を維持しながら内燃機関車を電動化する場合、ダウンサイズしたエンジンにモーターを組み合わせ、システム総合出力は従来と同等ということは多い。しかしM5は、エンジンはそのままにPHEVシステムをアドオン。当然、総合出力も高い。ではなぜ、同じ価格設定にしているのか?

Vバンク内に2つのツインスクロール・ターボを収める4.4リッター V8+モーターはXMと同形式。


BMWジャパンによると、車両重量が500kg近く増えていることを考慮し、性能増加による価格の上乗せをしないことにしたという。実際にサーキットでの能力は向上しているものの、0-100km/h加速は先代より0.1秒遅いのだ。しかし、それ以上に、電動化してもMの魅力が薄れないことを多くの人に体験してもらい、そうすることでスポーツ・モデルにおける電動化の未来を切り開きたいという狙いがあったそうだ。

重量増を押さえこむ


電動化した新しいM5で確かめたかったのは、BMWの自慢の4.4リッターV8ツインターボがモーターによって骨抜きにされていないかと、500kg近い重量増が走りにどんな影響を与えているか、その2点である。

インパネはステアリングにMモードを呼び出す赤いスイッチが2つ備わる以外は、ほぼほかの5シリーズと同じ。




シートはスポーツ・タイプのMファンクション・シート。ただし、2トーンのメリノ・レザーは6万4000円のオプションとなる。

パワートレインについては杞憂に終わった。ダイナミックとダイナミック・プラスというエンジン主体となる走行モードを選べば、常にエンジンが稼働。アクセレレーターを踏み込むと、一瞬、モーターによる強いアシストが介入するものの、すぐにエンジン主導での加速に移行する。モーターはエンジンの邪魔を一切しないし、モーターで加速しているのか、それともエンジンなのかというモヤモヤした時間帯もない。フル・スロットルでモーター全開のときもアシストしていることは感じるが、あくまでも主役はエンジンのままだ。しかも、モーターの加勢を得たときの走りは刺激的。先代同様に4WDを採用しているものの、山道ではとても垣間見れないほどの凄まじい加速力を見せる。この性能は先代では絶対に味わえないものだ。



日本の法定速度内なら事足りてしまうEV走行も新型の大きな魅力だ。モーターのみで走りたい人はいないかもしれないが、自宅の近くでモーター走行に切り替えられる大きなメリットは大きい。これで早朝ゴルフにも気兼ねなく出掛けられるはずだ。



続いては重量増の影響について。ステアリングを切り始めたときや限界を超えてタイヤが滑り出すときなどに、「やっぱり重いのね」と感じることが正直言ってあった。しかし新型M5は、走りそのものでは今まで通り、いや、それ以上のパフォーマンスを見せつけたのだ。つまり、感覚以外においては、重さによる影響をしっかりと押さえこむことに成功しているのだ。それはどのモードでもしなやかに振る舞うサスペンションや初めてM5に採用された後輪操舵などに因るところも大きいだろう。また、ドライバーの入力に対して素直に反応する走り味も変わっていない。これまでのMモデルの特性もしっかりと受け継がれていたのだ。

電動化によって何を得て、何を失ったのか、それはMモデルとしては必要なものなのか、諦めてもいいものなのか。新型M5はそれをしっかりと吟味したクルマだ。電動化を確実に手中に収めていたのである。そしてなにより、PHEVになってもエンジンが主役の卓越したスポーツ・セダンであるという立ち位置に変わりはないことがうれしかった。

文=新井一樹(ENGINE編集部) 写真=宮門秀行

■BMW M5
駆動方式 フロント縦置きエンジン+モーター4輪駆動
全長×全幅×全高 5095×1970×1510mm
ホイールベース 3005mm
トレッド 前/後 1685/1660mm
車両重量(車検証記載前後軸重) 2400kg(前1290/後1110kg)
パワートレイン形式 V型8気筒DOHC48Vツインターボ+モーター
総排気量/ボア×ストローク 4394cc/89.0×88.3mm
最高出力 エンジン(モーター) 585ps/6000rpm(197ps/6000rpm)
最大トルク エンジン(モーター) 750Nm/1800-5400rpm(280Nm/1000-5000rpm)
システム総合出力/トルク 727ps/1000Nm
変速機 8段AT
サスペンション形式 前/後 ダブルウィッシュボーン/マルチリンク
ブレーキ 前後 通気冷却式ディスク
タイヤ 前/後 285/40R20 111Y/295/35/ZR21 110Y
車両価格(税込) 1998万円

(ENGINE2025年2・3月号)

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