2025.05.10

LIFESTYLE

これが横浜の新名所 ガラリと変わった横浜美術館を訪ねた!

来館者を迎える吹き抜けの大空間、グランドギャラリー。建築空間自体はほぼ既存のままながら、外光を再び豊かに取り入れることができるよう修繕を行なった

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みなとみらいにある横浜美術館がこの2月、3年を超える大規模改修工事を経て全館オープンした。生まれ変わった美術館を新鮮な気持ちで楽しむ。

丹下健三が設計した荘厳な建物

横浜美術館は自分にとって特別な美術館のひとつだ。インターネットがまだ普及していない1990年代後半、レポートや卒業論文の調べもののため、美術館付属の美術図書室にせっせと通っていた、いわば青春の館。調べ物が終わったらゆっくり展覧会を見るのが楽しみだった。

当時、横浜美術館のあるみなとみらい21地区はほとんど開発されておらず、広大な埋立地にぽつんと美術館だけが佇んでいてなんとも寂しそうな状態だった。しかし現在このエリアは高層ビルが林立、いまでは美術館がビルに囲まれ窮屈そうにも見えてしまっているのだからおもしろい。

グランドギャラリーの大階段エリアにも彫刻作品が展示される

そんな横浜美術館が、3年を超える大規模改修工事を経て先日全館オープンした。丹下健三が設計した荘厳な建物は、TANGE建築都市設計の手により、明るく、軽やかな姿にモデルチェンジ。館内に入ってすぐ目にする吹き抜けの大空間「グランドギャラリー」は、再び屋根から陽光が降り注ぐように修繕され、「じゆうエリア」と名付けられた入場無料のエリアは広がった。

開館当初は人がほとんどいなかった美術館の周りは、いまは人であふれている。そんな人たちが自由に行き来できる美術館になったのだ。訪問者が自由に利用できる椅子やテーブルは、建築家の乾久美子とグラフィックデザイナーの菊地敦己が丹下健三の想いを形にしたもの。建物の御影石の色を使ったピンクや茶色にペイントされ、新品なのにあっという間に建物に馴染んでいる。長期休館する美術館や文化施設は多いけれど、見た目はもちろん、人を受け入れる姿勢を含めて、ここまでガラリと「変わった」印象を与える美術館は珍しい。

御影石を使ったシンメトリーの外観の建物は丹下健三が設計

そんな横浜美術館の新しいスタートとなる展覧会「おかえり、ヨコハマ」もまた、美術館が新しくなったことを物語る内容だ。ルネ・マグリットをはじめとする、既存のコレクションとともに、開港以前の横浜や、関東大震災の際の横浜、戦後すぐの横浜など、私達があまり持ち合わせていない横浜の姿を紹介してくれている。自分にとってはとても懐かしい場所でありながら、初めて訪れたような新鮮な気持ちになれた横浜美術館。以前訪れたことがある人も、まだ訪れたことがない人もどちらも新鮮な気持ちで楽しめる美術館、ぜひ体感してもらいたい。

■横浜美術館リニューアルオープン記念展「おかえり、ヨコハマ」/「横浜」や「多様性」をキーワードにした多彩な作品を紹介する記念展は、2025年6月2日(月)まで開催中。

文=浦島茂世(美術ライター) 写真=新津保建秀

(ENGINE2025年5月号)

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